夜。窓の外では雨が細く降っていた。
柔らかなベッドの上、世一はシーツの上で小さく丸まり、誠志郎の指先が彼の髪をゆっくりと梳いていた。
誠志郎
世一
誠志郎
世一はゆっくり頷く。その頷きだけで誠志郎は満足そうに笑みを浮かべた。
誠志郎
誠志郎の声は穏やかで優しい。でも、その裏にあるものは、本人すら気づかぬまま深く深く沈んでいた。
そうしてふたりは“ルール”を交わす。
──外では手を繋がない。 ──他人の前では話さない。 ──他の誰にも笑いかけない。 ──匂いを残さない。 ──どんなことがあっても、ふたりだけの秘密にする。
世一はそのルールを守ることで、安心を得る。守られることで、自分の壊れた心が繋がっている気がした。
翌朝。
学校に凪だけが現れ、教室内に少しざわめきが走る。誰も何も言わないが、“あの噂”はもう半分真実になっていた。
廻がちらっと視線を送る。口元に笑みを浮かべながら、声もかけずにそっと視線を落とした。
そしてその昼休み。
教室の片隅で玲王が廻と何やら話していた。
玲王
廻
廻
玲王は唇を噛んだ。
玲王
廻
玲王
玲王の目に、黒い影が浮かんだ。
その日の放課後。世一のスマホにメッセージが届いた。
玲王
世一の心臓が跳ね上がる。
すぐに制服を羽織り、震える足で玄関を飛び出した。
誠志郎が倒れた
その思いだけで、身体は勝手に動いた。
けれど、保健室の扉を開けた瞬間、そこに誠志郎の姿はなかった。代わりにいたのは、玲王。
玲王
世一
玲王
玲王の笑みは、もはや優しさを装うものではなかった。
玲王
言葉のひとつひとつが、鋭い刃になって世一を裂いていく。
世一
玲王
それは、潔にとって“いちばん言われたくない言葉”だった。
ぐらりと世界が揺れた。
世一
息ができない。酸素が薄い。心臓が暴れてる。
玲王は口角を上げて、世一に近づこうとする。が、扉が乱暴に開かれた。
誠志郎
現れたのは誠志郎だった。息を切らせ、冷たい目で玲王を睨みつけていた
誠志郎
玲王
玲王が戸惑っている間に、誠志郎は世一のもとへ駆け寄った。
ぐしゃりと抱きしめる。震える潔の背中を、静かに、優しく、なで続けた。
誠志郎
あの夜に作った“ふたりのルール”は、こうして、ひとつの嘘で強化された。
そして、もう一歩。
ふたりの世界は、外界から孤立していく。
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コメント
8件
今回も神作×最高でした.ᐟ.ᐟ 🫶250にしときました(* 'ᵕ' )☆ 続き頑張って下さい🔥 次回も楽しみに待ってます✨
続き欲しい人〜
こういうの好きすぎてさいこうですっ!