レイ
総統。ゾムさんが
買ってきてくださった
ロールケーキは
覚えていますか?
グルッペン
…ああ、ちょうど俺も
同じものを食べようと
していたアレだな。
レイ
はい、
あのロールケーキは、
偶然、たまたま
同じものが二つ
用意されていました。
レイ
……ところで、ゾムさんは
エーミールさんとの
会話であのロールケーキは
売れ残りギリギリを買えた
と話していました。
レイ
エーミールさん、
覚えていますか?
エーミール
え?ああ、はい。
メモにもとってあります
話を振られたエーミールは懐から
手帳を出して広げてみせる。
グルッペン
ん?まて、
おかしいゾ?
レイ
はい。
お気付きに
なられましたか。
グルッペン
ああ、ゾムの
言っていることは
おかしい。
何故ならあれは…
レイ
…あのロールケーキは
"全予約制"の限定品
ですから。
鬱
あっ!
レイ
なので、売り切れ間近で
買ったというゾムさんの
言葉は嘘になります。
レイ
おかしいなと思って
くられ先生に科学分析を
お願いしたところ………
"致死量以上の毒"が
検出されたそうです。
レイ
総統を刺した男は、
元々用水路を爆破し
注意を引きつけ、
その間になんらかの
手段で毒入りケーキを
食べさせようと
したのでしょうが、
レイ
勝手に総統は職務中に
ケーキを食べようと
するし、食べても何の
変化も起こらないしで
焦った男は強行突破に
出たのでしょう。
グルッペン
うっ………
総統に少しダメージが入ったが、
これで"ゾムが毒入りケーキを
グルッペンに渡した"という事実が
わかった。
レイに向けられていた分の武器も
向きを変え、ゾムを囲むようにする。
ゾム
お、俺は……
幹部一同
………
レイ
ああ、皆さん
武器を下ろしてください。
シャオロン
え?
殺傷能力は無いが気絶させるには
十分なプラスチックシャベルを構えた
ある者は動きを止め、
レイ
ゾムさんを拘束する
必要はありません。
ショッピ
え?
レイ
ゾムさんは、
幹部一同
……ゑ?
チーノ
え?え?
でもさっき…
………え?
全員仲良くクエスチョンマークと
手を繋いでコサックダンスを踊った。
グルッペン
……わかるように
説明してくれるか。
レイ
はい。
レイ
わかりやすく言うと、
ゾムさんは
『記憶を消された
元内通者』です。
トントン
記憶を
消された……⁉︎
レイ
厳密には、
「記憶混濁」
なのですが。
グルッペン
どういうことだ?
レイ
……では、ゾムさん
質問です。
ゾム
………なんや。
レイ
エーミールさんとの
会話でb国のお酒が
美味しかったと
おっしゃっていましたが
それはどこで飲んだ物か
覚えていますか?
ゾム
はあ?
そんなもん……
ゾム
…………っ
コネシマ
ゾム?
ゾム
……っあかん、
思い出されへん。
レイ
…やはりですか。
レイ
ゾムさんは再三
b国で食べた寿司が
まずかったと
おっしゃっていました。
レイ
おそらく、その中に
催眠薬が含まれていた
可能性が高いです。
シャオロン
催眠薬⁉︎
レイ
催眠薬は睡眠薬の
別名でして………
…ああ、これは
トントンさんに
言いましたが。
レイ
その寿司に
混入されていた
薬のせいでゾムさんは
b国の者に捕まったのでは
ないかと。
チーノ
………つまり
どういうこと
だってばよ………
エーミール
えーと、つまり…
ゾムさんが食べた
寿司には睡眠薬が
入っていてぐっすり状態の
ゾムさんは無事b国に
捕まったということかと。
チーノ
やばいやん。
ゾム
だからなんか変な味
したんか………
鬱
ゾムって味に
うるさいからな。
ショッピ
関係あります?
レイ
捕らえられたゾムさんは
その時に内通者としての
指令を受け、
毒入りケーキを土産に
解放されたのでしょう。
グルッペン
……なるほどな。
グルッペン
しかしそれと記憶混濁、
何が関係するんだ?
レイ
……睡眠薬服用中に
飲酒をすると、
記憶混濁が引き起こされる
ことがあります。
レイ
……そうですよね?
しんぺい神
うん、そうだね。
だから医師はちゃんと
注意喚起をして処方
するんだけど……
ロボロ
睡眠薬を飲まされてるって
なんで気付いたんや?
レイ
……睡眠薬の
副作用である
運動機能の低下、
注意力低下が
見られましたので。
鬱
え?
レイ
運動機能の低下くらい
していないと私の
腹パンが綺麗に
決まるわけないんですよ
シャオロン
ああ〜
レイ
それと、私とロボロさんを
見間違えて
引っ張っていったのも
注意力低下が原因かと。
ショッピ
なんや、ロボロさんと
レイ背丈いい勝負やから
間違えたんかと……
ロボロ
そんなことありゅ?
