テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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ゲスト出演を頼んでみた。

第9話 - ゲスト出演第七弾『不運な犯人・後編』@久遠あゆみさん

300

2022年09月19日

#ジャンル問わず

虚木（ｳﾂﾛｷﾞ）

四宮　耀

あ、いや、これは！

榛（はしばみ）司

四宮くん、今は何も喋らないで

四宮　耀

あ、はい…

宿泊客

血塗れって…

宿泊客

もしかして…

宿泊客

その人が犯人…？

四宮　耀

……

榛（はしばみ）司

……

碧　紗羅

榛さん？

榛（はしばみ）司

彼は…

榛（はしばみ）司

四宮耀は私と同じ刑事です

宿泊客

え、そうなのか

榛（はしばみ）司

ただ、現状彼が一番疑わしい人物なので…

そう言って榛は

自身が持っていた手錠を四宮の手にかけた。

四宮　耀

……

榛（はしばみ）司

支配人

榛（はしばみ）司

窓のない外側から鍵がかけられる部屋、ありますか？

支配人

地下の倉庫で良ければ

榛（はしばみ）司

じゃ、そこに行きましょう

四宮　耀

…はい

・

地下倉庫にある

床に固定されたタイプの棚と手錠を結び、

足には四宮が持っていた手錠をかけた。

榛（はしばみ）司

よし、これで逃亡と再犯は防げるはず

支配人

警察へ通報しました

支配人

明日の朝には来てくれるようです

榛（はしばみ）司

わかったわ

榛（はしばみ）司

……

稔　魔叉琉

榛さん？

榛（はしばみ）司

四宮くん

四宮　耀

は、はい

榛（はしばみ）司

服、脱いで頂戴

四宮　耀

！！？

四宮　耀

な、なんでですか！？

榛（はしばみ）司

それ、貴重な証拠品だから

四宮　耀

で、でも、脱いだら……

榛（はしばみ）司

あら、そうね

榛（はしばみ）司

さすがに裸は可哀想か……

榛（はしばみ）司

四宮くんの部屋から

榛（はしばみ）司

着替えを持ってきてあげるから

四宮　耀

うぁぁ……はい

榛（はしばみ）司

稔くん、碧ちゃん、いいかしら？

稔　魔叉琉

はい

倉庫の鍵を閉めると、

その鍵は榛が持つこととなった。

榛（はしばみ）司

支配人

はい

榛（はしばみ）司

少しの間、ここで見張っててもらえますか？

支配人

はい、それは構いませんが

榛（はしばみ）司

お願いします

榛（はしばみ）司

すぐ戻りますので

・

【四宮耀の部屋】

榛（はしばみ）司

えーっと着替えは…っと

稔　魔叉琉

……

榛（はしばみ）司

稔くん？

稔　魔叉琉

榛さんは…四宮さんがやったと

榛（はしばみ）司

思ってるわけないでしょ

榛（はしばみ）司

あり得ないわ

榛は笑って言う。

榛（はしばみ）司

まぁしかし、不運な犯人ね

稔　魔叉琉

不運、ですか

榛（はしばみ）司

そうでしょ？刑事の私達が居て

榛（はしばみ）司

名探偵くんがいるんだから

稔　魔叉琉

そう、ですね

稔　魔叉琉

榛さんや四宮さんが刑事だと知らずに犯行を行ったのか…

榛（はしばみ）司

知っていてやったのなら相当度胸のある犯人ね

稔　魔叉琉

榛さん

榛（はしばみ）司

なに？

稔　魔叉琉

血は…

稔　魔叉琉

靴下にまで付いてましたよね？

榛（はしばみ）司

ええ

榛（はしばみ）司

あれだけ出血していたんだもの、当然よね

稔　魔叉琉

……

稔　魔叉琉

死体の状態はどうだったんでしょうか？

稔　魔叉琉

あの出血量はどうみても一ヶ所刺されただけではないようでしたが

榛（はしばみ）司

さすが、名探偵くん

