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颯飛
俺は、昨日と同じようにベッドで横になっている朱里に声をかけた。
朱里
ほんの少し沈黙があり、その後昨日と同じように微笑んでくれた。
颯飛
俺は、少し踏み込んでるとは思ったが、この質問をすることにした。
颯飛
朱里
その瞬間、朱里の顔が曇った気がした。
朱里
颯飛
失恋したかなと、そっと諦めようとしたが、何かワケありなようにも聞こえた。
朱里
颯飛
朱里
颯飛
正直ラッキーと思ってしまった。
でもこの判断もあながち間違いでは無いと思いたい。
だって、会ったばかりの人に涙目になりながらこんなことを打ち明けるなんて、よほど辛いんだろうなって思ったから。
そんな思いさせる人と一緒にいても朱里は幸せになれないんじゃないかと。
思ったから。
颯飛
朱里
正直、話しにくい。
元々、人に相談をしてこなかった私が、人に相談するなんて。
そして、悩みの原因となる人にその悩みを話すだなんて。
でも、善意は折りたくないから、適当に濁しながら話すことにした。
朱里
颯飛
朱里
颯飛
朱里
颯飛は、絶対私のためを思って言ってる。
そうなんだろうけど…
私にはどうしても、“俺は朱里のこと好きじゃないから別れて”と言われているようにしか聞こえなかった。
朱里
颯飛
朱里
この前盗み聞きしたときに、颯飛に好きな人がいるという事実が判明した。
そしてそれはきっと私ではないんだろう。
だって、颯飛には私から告白した。
きっとそれがきっかけで好きになってくれたんだろうけど…
逆に、それがなければ私のことを好きになることがなかったんじゃないかと思う。
朱里
朱里
颯飛
颯飛
朱里
様子を見る限り、颯飛は私や、私から知ったものの記憶は無さそうだ。
朱里
私が我慢すれば、すべてまとまるんだ。
その日の夜。
朱里は隣のベッドで咽び泣いている。
颯飛
朱里が別れると決意してフリーになるという安心感
別れるにあたってこんなに泣くほど愛されていて羨ましいという思い
俺が強引に別れさせてしまったと思う罪悪感
それらが混同してモヤモヤしていた。
颯飛
気付いたら、咽び声は無くなっていた。
颯飛
俺は朱里のベッドの所に行き、顔を眺めた。
その顔には、涙やその跡が多くあり、とても寂しそうな顔をしていた。
朱里
気付いたら朝になっていた。
颯飛
朱里
颯飛の顔を見た瞬間、“ほんとにこの人と別れなきゃいけないんだ”という絶望感と、この決断の正当性に気付かせてくれた感謝が入り交じった。
ただ、これ以上迷惑をかけてはいけないと認識して挨拶を返す。
朱里
颯飛
嘘。嘘だ。
スッキリなんて全然しない。
むしろ、“この選択が正しい”という自己暗示が苦しく、今まで心に埋められていたものがぽっかりと空いてしまったような感覚がする。
朱里
颯飛
朱里
きっと私が言ったのはそういう意図じゃないんだ。
“好きな人”の恋バナを聞くことでこの恋を諦めようとしているのだろう。
朱里
颯飛
知ってる。
朱里
颯飛
朱里
颯飛
朱里
颯飛
朱里
そっか、誰も私のこと知らないんだね。
じゃあ私が言わないと颯飛は気付かないわけか。
颯飛
朱里
颯飛
朱里
颯飛
朱里
いいんだよ颯飛、その彼女は私だから、無視して。
朱里
颯飛
朱里
颯飛
朱里
皮肉だね。
一緒に事故ったから、見舞いに行けなくてさ。
挙句の果てに颯飛が私の事まで忘れちゃってさ。
誰も私のこと知らなくてさ。
こんなに好きなのに。
だからさ、颯飛。
“居なくなった”彼女なんてどうでもいいんだよ。
颯飛
朱里
手に暖かいものが落ちた。
朱里
颯飛
自分の涙だった。
朱里
多分、自分の心に嘘ばっか吐いてたから、辛くなったんだな。
颯飛
その時、そっと抱きしめられた。
朱里
颯飛
朱里
私は、ゆっくり、だけど力強く、颯飛を押しのけた。
颯飛
朱里
自分の中で何かが崩れていくのがわかった。
今まで人に見せないようにしていた部分が徐々に見えた気がした。
朱里
私には逃げることしか出来なかった。
ただただ、“屋上に向かって”