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病院とは人生の最初と最後を飾るもの
人は病院で生まれそして病院で臨終する
その間も体に異常を感じれば何度もお世話になるそんな施設だ
そして少なからず自分の年齢では死ぬはずのない歳で亡くなる方もいる
事故によるもの
治療法の確立されていない病気
そして苦渋の選択を迫られ新たな命が 日の目を見ることなく去る
それが病院という施設だ
そして病院と聞くとやはり不可思議な現象または噂などが思いつく
特に看護師などはそんな不可思議な現象に合う確率が高いという
看護師だけでなく患者の中にもそのような現象に合う人も居るという
俺は今入院している
と言っても別に大きな怪我や病気で入院をしている訳では無い
一応軽いもので早くても来月には退院出来るとの事だ
病院での生活は初めてで思ったより悪くはなかった
強いて言えば病食が薄いくらいだった
初日はそれで幕を閉じその後も何も変わらない日々を送る
はずだった……
退院間近のある日の夜
何処からか気味の悪い音が聞こえてきた
ズルッ……ズルッ……
それは何かを引きずるような音だった
音の正体が気になり俺は病室を出る
廊下を見てみるが異常はない
そこには薄明かりのみで照らされた暗く長い廊下があるだけ
誰かが何かを引きずった痕跡もなかった
気のせいかな…
そう思うようにして自分のベッドにと戻り再び眠りにつこうとする
するとまたあの音が聞こえる
最初に聞いた音と違い何かを引きずる音ではなく
何かが這いずる音にと変わっていた
最初の時は勢いのままに行動をしたが
2回目はその反省を生かしてゆっくりと病室の扉を開ける
変わらず廊下は暗い空間が続いている
しかしひとつ最初と違う事はあの音が消えていない事だった
その音に興味を惹かれたのか
はたまた【何か】に招かれたのか
俺はその音を頼りにあかりの薄い廊下を歩く
音を頼りに進んでいくと地下にと続く階段を見つけた
音はその下まで続いている
そのまま俺は地下にと進む
手すりや階段を見た感じホコリを少し被っていて使われていないものと判断できた
その先に何があるかそれが気になるためかそう判断しても気にはとめなかった
少しして観音開きの大きな扉が見えてきた
その扉の上側に何か書いてある
階段を降りてる最中に見えただけなので文字までは読めなかった
あと少しで階段が終わると思った時だった
なにかに足を取られ大きくしりもちをついてしまった
起き上がろうと床に手を着いた時
ヒヤリとなにか冷たい感触が伝わる
慌ててその床を見てみるとなにかの液体で床は濡れていた
それだけでなくその液体には妙な粘り気もあったのだった
そしてその不気味な液体はあろう事かここに来るまでの道に続いていたのだ
この異様な状態に心音は早くなり
暑くもないのにビッショリと汗をかいていた
そして降りてくる時に見えていたあの扉
上にネームプレートのようなものが付けられており
そこには大きく少しかすれた字で
【霊安室】
と書いてあった
ここまで来て後に引けなくなった
そのまま霊安室の扉を開き中に入る
中はとても暗く何も見えない
目が慣れるのに時間が掛かるほどのものだ
開けた時にヒヤリとした空気が俺の頬をかすめる
それと共に食物が腐敗したような異臭が嗅覚を刺激する
少しずつ目が慣れて来て再び辺りを見渡す
やはり使われていないのか遺体らしきものは見当たらない
ここで少し疑問を抱く
もう使われていないのに何故腐敗臭がしたのだろうか
目が慣れて辺りを見渡した時には誰もいなかった
何も無かった
にもかかわらず腐敗臭がした
考えれば考えるほど怖くなった
考え込んでいて気がつかなかったがこの部屋に入った途端
あの不気味な音が消えていた
そして代わりに誰かの声が聞こえてきた
いや、正確には泣き声だった
その声は赤子のようなしかしそれでいてどこか悲しい声に聞こえた
耳を澄ますとその声は後ろから聞こえている
振り返る勇気を何とか振り絞り
恐る恐る振り返る
するとそこには赤黒いどよめく何かが床を這いずっていた
そして恐らく口だと思われる所をパクパクしながら何かを発する
それは言葉ではなく泣き声で…
異様な光景に腰を抜かしゆっくりと後ろにとたじろぐ
その時また手になにか張り付いた
それは階段前で見たあの粘着質のある不気味な液体だった
その液体の出処はあのなにかで間違いはなかった
泣き叫びながらゆっくりと近づくそれに
俺は腑抜けた腰を何とか上げて部屋を後にする
ただひたすらに階段をかけ登り自室に戻る
そしてベットに潜り込み朝が来るのを待ち続けた
いつの間にか寝てしまったようだ
昨日の出来事はなんだったのか
あれは夢だったのか
そう思おうとした矢先
ふと自分の手を見てみる
その手は昨日あの粘着質のある液体を触ったそのままの状態だった
あれは夢じゃない
そう確信に変わった
ここでひとつ考えてみる
自分を襲ったあの何かについてだ
見た目こそ酷いものであったが
あの声は間違いなく赤子だった
もしかするとあの何かは生まれてくることの出来なかった
赤子達の霊が異型な形として具現化したものだったのかもしれない
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