榛（はしばみ）司

よく見てるわね

榛（はしばみ）司

正確な数はわからないけど、複数ヶ所刺されていたわ

稔　魔叉琉

凶器は背中に刺さっていたあの包丁ですか？

榛（はしばみ）司

司法解剖をしていないから何とも言えないけど

榛（はしばみ）司

可能性は高いわ

稔　魔叉琉

あの人は…

榛（はしばみ）司

坂井さん、ここの従業員ね

稔　魔叉琉

どうしてあの部屋に？

榛（はしばみ）司

扉が不調だったから修理を頼んでいた、と

榛（はしばみ）司

支配人が言っていたわ

稔　魔叉琉

支配人が？

榛（はしばみ）司

ええ

稔　魔叉琉

それは何時頃ですか？

榛（はしばみ）司

出勤してきてすぐだから１７時過ぎだと言ってたかしら

稔　魔叉琉

ということは

稔　魔叉琉

そのあとこの部屋にやってきたのなら

稔　魔叉琉

殺害されたのは１７時過ぎから

稔　魔叉琉

俺たちが悲鳴を聞く１９時過ぎの間ですね

榛（はしばみ）司

そうね

榛（はしばみ）司

ああ、それから

榛（はしばみ）司

殺害された坂井さんは

榛（はしばみ）司

十年前、放火殺人事件があったときにも

榛（はしばみ）司

ここの従業員として働いていたの

稔　魔叉琉

！

榛（はしばみ）司

だから、四宮くんに出勤したら話しを聞いてくるように言ってたんだけどね

稔　魔叉琉

そう、だったんですね

榛（はしばみ）司

…稔くんは四宮くんがやったと思っての？

稔　魔叉琉

……

稔　魔叉琉

四宮さんの犯行だとしたら

稔　魔叉琉

あまりにも矛盾点が多すぎます

榛（はしばみ）司

矛盾点……？

稔　魔叉琉

はい

稔　魔叉琉

説明をする前に…

稔　魔叉琉

紗羅

碧　紗羅

うん、何をすればいいの？

・

【”悠然の宿”１階】

榛（はしばみ）司

よし、貴重な証拠品も手に入れたし

榛は血塗れの服が入った保存袋を持って、

どこか嬉しそうに微笑んだ。

榛（はしばみ）司

あとは、犯人を見つけるだけね

支配人

犯人って……

支配人

あの四宮っていう刑事じゃないんですか？

稔　魔叉琉

現状から考えると

稔　魔叉琉

四宮さんが犯人である可能性はかなり低いです

支配人

どうしてそう言い切れるんですか？

支配人

従業員の坂井が殺されているとき

支配人

お客様は四宮を除いて全員

支配人

宴会場に揃っていました

支配人

なら、あのとき坂井を殺害することができたのは

支配人

アリバイのない四宮だけです

榛（はしばみ）司

今はまだ解剖を行っていませんし

榛（はしばみ）司

正確な死亡推定時刻もわかりませんから

榛（はしばみ）司

それは何とも言えませんけど

榛（はしばみ）司

従業員の皆さんは？

支配人

二人のフロント係はずっとフロントにいましたし

支配人

料理長や調理スタッフは全員厨房にいました

支配人

仲居も全員宴会場にいて

支配人

夕食の準備をしていましたし

榛（はしばみ）司

支配人さんは？

支配人

わ、私はフロントの奥の部屋いましたよ

榛（はしばみ）司

それを証明する人は？

支配人

奥の部屋の出入り口はフロントに繋がっている一か所だけです

支配人

フロント係はずっと持ち場にいたので

支配人

私が出入りをしていれば見ているはずです

支配人

が、私は悲鳴が聞こえるまで

支配人

一歩も部屋の外に出ていませんよ

榛（はしばみ）司

なるほど

榛（はしばみ）司

わかりました

榛（はしばみ）司

では、どうして坂井さんは一人あの部屋にいたんでしょう？

支配人

それは先程も説明しましたけど

支配人

あの部屋の扉を直すために行って貰ったんです

榛（はしばみ）司

貴方の指示ですか？

支配人

