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ひな
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のだかぶ 『誓いの言葉』 新しい拠点を構える上で、重要なのは、襲撃に備える事である。一番厄介なのは、地の利を生かした戦術による襲撃。空龍街を拠点とする天羽組から朱雀町は離れており、地図は覚えていても、細部までは把握しきれていない部分が多い。新しい拠点の確保と地理の把握のために、野田は華太と朱雀町の街を歩いていた。 郊外に差し掛かかった所で、突如、ゴーンと鐘の音が鳴り響く。鐘の音に驚き、何事かと立ち止まる。鐘の鳴った方を向くと、庭先で結婚式が執り行われていた。 「新型ウイルスが落ち着いてから、挙式を挙げる人、増えてますね」 「興味ない野田」 興味ないと言った割には、野田はその場から動こうとしなかった。 参列者に囲まれ、幸せそうな新郎新婦の姿が、野田の目に映る。 華太も俺なんかに捕まらなければ、今頃、綺麗な嫁さん貰って、幸せな家庭を築いていただろ。いざって時は手離す覚悟で、付き合った筈だったのに、今じゃ、どうすれば俺のもとから離れていかないようにするか、計略を張り巡らせてる。 本来、華太が得る筈の未来を奪った事に対し、罪悪感はないか、と問われれば、ないとは言い切れない。それでも、一度手に入れてしまった愛しい存在を、手離すことなんて出来やしない。そんなのは、俺に死ねと言っているのと同義である。 物思いに耽っている野田の耳に、定番の誓いの言葉が聞こえてくる。 『健やかなる時も病める時も富める時も 貧しき時も妻として愛し敬い慈しむ事を誓いますか?』 俺は神なんぞ信じちゃいない。そもそも、神に誓ってどうなるというんだか。 その時、一際強い突風が吹き抜けていく。 「わ!」 後ろを振り向くと、悪戯な風が運んできたシーツによって、華太は頭からすっぽりと包まれていた。視界を遮られ、慌ててシーツを捲る華太の姿は、まるで花嫁がベールを捲る姿と重なってみえた。 あぁ、俺はどうせいるかいないかも分からない、神なんかに誓うよりも 「俺らは渡世で生きている以上、いつ死んでもおかしくねぇ。先に俺かお前が死ぬかなんて、先の事なんざ分からねぇーが、最期の間際まで、俺は華太を離すつもりはねぇ。よって、ここに野田一は、小峠華太に永遠の愛を誓う野田」 華太に愛を誓う方を選ぶ。 「!お、俺も、小峠華太も最期の瞬間まで、野田一さんの事を愛しぬく事をを誓います」 祝福の鐘に見守られながら、新郎新婦が誓いのキスをかわし、二人も新郎たちに習って、誓いのキスをかわす。 ほんの数秒のキスなのに、不思議なことに唇を通して、愛しいという気持ちが、こみ上げてくる。誓いのキスを終え、唇を開放してやると今更ながら、気恥ずかしくなったのか、途端に華太は視線を反らす。 野田が歩を進めると、華太は何も言わずに後を着いてくる。そんな華太に、野田は声をかける。 「寄りたい店があるから、ついて来る野田」 「何処にでも、ついて行きますよ。因みに、何のお店に行かれるんでしょうか?」 「ちょっとそこまで、結婚指輪を買いに」 「へ?」 「俺がどんだけお前を愛してるか、目に見える形で愛を贈ってやるから、覚悟しとけよ?」 この日、ジュエリー店に不釣り合いな男二人組が、結婚指輪を選ぶ姿が目撃された。 おわり
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