主人×使用人

へー、偶然だね。 私も＊＊＊にくるみって名前つけようとしてたんだよ。

屋敷の食材がもう殆どなくなって しまったため、町へ買い出しに 来ていた時のこと。

すごく久しぶりに聞く声。 まさか、と思いながら後ろを 向いた。

お互いの記憶が合致しないのは 長く離れすぎたせいなのか。

僕が聞くと、 リイヌは照れくさそうに 頬を掻いた。

そう言いながら出てきたのは 如何にもなイケメン。

この二人の間になんて、 僕はいちゃいけない。

現実を押し付けられたようで、 胸が苦しい。

二度と、会うことがないよう 願った。

食料を買いに町に行った彼は、 ほんの30分ほどで帰ってきた。

しかし、真っ直ぐ帰ってきた ようには思えなかった。

ほんのり赤くなった瞼と鼻。 よく見ると涙の痕もあった。

息が切れているところから、相当急いで帰ってきたのだろう。

そう言った彼の手は 震えていて、

とても大丈夫そうには 見えなかった。

図星なのだろう。 暫くの間、顔を俯かせていた。

やっと言葉を発したかと思えば、 彼の口から出てきたのは　 反論の言葉。

それだけ言いたくないことなのか。

ただ、その時の僕は知りたくて仕方がなかった。

少し寂しそうな顔で言う。

こいつも言うようになったな。

本性が表れたという感じか。