ええ

支配人

あ！

支配人

そう！そうです！

支配人

榛刑事は坂井が出勤したら四宮刑事に伝えてほしいって

支配人

頼みましたよね？

支配人

聴き込みをしたいから、と

榛（はしばみ）司

ええ、そうね

支配人

だから、フロントからお部屋の方に電話をかけて伝えたんです

支配人

隣の部屋に清掃に行った従業員が例の従業員だと

榛（はしばみ）司

なるほど

榛（はしばみ）司

それで四宮くんは隣の部屋に行って坂井さんを殺害した、と

支配人

はい

稔　魔叉琉

それだと矛盾する点があるんです

支配人

矛盾する点？

稔　魔叉琉

支配人は坂井さんが亡くなった部屋を見ましたか？

支配人

ええ、見ましたよ

支配人

畳が真っ赤に染まるほどの出血量で

稔　魔叉琉

そうなんです

稔　魔叉琉

畳は真っ赤に染まっていました

稔　魔叉琉

しかし、その部屋の入り口は？廊下は？

支配人

え？

稔　魔叉琉

四宮さんが履いていた靴下は真っ赤ですよね？

稔が指さすと、

榛が保存袋を見せる。

中に入っている真っ白だった靴下は、

血を吸って半分以上が真っ赤に染まっていた。

稔　魔叉琉

こんな状態で歩けば

稔　魔叉琉

あちこちに足跡が残るはずですが

稔　魔叉琉

どこにも見られませんでした

稔　魔叉琉

四宮さんの部屋でさえも

支配人

そ、それは

支配人

く、靴下を脱いだんじゃないですか？

支配人

ほら、濡れて気持ち悪くなって…

稔　魔叉琉

それで、自分の部屋に戻って

稔　魔叉琉

また履いたんですか？

支配人

あ……

稔　魔叉琉

さらに、矛盾する点があります

稔　魔叉琉

刃物を持って人を刺す場合

稔　魔叉琉

犯人も手を怪我するはずなんです

稔　魔叉琉

ですが、四宮さんにはそんな傷は見られなかった

支配人

素手じゃなかったんでしょう

稔　魔叉琉

それは俺も考えました

稔　魔叉琉

きっと手袋か何かを付けて犯行に及んだんだろう、と

稔　魔叉琉

でも、それが見つかっていない

支配人

す、捨てたんじゃないんですか？

稔　魔叉琉

血塗れの服は着ていて

稔　魔叉琉

血塗れの手袋は捨てる？

稔　魔叉琉

だったら、一緒に服も捨てれば良かったと思いませんか？

支配人

じ、時間がなかった、とか？

稔　魔叉琉

その可能性もあるかもしれませんが

稔　魔叉琉

でも、違います

稔　魔叉琉

犯人は四宮さんではないから

稔　魔叉琉

手袋だけ捨てたんです

稔　魔叉琉

そこには犯人の指紋が付いていますから

支配人

次から次へとよくもそんな妄想を

碧　紗羅

妄想なんかじゃありません

支配人

！！！！？

稔　魔叉琉

紗羅、見つかったか？

碧　紗羅

うん、あったよ

碧　紗羅

はい、これ

差し出された保存袋の中には

真っ赤に染まった

軍手が入っていた。

支配人

！！

碧　紗羅

厨房の奥に置いてあった

碧　紗羅

生ゴミを入れる袋の中にねじ込んでありました

榛（はしばみ）司

やっぱりあったのね

榛（はしばみ）司

見つけて来るなんてさすがだわ

支配人

いや、これはっ

支配人

ちょ、調理で使うもので

稔　魔叉琉

この血が坂井さんのもので

稔　魔叉琉

内側に付いている指紋が誰のモノなのか

稔　魔叉琉

鑑識が調べれば一発でわかるでしょうね

支配人

……

碧　紗羅

料理長や調理スタッフさんに聞きましたけど

碧　紗羅

四宮さんと思われる人物は

碧　紗羅

一度も厨房に来た事がないそうですよ

支配人

うっ…ぐっ……

支配人

……

支配人

い、いや！

支配人

それもおかしな話だ！

支配人

もし、もしも、だ

支配人

