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颯飛

次どこ行く?

今日、私、朱里[あかり]は恋人である颯飛[はやと]とデートしていた。

朱里

うーん、ファミレスでお昼とかはどう?

颯飛

お!いいねそれ!

朱里

待ち時間に今日買ったお揃いのストラップスマホに付けよ〜っと

颯飛

おぉ〜

朱里

でね〜……え…待っ…

私が目を向けた先には、猛スピードで近づいてくる車の姿が。

朱里

颯飛危ないっ…!

颯飛

え…?どうsh……

私は颯飛の頭を抱えるように道の端へ飛び込んだ。

キキーィィィイ!!!!!

ドンッッッ

大きな物音が聞こえたと同時に俺は床に倒れていた。

颯飛

いって…

体に強い痛みを覚えながら体を起こすと、そこには。

颯飛

……!!!

電柱に衝突して車体が大きく凹んだ自動車。

ザワザワとうるさい街人達。

そして

頭や身体中から血を流して倒れている朱里がいた。

颯飛

……?!

俺は何が起こったのか上手く飲み込めないと同時に、倒れた時に頭でも打ったのか、脳震盪を起こして、その場で気を失った。

『ここはどこだ?』

目を開けて一番最初に思ったのはそれだ。

天井は高く白く。

体を起こしてみると広い部屋にいくつかのベッドとそれらを仕切るようにカーテンが。

その景色は病院そのものだった。

颯飛

病院?

紘斗

良かった、目が覚めたか

颯飛

紘斗…

そこには、紘斗[ひろと]含め、俺の友達複数人が居た。

遥輝

事故ったって聞いてびっくりしたんだからな。

遥輝[はるき]が俺の肩に手を乗せながらいう。

颯飛

俺…事故ったのか…

病院にいる時点で何となく察していたが、やっぱり何かしら事故に巻き込まれていたらしい。

紘斗

彼女は大丈夫なのか?

颯飛

は?

俺は、友人の思わぬ言葉に目を丸くした。

彼女?

俺には彼女なんて居ないけど。

紘斗

は?じゃなくて、彼女だよ。デートしてたんだろ?

俺…彼女いるなんて言ったことあったっけ?

俺別に居ないものを見栄張って嘘つくタイプじゃないけど。

颯飛

俺彼女なんて居ないけど…?

俺は疑問を抱きながら友人に“俺にとって”正直な事実を告げた。

遥輝

は…?

俺がそう言うと、見舞いに来てくれた奴はみんな疑ったような顔を浮かべた。

遥輝

お前…高校の時から…

紘斗

おい、やめとけって…今言っても混乱させるだけだって…

遥輝

っ……

颯飛

……?

こいつらの反応が分からない。

“俺に彼女はいない”。そのはずだから。

看護師

面会時間、終わりです。

そこで看護師が見舞いに来た奴らを部屋から出した。

俺はモヤモヤを抱えたまま2つの事を考えた。

友人達が口を揃えて言う“彼女”の存在と。

6人用のこの病室に不自然に1人だけの、俺の隣で寝ている女性の存在を。

朱里

颯飛

(もし、あいつらが言うように俺に彼女がいて、その人と一緒に事故ったんなら…、一緒に入院してるこの人が彼女ってことになるのか…?)

颯飛

……

颯飛

(今度機会があればこの人と話してみて、その時の反応で見ればいいかな)

目を開けると高く白い天井。

蘇る事故の記憶。

間違いない、私は病院にいる。

そこで思い出すんだ。

朱里

(颯飛は……!?)

勢いよく起き上がって辺りを見渡す。

颯飛

あ…

隣のベッドで本を読んでいた彼と目が合う。

間違いない。颯飛だ。

朱里

颯飛……

颯飛

えっ…と……

颯飛

どなた…ですか?

朱里

……っ!!

最悪の事態が起こった。

颯飛が私のことを忘れてしまった。

朱里

(……覚えてないなら怪しまれないようにしないと)

朱里

いえ…ベッドに書いてある名前を読みまして…素敵なお名前ですね

颯飛

あ…あぁ…ありがとうございます

それから私は、絶望に暮れていた。

朱里

(颯飛が私のことを忘れた…。じゃあ、私の人生なんの意味が…)

隣の人は、雪名さんと言うらしい。

看護師さんが声をかけているのを聞いた。

俺は、純粋に1人で本を読むのが疲れて、雪名さんに声をかけた。

颯飛

あの…雪名さん

朱里

っ……どうか…しましたか?

ベッドで横になっていた雪名さんは一瞬体をビクつかせ、起き上がって俺に向かって微笑んだ。

颯飛

……!

この瞬間、惚れてしまったのかもしれない。

颯飛

本を読むのが疲れてしまって…話し相手になって貰ってもいいですか?

朱里

……

俺がそう聞くと、雪名さんは一瞬表情が暗くなった。

朱里

いいですよ!

ただ、次の瞬間には明るい笑顔で答えてくれた。

颯飛

……

本当は嫌だったんだろうか。

颯飛

あ、そうだ、名前教えて貰えませんか?看護師さんが呼んでるのを聞いたので、上の名前だけは知ってるんですが…

朱里

あ、そうですね。朱里と申します。雪名朱里。

颯飛

朱里…

何故か懐かしさを感じた。

ただ。

颯飛

いい名前ですね。

今俺はこれだけ答えるべきだと思った。

懐かしく感じるだけで、何もわからなかったから。

朱里

ありがとうございます…あの…えと……

颯飛

?どうしましたか?

朱里

できたら、でいいのですけど…敬語、やめませんか?お互いに。

颯飛

えっと…

朱里

ほら、堅苦しい…ですし

それもそうだと思った。

お互いどれくらい入院するかはわからないし、部屋に2人しかいない以上、話す機会は多いと思ったから。

颯飛

そうだね。じゃあ、よろしく。朱里

朱里

…!うん!

そう元気に答える朱里は、とても嬉しそうで、可愛く見えた。

次の日。

颯飛

――

紘斗

――

朱里

……

私は今、颯飛の隣のベッドで大人しくナンプレをしていた。

今日の面会の時に家族に持ってきてもらったものだ。

遥輝

ところでお前、ほんとに覚えてないの?彼女のこと

朱里

……!

颯飛

うん、いまいちなんのことかわからない

朱里

……っ

紘斗

そっか…早く思い出すといいな

颯飛

ところでさ、お前は俺の彼女らしい人のこと知ってんの?

紘斗

え?いや、会ったことは無いしそれは知らないかも

颯飛

名前とかも?特徴とかは?

遥輝

いや、なんせお前『絶対からかうだろ』とか言って教えてくれなかったし…

朱里

(そっか…颯飛の周りの人、誰も私のこと知らないんだ…だったら彼女が私の事だって気付くのキツイかな…)

颯飛

ところでさ、ちょっと相談があるんだけど……

紘斗

なになにー?

そこで颯飛は友達の耳の近くに顔を近付けた。

私は悪いと思っていながら盗み聞きをした。

颯飛

俺自身が彼女のことを覚えてなくても、別の人と付き合ったら浮気になんのかな?

朱里

……?!

朱里

(どういうこと?好きな人が出来たってこと?
私以外に?誰?誰なの?
記憶どうこう以前に…ここで関係終わりってこと?)

そのあとの話は入ってこなかった。

周りから見える自分を平常に保つのが精一杯で、話を聞く所ではなかった。

朱里

…………

朱里

(寝よう)

寝てる間は、苦しくないから。

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