テラーノベル
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あれから、あの海での出来事から、 俺はどう家に帰ったのか覚えていなかった。 顔はきっと、涙でぐちゃぐちゃで、 帰宅してからも泣いていた気がした。 泣いて泣いて、沢山泣いて、 やっとの事で、桜君の家までこれた。
蘇枋
蘇枋
愛する人に、手を合わせながら苦笑いをした。 天気は、あの時の様な晴天で、 俺を見下しているようにも思えたけれど、君があの時の様に笑っている様にみえた。 あの時、君は、どうしてあんな風に笑ったのだろう。どうして、とびきり優しい笑顔で笑ったのだろうか。
蘇枋
楡君達には、最後まで心配をかけてしまった。 数日家に引きこもり、 学校に行った頃、 俺は相当窶れていたのだろう。 目の下は、赤いやら隈もあるやら、 筋肉質だった体は、少し痩せてしまっていた。 クラスメイト達の心配そうな顔を思い浮かべては、申し訳なくなってくる。 楡君に関しては、号泣しながら俺に抱きついてきていた。
優しいクラスメイト達の顔を思い浮かべ、桜君に近状報告をした。 話せば話すほど、 目の前に彼がいて、本当に 話を聞いてくれているのだと思えてくる。
脳裏に焼き付いた、彼の数々の反応が、フラッシュバックする様に流れ、 気づけば頬に何かが伝った。
蘇枋
自分の袖口で拭っても拭っても、 溢れ出てしまうそれを、 俺は止めることが出来なかった。 あぁ、こんな顔、彼に見られたらきっと笑われてしまう。
蘇枋
蘇枋
『好きでした。』
「……お……す……!!」
誰かが呼ぶ声が聞こえる。 どこか聞きなれた声で、 落ち着く様な、安心できる様な声。
固く閉ざしていた筈の瞼が開き、 ゆっくりと眩しい光が見えてくる。
桜
蘇枋
蘇枋の赤黒い瞳が移したのは、 こちらをのぞき込んでいる ガラス細工の様に綺麗な 2色で違う双眸だった。
思わず周りを見渡す。 見えるものは、 とても見なれた彼の家。 壁は、本気で叩けば穴が空いてしまいそうなボロさ加減で、 少し前まで殺風景だった部屋は、 クラスメイト達のもので溢れかえっている。
桜
桜
キョロキョロと周りを見渡していると、声をかけられた。 そちらの方を向くと、 俺の頬を伝うモノを、その袖口が、そっと拭ってくれる。 少し乱暴でくすぐったくて、 優しい。
蘇枋
桜
桜
頭の上に桜君が クエスチョンマークを出す。 そんな様子をみて、 あぁ、あれは、わるい夢だったのか。
気づいたら彼に抱きついていた。 触れられる。 彼の暖かい体温も、鼓動も、 全てが感じられる。 頭上から戸惑った声が聞こえてきたが、そんなもの、今の蘇枋には聞こえていない。 きっと、今の彼は、顔を赤くしているだろうな。 桜の胸に顔をうずくめる蘇枋には、 表情を予想することしか出来なかった。
しばらく抱きついていると、 不器用ながら、 そっと背中に手を当てられた。 なれない動きで、 背中をポンポン叩かれる。 それを感じて、やっぱりあれはただの夢だったんだって、そう感じられた。
蘇枋
桜
蘇枋
桜
桜
もっと慌ててくれるかと思っていたのだが、桜から返ってきた返答は、予想外のもので、 聞きなれたとでも言う様に、蘇枋の言葉を軽くあしらった。
蘇枋
蘇枋
夢の中では言った様な気がするが、 現実では、一切その様な事は言っていない。
桜
桜の不思議な言動に、 思わず顔を上げ、 その綺麗な瞳を見つめた。 暫く見つめあっていると、 桜は、はっとした様な表情をした。
桜
桜
桜君と行った海は、 あの時何気なく乗ったバスで行った1回きり。 その時は、ただ一緒にはしゃいで、遊んで、それだけだったはずだ。
蘇枋
桜
蘇枋
彼の言動に、 さっきまで自分が見ていた夢に、現実味が増してきた。 1回目の告白は、海、 2回目は遺骨の前 3回目は、ついさっき。 冗談で言ったものを合わせないと、 この3回だ。
蘇枋
桜
こんな奇跡が起きても、彼はそれを信じないらしい。彼らしい生き様に、思わずふふっと笑ってしまう。 俺が神様を信じると言ったのは、言葉の比喩ではなく、本当に。 もし、桜君が言っていた事が本当だとすれば、本当なのだとすれば、 それは____
蘇枋
崩していた足を、 ぴしりと組み直し、正座をする。 俺の改まった様子に、桜君の額に、汗が少し滲んでいた。
蘇枋
蘇枋
生きている君にする初めての告白。 自分の表情は、きっと、 今までにないほど甘いものだろう。 きっとそう安心できるのは、 彼の答えを知っているから。
桜
桜
桜
化けて出るくらいにはな。 と、言葉を付け足した桜君が笑った。 つられて俺も苦笑いをしてしまう。 彼の頬は、赤く染まっていて、 目元には、うっすらと光ったものがみえた。 さっきまで泣いていた筈の俺も、 視界がぼやけて見えなくなっていた。 彼の姿を1分、1秒も長く見ていたかったのだが、本当に困ったものだ。
蘇枋
桜
蘇枋
蘇枋
離していた体を、もう一度くっつけて抱きしめ合う。 聞こえてくる鼓動は、うるさいくらいにどくどくいっていて、早く動いていた。 その鼓動が、どっちの物かは、 俺達2人にはわかりやしなかった。
蘇枋
蘇枋
桜
桜
固くくっ付いた体は、 きっと暫く離れない。 いや、離れられないだろう。 それほどまでに、離れていた時間が長くて、失う恐ろしさを知ってしまったから。
蘇枋
桜
桜
蘇枋
桜
これからもずっと君にふれあいたい。 君に会いたい。 当たり前が、当たり前じゃない事を知っているから。 君と2人なら向けなかった筈の前も、きっと向ける。向いて歩ける。
これは、俺と君のなかったはずの、 幸せな未来の、人生の物語。
蘇枋
触れ会いたい。
ℯ𝓃𝒹
コメント
20件
初コメ失礼します! 最終話完結おめでとうございます! まさか、最初桜が死んでいるとは…予想の斜め上からの攻撃でした!でも本当に2人にとって、とても良いスパイスを神様が送って入れたのだと自分は思います!本当に最終回終わった時泣きそうでした!紙作品すぎる‼️
素敵な作品作ってくださりありがとうございました もういい作品過ぎて、、、、尊敬します✨️ もしよければ番外編作って欲しいです! 楽しみにしています!
最終話完結おめでとうオメェ~⸜(* ॑꒳ ॑* )⸝ 桜が笑いながら飛び降りた理由、何故か記憶に残っていた海での告白。神様の悪戯に惑わされてばかりだな(苦笑) 最終的には蘇枋の夢オチだったけども、アニメとかで夢オチって凄い評判悪かったりするんだよね…(俺はそういうの見たこと無いけど)下に続くよ⤵