四宮が犯人じゃないというのなら

支配人

犯人はどうやって四宮の部屋に入った？

支配人

どうやって彼の服を奪ったんだ！？

支配人

彼からはぎ取ったというのなら

支配人

彼が犯人を見ているんじゃないのか？

支配人

そうじゃないのなら犯人はやっぱり

榛（はしばみ）司

私は

榛（はしばみ）司

ずっと引っ掛かっていたことがあるの

支配人

え？

榛（はしばみ）司

真夜中に電話をしても

榛（はしばみ）司

２コール以内で出る”あの”四宮くんが

碧　紗羅

（さすが四宮さん……）

榛（はしばみ）司

電話に出なかった

榛（はしばみ）司

呼びかけにも答えなかった

榛（はしばみ）司

一瞬、殺されたんじゃないかって思ったんだけど…

榛（はしばみ）司

一つだけ思い当たる節があったの

支配人

…な…なんでしょう

榛（はしばみ）司

支配人、貴方

榛（はしばみ）司

私たちと会って話をしたときに

榛（はしばみ）司

バタフライピーを使ったハーブティーを出してくれたわよね

碧　紗羅

バタフライピーって

碧　紗羅

あの綺麗な青色の？

榛（はしばみ）司

ええ

碧　紗羅

レモンを入れると紫色に変化するんで

碧　紗羅

最近人気を博していますよね

榛（はしばみ）司

ええ、まさにそれよ

稔　魔叉琉

ああ、なるほど

稔　魔叉琉

それに睡眠薬を入れたのか

支配人

な、なにをっ

稔　魔叉琉

知らないなんて言わせませんよ

稔　魔叉琉

最近の睡眠薬には悪用防止で青い色が付けられてる

稔　魔叉琉

だから、元々青色のバタフライピーのハーブティーに入れてもわからない

支配人

そ、そんなあてずっぽうを！

稔　魔叉琉

そうでもしなきゃこの事件は成立しないんだよ

支配人

なにが……

稔　魔叉琉

犯人は本当に不運だった

稔　魔叉琉

まさか、このタイミングで

稔　魔叉琉

十年間身元不明だった遺体の身元が判明するなんて

稔　魔叉琉

思ってもいなかったからだ

支配人

……

稔　魔叉琉

だから、急いで事情を聞きに来た刑事に睡眠薬を盛った

稔　魔叉琉

睡眠薬の効果が出たところで四宮さんの部屋に侵入し

稔　魔叉琉

洋服を盗み

稔　魔叉琉

１７時に出勤した坂井さんをあの部屋で殺害

稔　魔叉琉

服を脱いで

稔　魔叉琉

四宮さんの部屋に戻り

稔　魔叉琉

返り血を浴びた洋服を

稔　魔叉琉

四宮さんに再び着させた

稔　魔叉琉

そして、素知らぬ顔でフロントの横を通り

稔　魔叉琉

部屋に戻る

稔　魔叉琉

頃合いを見て四宮さんの部屋に電話をし

稔　魔叉琉

まるで繋がったかのように会話をする

稔　魔叉琉

もちろん

稔　魔叉琉

その時、四宮さんは睡眠薬でぐっすり眠っていたはず

稔　魔叉琉

そして、あの部屋の壊れた扉は

稔　魔叉琉

きちんと”カチッ”と音がするまで閉めないと

稔　魔叉琉

ゆっくりと開いてしまう

稔　魔叉琉

その扉の性質を利用し

稔　魔叉琉

食事を終えて部屋に戻る宿泊客が

稔　魔叉琉

あの部屋の前を通ったときに

稔　魔叉琉

扉が開いていることに気がついて悲鳴を上げれば……

稔　魔叉琉

四宮さんに罪を着せることができたわけです

支配人

…そ…そんなことが出来る人がどこに

稔　魔叉琉

俺の目の前にいますよ

支配人

んなっ！？

支配人

ま、まさか私が犯人だと！？

支配人

ふ、ふざけるのもいい加減にしてください！

支配人

榛刑事も何か言って下さいよ！

榛（はしばみ）司

私は概ねその推理で合っていると思ってるわよ

支配人

な、なにを

榛（はしばみ）司

だって、これ

榛（はしばみ）司

マスターキーを常時持っている支配人

榛（はしばみ）司

