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拝啓.貴方と話がしたかった
死ネタっぽいような、辛そうな、描写出てきます
部屋には綺麗に畳まれた制服が置いてある
家族写真や集合写真が額縁に入って大切に保管してある
カレンダーは8月12日で止まっている
癖のある字でノートが書かれてある
机には何も置かれていない
ずっと空席
稲高のバレー部メンバーという看板から1人が解放された
そそくさと1番早くに自主練もせず帰るやつはいない
隙あらばスマホで写真を撮りまくっていたやつもいない
だるい、と言葉をこぼす奴もいない
ひたむきに隠れて努力していたやつもいない
いないじゃなかった
いなくなっただった
こんなところを通ってでも早く帰ろうとしていた
嬉しそうに写真を見せてきていた
たまに笑う綺麗な笑顔だった
ひっそりと泣きながら帰っていた
弱さは絶対に見せないという根性を持っていた
誰かが来たら気だるげに振る舞って見せていた
いつも偽っていた
カフェが好きなくせに言わなかったこと
落ち着いた場所で1人でいる方が楽なのに騒がしくても笑っていたこと
無理にでも周りに合わせようとしていたこと
自分は認めないくせに人のことを褒めていたこと
流行りを誰よりも早く知っていたこと
友達の前でのキャラを必死に守り抜いていたこと
ほんとのことなんて誰にも言えてなかったこと
金魚すくいがとても上手だったなぁ
屋台の人が焦って止めていた
写真撮らせての一言だけでも言うのに手こずっていた
謙虚なのに謙虚じゃないフリをしていた
誰よりも周りのことが見えていた
自分のことを後回しで人のことを優先する奴だった
夜にグループLINEで既読だけつけて返信しないことが増えていた
「大丈夫」という言葉を何度も繰り返していた
ただもう一度あの声で、あの表情で
「大丈夫」と言って欲しかった
でも今度は、俺が「大丈夫じゃないでしょ」って言いたかった