一体僕は、何回彼に救われたんだろう
歌い手の活動のことも、今も
ちょっとした小さなことでも、 そらるさんの言葉に救われてきた
それに、2年前だって……
……あの戦いでそらるさんが いなくなって、早数日
ネットの方でも、音沙汰がなくなった そらるさんのことで騒ぎ始めていた
“そらるさんどうしたんですか?” “何か知ってませんか?”
低浮上気味だった僕の方にも こんなメッセージが来たりしたし、 友達にも心配されてたけど、 何にも答えられないまま
そらるさんはもういない
分かってるけど、信じたくない
みんなにそう伝えてしまったら、 自分がその事実を認めることになって しまう気がして、嫌だったんだ
そんな時、いつも実写動画を撮ってる メンバーの、天ちゃん、うらたさん、 さかたんが、僕らのことを 見かねたのか、うちにやってきて
渉
翔太
優
みんな心配して、 色々聞いてきたけど……
真冬
無理やり笑顔を作って、そう答えた
魔法界で戦って死んだ、なんて、 魔法のことすら知らないみんなに 言ったって、信じてもらえないから
けど、そうして家で蹲っていた 僕を、ちょっと強引に、みんなが 外に連れ出してくれた
ご飯を食べに行ったり、カラオケに 行ったり……きっと、遊んだら 気が晴れるだろうと思っての 行動だったんだと思う
僕も、そう思ってた
僕一人じゃ、外に出る気になんてなれ なかったし、みんなが明るい話をして くれたり、実際すごくありがたかった
この3人がいなければ、僕はもう とっくに闇使いに堕ちてたと思うし、 本当にいい友達を持ったなって、 ちょっと嬉しくもあった
……だけど、心についた 重りは、なかなか外れなくて
その時、ああ、これは一生外れない ままなんだなって気づいた
そういえば、あの時特にそばにいて くれたのは、天ちゃんだったような
そのおかげなのか、気分が晴れて、 少しだけ笑えるようになってたと思う
ほんのちょっと心に余裕ができて、 ままならなかった生活も、少しずつ、 いつも通りできるようになって
そんな中……みんながもう一度、 僕に聞いてきたんだ
渉
渉
真冬
うらたさんが優しく聞いてくれて、 それが心に染みて……
真冬
その時やっと、涙が出てきた
翔太
優
さかたんのその言葉を聞いて、僕の 中で、何かが壊れたような気がした
真冬
ひたすら泣いて、少しずつ話して
やっぱり魔法のことは話せなくて、 “そらるさんがいなくなったのは 僕のせいだ”ってことばかり話して
3人はきっと、僕の話の半分も 分からなかったと思う
それでも、ずっと心に溜めていた ものを全部ひっくり返して、言葉を 紡いで、外に吐き出して
そこでやっと、心が少し軽くなった
それから、僕はそらるさんに 生かされたんだ、いつまでも 落ち込んでちゃダメだって、 前向きに考えられるようになって
あれ以来行ってなかった魔法空間に、 久しぶりに行ったんだ
今まで何もしてこなかった分を、 取り返さないと
僕には、努力することしか できないから
2人だった時でさえ、 有り余るほど広かったこの空間
そこで一人での訓練はやっぱり 寂しかったけど、これからずっと こうなんだし、きっといつか慣れる
左手を前に翳して、氷で 人型のようなものを作っていく
相手がいないと、 何も始まらないからね
真冬
無詠唱で桃雪華を顕現させて、 一度深呼吸をしてから、剣を構えて 相手を見据える
真冬
そうして休憩もせず、何時間も ぶっ続けで訓練をしていた
魔法空間に長いこといたから、 現世ではきっと数日は経ってると思う
そして、ここには意識だけ転送して いると言えど……流石に、人間の 身体には限界があったみたいで
真冬
急に視界が歪んで、とうとう 真っ暗になって、気づいた時には 床に倒れていた
最後に聞いたのは、誰かが 駆けつけてくるような足音と、 「まふまふ」と呼ぶ誰かの声だけ
次に目を覚ました時には、知らない 部屋のベッドに寝かされていた
起き上がって周りを見ると、 病院みたいな場所
だけど、雰囲気が少し 現実離れしている
真冬
誰かが倒れてる僕に気づいて、 ここまで連れてきてくれたらしい
魔法空間に来るとしたら、今はもう ノアさんだけだろうから……
真冬
そんなことを考えていると、不意に 部屋のドアがガチャリと開いた
真冬
彼方
彼方
思わず、部屋に入ってきた 人物に目を疑う
まるで、何もなかったかのように、 いつもみたいに……
……そらるさんに、話しかけられた
真冬
途切れ途切れになりながら、 そらるさんの名前を呼ぶ
彼方
そしたら、僕の近くに寄ってきて、 優しく言葉を返してくれた
あの時みたいに、でもそれとは違う、 色んな感情が混ぜこぜになって、もう 何が何だかよく分からなくなりそうで
気づいたら視界がぼやけて、とうとう 両目から大粒の涙が零れ落ちた
真冬
ぼろぼろと、止めどなく 涙が溢れてくる
おかしいな、あの時涙は 枯れたはずなのに
彼方
少し俯いて、そらるさんが言う
彼方
真冬
突然、そらるさんに抱きしめられた
彼方
彼方
真冬
強く抱きしめて、優しく頭を 撫でながら、そう言ってくれる
それが嬉しくて、その言葉の おかげで、やっと心の重りが 外れたような気がして
僕も抱きしめ返して、そらるさんの 腕の中で思いっきり泣いた
真冬
彼方
真冬
彼方
僕の言うことを、ずっと不安だった ことを、全部否定してくれる。 それだけで嬉しくて
また、そらるさんが 僕を救ってくれたんだ
真冬
彼方
真冬
そらるさんはあの時、魔法界で 療養していたから、現世に戻って 来ていなかっただけだった
倒れた僕を見つけてくれたのも そらるさんで、あの日は本当に偶然、 そらるさんが現世に帰ってくる日と 重なっていたらしい
つまりは、ただの僕の早とちり
あの後、そらるさんは何事も なかったかのように、またネットに 浮上し始めた
同じく行方不明紛いになって いた僕も同時に戻ってきて、 「人騒がせな!」って、2人して みんなに怒られちゃったっけ
でも、みんなが心配してくれてたのが すごく伝わってきて、ちょっと 嬉しかったり……なんてね
何はともあれ、お互い辛いことは あったけど、そのおかげで今が あるような、そんな気もしてくる
彼方
真冬
もう一度そらるさんに頷いて、 桃雪華を握りしめる
大丈夫
自分にそう言い聞かせて、 改めてアランと向かい合った
真冬
コメント
4件
まふくんはいい友達を持ったよ… そらるさん!まふくんが待ってるから帰って来てくれって思ってたけどちょうど重なる日って書いてるから『アラン』から逃げれてもその後なんかあったんかな?
まふくん良かったね… 確かにあんなに帰ってこないと さすがに死んじゃったと思うよね… でも、そらるさん現世にしばらく 帰れなかったのはたぶんそれなりの 大怪我だったってことだよね……? 2人とも生きててほんとに良かった… 2人とも生きててえらい!アランは許さん! そして早く倒してあまちゃんを救って~!! 続き楽しみにしています!!!!!