あなたにしか出来ないことなんだから

支配人

！？

支配人

き、君たちは本当に想像力が豊かなんだね

支配人

その話しの証拠は一体どこに…

そう言った支配人の眼前に、

榛は血塗れの服が入った保存袋を

紗羅は血塗れの軍手が入った保存袋を

掲げて見せた。

支配人

あ……

榛（はしばみ）司

私の出る幕は無かったわねぇ

言って榛は微笑む。

支配人

うっ……

支配人

あ、

支配人

うわぁぁぁぁ！！

支配人が叫び声を上げ、

紗羅に掴みかかろうとしたが

紗羅は流れるような動きで腕を捩じ上げ、

床に押し倒した。

榛（はしばみ）司

碧ちゃんそのままで…

榛は素早く手錠を取り出し、

支配人の手にかけた。

榛（はしばみ）司

よし、これでいいわ

稔　魔叉琉

紗羅、怪我は無いか？

碧　紗羅

うん、大丈夫

榛（はしばみ）司

凄いわね、碧ちゃん

碧　紗羅

え、えへへ……

榛（はしばみ）司

はぁ…

榛（はしばみ）司

そういうところ

榛（はしばみ）司

四宮くんも見習ってほしいわね

四宮　耀

え、あ、

四宮　耀

なんかすいません

碧　紗羅

四宮さんっ

支配人

な、なんでお前がここに！？

榛（はしばみ）司

何でって犯人じゃないんだもの

榛（はしばみ）司

繋いでおくのはおかしな話でしょ？

四宮　耀

（ちょっと前からいたけど…）

四宮　耀

（誰も気づいてくれなかった……）

四宮　耀

（なんて言えない……）

支配人

くそ！！

支配人

俺じゃない！

支配人

俺じゃないんだ！！

榛（はしばみ）司

はいはい

榛（はしばみ）司

言い訳は署で聞くから

そのまま榛はズルズルと支配人を引きずっていった。

・

【地下倉庫】

榛（はしばみ）司

じゃ、四宮くん

榛（はしばみ）司

警察が来るまで見張り、お願いね

四宮　耀

はい、任せてください

倉庫にある棚と共に手錠をかけられた支配人。

四宮は椅子を手繰り寄せて座り、

ノートパソコンを開く。

支配人

くそっ

支配人

オレじゃない…オレじゃないんだ…

四宮　耀

いい加減諦めたら？

支配人

うるさい！

支配人

こんなはずじゃあなかったんだ……

支配人

こうなったら逃げ出してっ

四宮　耀

馬鹿なことは考えないでよ

支配人

お前みたいな貧相な男一人なら

四宮　耀

……はぁ

四宮はスマホを取り出し

四宮　耀

君は

四宮　耀

そこまで愚かじゃないでしょ？

箱の上にスマホを置いた。

支配人

うるさい

支配人

お前に…

支配人

何がわかるって…

支配人

あれ……

支配人

頭が…

四宮　耀

……

そして、支配人は項垂れる。

四宮　耀

そうやって大人しくしてればいいんだよ

四宮はため息をこぼし、

パソコンで報告書の作成を始めた。

・

翌朝、

思ったよりも早く警察は到着し、

慌ただしく捜査が始まった。

しかし、

すでに榛と稔たちの活躍により

事件はあらかた片付いていたので

それほど手間取ることはなかった。

宿泊客や従業員に対して行われたのも

形式通りの事情聴取だけで

全員が昼前には解放された。

榛（はしばみ）司

とんだ休暇になってしまったわね

稔　魔叉琉

いえ、こればかりは致し方ありません

榛（はしばみ）司

名探偵の宿命ってやつかしら？

碧　紗羅

榛さんたちは？

榛（はしばみ）司

もう少し仕事が残ってるから居残りね

碧　紗羅

そうですか…

榛（はしばみ）司

あ、あと、これ

榛は名刺を渡す。

榛（はしばみ）司

近くに来たら連絡してね

榛（はしばみ）司

今回のことで随分助けられたから

榛（はしばみ）司

お礼、させてね

稔　魔叉琉

……俺が解決しなくても

