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少女の視界に違和感が走る
さっきまでたしかにあったはずの傷
赤く滲んでいたはずのそこか──
既に塞がりかけていた
???
たしかに私は、
あなたを
なのになんで…傷が
現実が理解できない
男は、首元に軽く触れ 少し考えるような目を逸らす
???
???
そんな次元じゃない まるで再生するかのように 何事も無かったかのように
傷が消えていく
???
まるで大したことないかのように
軽く口にする
ただ─
その言葉の通り
傷は、ほとんど残さずに消えていった
自分がした事実だけが
少女の中に残っている
男の指先がそっと少女の口元に触れ
血を拭う
丁寧に優しく
???
こんなことをした相手に
どうしてそんな風に触れられるの…?
???
???
意味がわからなかった
こわい
この人が何を考えているか分からない…
???
???
???
???
???
???
冗談を言うかのように軽く言っているのに
本気だった
???
???
???
さっきの出来事と
今の言葉が頭の中で混ざる
怖くない──
それでいい──
そんなはずないのに
でも
少し
ほんの少しだけ
″ここにいていいのかもしれない″
そう思ってしまった自分が
1番怖かった
???
シン
シン
思い出したかのように自然に聞いてくる
???
言葉が出ない
眼が揺れる
シンは、首を傾げる待っている
シン
軽く説明するように
それでも声は、ずっと穏やか
???
???
空気が止まる
少女は、目線を落とし
まるでそれを言うことすら罪かのように
???
もう一度小さく
それで終わりにするかのように
シンは、驚かない
ただそれを静かに受け入れ
シン
少女にとって逆にそれが胸を騒つかせる
普通ならなにかもっとあるはずなのに
でもシンは
それを当然のように受け取った
シン
???
シン
ほんの少しだけ笑う
シン
その言葉に
呼吸が止まる
後から──?
そんなものあるの?
シンは、立ち上がり
少女を待つように振り返る
シン
シン
手を掴み歩み始めた
何事も無かったかのように
名前すらない私を
否定しなかったのも
この人が初めてだった
湯気がゆっくりと視界を曇らせていた
暖かいはずの空気なのに 少女の身体は、どこか落ち着かない
自分の意思でここにいる訳じゃない
でも無理やりでもない
その曖昧さが1番怖い
???
湯の中で縮こまることしかできない
湯の中に白い髪が沈んでいく
湯の中で少し絡まりながら 広がっていくのが見える
自分で解くにも力が入らない…
こんなことすら…できない
???
シン
シン
優しく髪を解いていくシン
まるで当たり前のように
少女の肩が震える
怖い
逃げたい
でもその声は拒絶する余裕すら与えないほど 穏やかだった
自分でもどうしたらいいか分からない
自分の“境界”がどこにあるのか、曖昧になっていく感覚
シン
???
少しだけ困ったようにシンは、笑う
シン
それだけ
また静かに髪を流し
シン
何気ない一言
褒め言葉でも評価でもない
だだ見たままのことを言った
言葉の意味を理解できなかった
ただ
妙に心には残る
シン
静かだったところに
声が響く
責めているわけでは、無い
でも少女は、咄嗟に隠す
???
言葉が続かない
守るように抱え込む姿
その必死さをシンは、見ている
困ったようにまた笑い
シン
説教でもなければ責める言葉でもない
意味すら理解するのに時間がかかった
???
シン
当然みたいに
そこに責める意思は一切ない
どうして──?
──なんでそんなに普通なの
シン
そのまま浴室を出ていくシン
パタンッ
少女にとって理解できないことだらけだった
???
応えるものは、居ない
湯で膝を抱えながら
水面に映る自分をただ見つめていた