幹部一同
あるな。
ロボロ
………
レイ
……それで睡眠薬を
飲まされ、さらに
お酒で記憶混濁を
起こされたゾムさんは
密命を受けたまま、
帰ってきたと
いうわけです。
チーノ
はぇ〜……
エーミール
……ん?
待ってください。
エーミール
密命を受けたまま
帰ってきたということは、
まだ………ゾムさんの
体には催眠が
残ってるのでは?
幹部一同
……あっ
レイ
………
レイ
……それは問題
ありません。
半分呆れたような、
うんざりとした顔でレイが言う。
エーミール
え、でも……
エーミールが説明を求めるよりも
速く、レイがゾムにナイフを投げた。
ゾム
うおっ⁉︎
ゾム
なにすんねん、
レイ!
レイ
……敵には、
誤算がありました。
レイ
ひとつは、ゾムさんが
寿司の味に違和感を
覚えたこと。
レイ
…もうひとつは………
レイ
ゾムさんが、睡眠薬に
免疫を持っていた
ことです。
幹部一同
………えっ?
ショッピ
免疫………?
トントン
……………グルさん
トントンが前を向いたまま
グルッペンに問いかけると、
グルッペンはギクッと
擬音がつきそうなほど
肩を跳ねさせる。
グルッペン
………い、いや?
俺は何もしてないゾ?
グルッペン
ちょっと免疫つくかなぁ
とか思ってたまに食事に薬
混ぜてたとかじゃないゾ?
幹部一同
はぁっ⁉︎
トントンは憤慨といった様子で
粛清剣を、ロボロは呆れた様子で
ため息を。
知らぬ間に実験台にされていたゾムは
自らの手で自分を抱くようにする。
ゾム
こっわ………
グルッペン
ほ、ほんとに!
ほんとにちょっとだけ
なんだゾ⁉︎
グルッペン
しんぺい神にも
安全面見てもらってた
からな⁉︎
エーミール
………しんぺいさん?
しんぺい神
……専門家の指導のもと
安全を考慮して
行っています☆
今まで他人事のようにそっぽを
向いていたしんぺい神はいきなりの
告げ口に、ダブルピースでテヘッと
笑う。
グルッペンは本当に病み上がりかと
いうくらいのスピードでまだ言い訳を
続ける。
トントン
ナニワロテンネン
レイ
まあ……というわけで
免疫を持っていた
ゾムさんに催眠が
効いていたのはせいぜい
軍に来たその日まで
だったと思います。
レイ
その証拠に
私が投げたナイフもさっき
手で止められましたし、
レイ
総統室に向かう時
先にスタートした
トントンさんを大幅に
引き離して一番に部屋に
つく謎現象が起こって
いましたので。
レイ
運動能力や集中力が
低下していれば、
できないはずの
動きです。
エーミール
なるほど……
レイ
………総統。
レイ
以上が、私の推理です
レイ
毒入りケーキはゾムさんが
故意に持ってきた物では
なく、待たされた物。
レイ
男の言っていた"内通者"
は、催眠の解けた
ゾムさんを勝手にそう
思っていただけのこと。
レイ
全ては、b国の姑息な
策略によるものです。
グルッペン
………
レイ
……本来なら、普通の
"内通者"がいる前提で
推理するべきでしょうが
…………
レイ
私は………私は、
この軍の幹部の方々の
総統に対する忠誠は
並ならぬものだと
思っていますので。
レイ
今回、少し曲がった
角度から事件を見ました。
レイ
ですから、もしかすると
間違っているかも
しれなくて……………
グルッペン
………
グルッペン
…………レイ
レイ
……!はい。
グルッペン
別に難しいことでは
無いだろう?
レイ
え?
グルッペン
俺は元々内通者は
いないと思っていたし、
いたとしてもなんらかの
理由があると思っていた。
グルッペン
それにお前の推理を
重ねると…要するに
グルッペン
詰まるところだ、あの
b国の馬鹿共は…
グルッペン
うちの大事な幹部を
道具にしようとした
挙句、俺を殺させようと
したんだろう?
幹部一同
‼︎
ゾム
………!
グルッペン
それなら………
グルッペン
『戦争』
グルッペン
………これ以外の
選択肢があるのか?
全員が押し黙り、全員がグルッペンに
飲まれている。
レイ
………ありません。
グルッペン
……はは、よし。
グルッペン
エミさん、トントン、
良いよな?
トントン
……………
トントン
………今回だけやぞ。
エーミール
………私も、
今回の件なら。
エーミール
………ゾムさんを
利用しようとした方達
には、少し痛い目を
見て欲しいので。
トントンが鋭い目で噛み潰すように
呟き、エーミールは表情こそ変わって
いないが確実な殺意と怒りが
感じ取れる。
ゾム
エミさん………
グルッペン
お前らも………
いいな?
グルッペンが幹部達に問いかけると、
全員が当たり前だという風に
頷いた。
グルッペン
よし、では………
グルッペン
我々の仲間を甘く見た
罰だ!お前ら‼︎
グルッペン
………b国を徹底的に
潰すぞ。
幹部一同
………総統閣下の
仰せのままに。
…b国、彼らは自分達が喧嘩を売った
相手が一体何者か、