稔　魔叉琉

榛さん一人で解決できたと思いますけど…

榛（はしばみ）司

ふふっありがと

榛（はしばみ）司

でも、稔くんと紗羅ちゃんの活躍を目の当たりにできてよかったかも

榛（はしばみ）司

あとは、これで四宮くんが少しは成長してくれるといいんだけどなぁ

稔　魔叉琉

榛さんはどうして彼と？

榛（はしばみ）司

私の面倒なことを全て嬉しそうにしてくれるの

榛（はしばみ）司

事務処理も情報収集も

榛（はしばみ）司

そんな彼以上に有能な部下はいないのよ

碧　紗羅

その言葉を聞いたら四宮さん喜びそうですね

榛（はしばみ）司

ふふっ、そうね

四宮　耀

司先輩！！

四宮　耀

ちょっといいですか！？

四宮が遠くから榛を呼ぶ。

榛（はしばみ）司

じゃ、私はこれで

稔　魔叉琉

はい

そうして稔と碧は榛たちと別れ、

帰路についたのだった。

・

【一ヶ月後】

・

稔　魔叉琉

もしもし

藤野警部

稔君

藤野警部

頼まれてたこと調べてきたぞ

稔　魔叉琉

助かります

藤野警部

君らが関わったあの事件だが

藤野警部

君の推理通り支配人が犯人だった

稔　魔叉琉

動機は？

藤野警部

十年前の事件が明るみになるのを恐れて、だそうだ

稔　魔叉琉

つまり、十年前の事件は

藤野警部

ああ、それなんだが

稔　魔叉琉

どうしました？

藤野警部

そのことについて聞くと

藤野警部

あいつは途端に支離滅裂な発言を繰り返すようになって

藤野警部

今ではロクに会話も出来ない状態になってしまったそうだ

稔　魔叉琉

どういうことです？

藤野警部

さぁな

藤野警部

それで担当の刑事が妙なことを言ってたんだが

稔　魔叉琉

なんですか？

藤野警部

こっちじゃあそういう犯人が増えた、てな

稔　魔叉琉

そういう犯人？

藤野警部

犯行を認める供述をしたあとに錯乱したり暴れたり

藤野警部

まともじゃなくなるんだと

藤野警部

それがここ最近増えてるらしい

稔　魔叉琉

……

藤野警部

おまけに、だ

藤野警部

そうなるのは

藤野警部

必ず榛司が捕まえた犯人なんだそうだ

稔　魔叉琉

え…

藤野警部

そんなんだからいくら切れ者の彼女も

藤野警部

捜査一課の最前線から外され

藤野警部

長期未解決事件を扱う係に異動になったのかもな、て

藤野警部

同期は言ってたぞ

稔　魔叉琉

そう、なんですか

藤野警部

で

藤野警部

榛司のことでなにか気になったことがあれば教えてほしい、とのことだ

稔　魔叉琉

わかりました

藤野警部

報告はこんなもんだ

稔　魔叉琉

ありがとうございます

・

稔探偵事務所

稔　魔叉琉

（……榛司）

稔　魔叉琉

（四宮耀…か）

稔はスマホに二人の名前を入力する、と。

碧　紗羅

魔叉琉！

碧　紗羅

榛さんからスイーツの詰め合わせが届いたよ！

碧　紗羅

すっごく美味しそうなの！

碧　紗羅

食べるよね？

稔　魔叉琉

ああ

碧　紗羅

じゃあ、私、飲み物用意するね！

そう言って足取り軽く給湯室に向かう碧の姿を見て笑みをこぼすと、

稔は何事もなかったかのようにスマホをしまい、

榛から届いた荷物を開けた───。

・

─END─

この作品はいかがでしたか？

300

7件

面白かったです！！！魔叉琉と紗羅のやり取りも可愛くて、事件も読み応えがあって…コラボしてもらえてとても嬉しかったです！！！🥰 凛とした榛さんと少し抜けてる？四宮くんのコンビも見ていて楽しかったです！少し抜けてる？と思っていたら1人になった瞬間何か裏があるような…🤔🤔🤔 榛さんと魔叉琉の推理の照らし合わせが、The 頭が良い人たちの会話って感じで好きです() →