張りつめていた心の糸が切れ
如月優子
如月拓篤
如月拓篤
朝から夫と激しい口論になり
間にいた真優奈が泣き出してしまった
如月拓篤
如月拓篤
如月拓篤
夫は怒りそのままに家を出ていき
真優奈と二人残された私は必死に涙を堪えていた
私まで泣いてしまったら真優奈を不安にさせてしまう
そう思った直後にインターホンが鳴り
震える手で扉を開くと
如月優子
佐藤奈穂美
( ≧∀≦)ノ
佐藤さんの奥さん、奈穂美さんが立っていた
如月優子
奈穂美さんの笑顔に涙が溢れ
私はその場に泣き崩れてしまったのだが
奈穂美さんはまるで全てをわかっているかのように
驚く様子もなくしゃがんで私の背中を摩ってくれた
如月優子
佐藤奈穂美
佐藤奈穂美
佐藤奈穂美
如月優子
如月優子
このままだと遅刻してしまう
慌てて立ち上がろうとしたのだが
力が抜けたのかうまく立ち上がることができず
如月優子
焦る気持ちが涙となって流れ落ちる
如月優子
如月優子
如月真優奈
居間でずっと泣いていた真優奈が玄関に姿を見せた
真優奈もまだ泣き続けていて
そんな真優奈の姿に私の涙も止まらなくなる
如月真優奈
如月優子
如月優子
佐藤奈穂美
佐藤奈穂美
如月優子
佐藤奈穂美
如月優子
奈穂美さんはそそくさと居間へ行き
プラスチック容器を冷蔵庫に入れて戻ってきた
佐藤奈穂美
如月優子
佐藤奈穂美
佐藤奈穂美
佐藤奈穂美
如月真優奈
まだ動けない私の代わりに
真優奈が鍵を取りに行ってくれた
奈穂美さんに支えられて何とか立ち上がることができ
真優奈と二人でお隣の奈穂美さんの家へ
玄関の鍵を閉めるだけなのに手が震え
奈穂美さんに手伝って貰ってやっと施錠し
如月優子
奈穂美さんの家に入った途端
安心感からまた涙が溢れてくる
佐藤直貴
佐藤寛美
二階から双子の直貴君と寛美ちゃんが下りてきた
もう家を出なければ遅刻してしまう時間
でも二人は焦る様子もなくかなり落ち着いている
如月真優奈
如月優子
佐藤奈穂美
如月優子
佐藤奈穂美
如月優子
佐藤奈穂美
奈穂美さんに説得され学校に連絡を入れた
確かに今のこの状態では安心して真優奈を送り出せない
如月真優奈
佐藤直貴
佐藤寛美
如月優子
早朝
奈穂美さんはいつものように朝から家事に追われていた
佐藤奈穂美
だがどこか落ち着かない様子で心配したご主人が声をかける
佐藤寛貴
佐藤奈穂美
佐藤寛貴
佐藤奈穂美
佐藤奈穂美
佐藤直貴
佐藤寛美
佐藤直貴
佐藤奈穂美
佐藤奈穂美
佐藤寛貴
佐藤奈穂美
佐藤寛貴
ちょうどその頃、私は夫から謝罪を要求されていて
如月拓篤
如月拓篤
夫の信じられない言動に心の糸が切れた
如月優子
如月拓篤
如月拓篤
佐藤寛貴
佐藤奈穂美
佐藤直貴
佐藤寛美
佐藤奈穂美
佐藤寛貴
佐藤奈穂美
佐藤寛貴
佐藤奈穂美
佐藤奈穂美
佐藤寛貴
この時、奈穂美さんの耳には
私と夫の怒鳴り合う声がはっきりと聞こえていた
いくら隣と言っても壁は厚く庭もある
だから多少の喧嘩なら隣近所に響くことはないのだが
奈穂美さんはどんな小さな音も完璧に拾う凄まじい聴力の持ち主で
更に幼少期からの鋭すぎる野生の勘を働かせ
我が家で起きていることを瞬時に予測し
元々、昼過ぎに届ける予定だった昨晩のおかずを
通勤前のご主人に託したのだった
玄関先で私と話をした奈穂美さんのご主人は
駅に向かう途中の道で奈穂美さんにメッセを送信
佐藤寛貴
佐藤寛貴
佐藤奈穂美
佐藤寛貴
佐藤寛貴
佐藤奈穂美
如月拓篤
如月拓篤
如月拓篤
夫が家を出るのを確認した奈穂美さんが
佐藤奈穂美
( ≧∀≦)ノ
家に突撃してきたのだった
佐藤寛美
佐藤直貴
如月真優奈
二人の誘いに真優奈が笑顔で応え
三人の子供達は仲良く階段を上っていった
奈穂美さんが入れてくれたお茶を飲んで少し落ち着いた私は
これまでのことを全て打ち明けた
夫の希望で結婚を機に仕事を辞め必死に家事をこなしてきた
少しでも手を抜けば文句を言われるため気が抜けなかった
夫の収入は一般的なサラリーマン家庭よりは多いのだが
私に毎月渡してくれる生活費はいつもギリギリの額で
少しでも節約するために値引き品を多用し
それでも美味しいものをと研究、工夫した料理の数々
それを夫は文句を言うだけで褒めてくれたことなどなかった
夫は潔癖気味で料理のシェアを嫌い
大皿に盛るような料理には必ず別で箸やトングをつける
少しでも自分のお皿に私や真優奈の箸が触れれば
その場でお皿おかずは捨てられ使ったお皿も捨てられる
しかも捨てたお皿と全く同じ物を
その日のうちに探して買いそろえておかなければいけない
それも渡された生活費から捻出しなければならず
生活費が足りないと相談したこともあったが
私が贅沢していると疑われてしまった
掃除や洗濯、アイロンも完璧にしなければ不機嫌になり
失敗した時、非難の的になるのはいつも私で
それでも夜になると……
如月優子
如月優子
だが夫は私が避妊薬を服用していることを知らない
だから夜の行為を続ければいずれ二人目を授かると思っている
佐藤奈穂美
如月優子
佐藤奈穂美
佐藤奈穂美
佐藤奈穂美
佐藤奈穂美
佐藤奈穂美
如月優子
私の心の声を代弁するかのように
奈穂美さんが怒ってくれた
これまで何度も離婚を考え
その気持ちを真優奈のためにグッと飲み込み
ずっとずっと耐えてきた
特に一番辛かったのは痛みしかない夜の行為
それに関しても奈穂美さんは私に寄り添ってくれて
佐藤奈穂美
如月優子
佐藤奈穂美
如月優子
佐藤奈穂美
"離婚"の二文字が
再び頭の中をぐるぐると旋回し始めていた