カケル
ど、どんなところって……。
カヤ
だって、何度も言ってくれたじゃん。
あたしのこと好きだ、って。
カヤ
あたしね、自分の好きが分からないの。
もちろん、カケルは男らしくてカッコイイし、真っ直ぐなところが素敵だなって思うんだ。
カヤ
けどね、それがカケルを好きな理由なのかなって。
それがカケルを好きだってことになるのかなって。
カケル
……。
カヤ
だから、カケルがあたしのどんなところをどんな理由で好きなのか、それがすっごく気になるんだ〜。
真っ直ぐにこちらを見つめながら
真剣な面持ちでカヤは語る。
それに応えられる言葉が見つからない、が正直な答えだろう。
有り体に言ってしまえば、カヤの容姿と天真爛漫な性格に惹かれた。その一言で片付いてしまう。
しかし、カヤのこの真剣な問答に
相応しい言葉では無いのは俺でもわかった
だからこそ、緊張で詰まるこの喉から言葉が紡げない。
カヤ
……。
カケル
……。
カヤ
あ、昨日の彼からだ。
カケル
……。見なくていいのか?
カヤ
ん〜、いいよ〜。
今はカケルの答えが知りたいんだから。
カケル
…そうかよ。
カヤ
え、なに?
妬いてんの〜?笑
カケル
……。
あぁ、そうかも。
カヤ
えっ?意外〜
カケル
つか、妬くだろ。
好きなんだから。
カヤ
え、その好きってどういう…
カケル
悪ぃけど、俺はカヤやアイツみてぇな大層な考えも価値観もない。
だから、カヤの質問に対する答えがこれで合ってんのかはわかんねぇ。
カヤ
…。
カケル
けど、間違いなく俺はカヤが好きだ。
カケル
顔もスタイルも、
純粋純朴なその性格も。
そのくせして、たまにわけわかんねぇくらい難しいこと考えてて、それを楽しんでるとこも。
カケル
俺がカヤと関わって知れたとこはとりあえず全部だ、全部
カヤ
……。
カケル
これで満足か?
…まぁ、アイツの言葉借りるなら、その他の好きはお前と一緒に進んでいけばいつかもっと見つかっていくものだと思ってるよ。
カヤ
そっ…か……。
やだ、なんか照れるなぁ…。笑
カケル
お前が聞いてきて何勝手に照れてんだ。
カヤ
そうだね、あはは笑
そりゃそうだ笑
カケル
んで?
カヤ
……???
カケル
カヤはどうなんだよ?
カヤ
…と、いいますと…?
カケル
だから……。
カケル
カヤは俺の何をもって、俺を好きになろうとしてくれたんだよ?
カヤ
……。
なん、だろうね…。
珍しく黙り込むカヤ
氷が半分溶けきったアイスコーヒーは、濃い麦茶のような味がした。
ストローを口に咥え、カヤの返答を待つ
カヤ
あたしね。
愛されたいんだと思うんだ。
カケル
???
カヤ
それを叶えてくれそうだったから、叶えてくれるくらいカケルに力と魅力があるから、カケルを好きなんだと思う。
カケル
……。
愛されたい、か。
たしかにカヤのことは好きだし、カヤとこれから一緒になれたらとは願っている。
けれどその先。愛されたいとはなんだろうか。愛するとはなんだろうか。
そして、俺はそれを叶えられそうな力がある…。
カケル
…だーめだ。
なんもわからん。
カヤ
えぇ?!
そんな変なこと言ったかなぁ…
カケル
違くて、多分そんなに真剣に好きに向き合ったこと
多分俺ねぇわ
カヤ
え、またバカにしてる???
カケル
いんや、今度は尊敬してる。
俺は何となくで
価値観が合うだとか、自分の好みだとか、そんなので簡単に好きって言っちまってた。
カケル
昨日の夜は何言ってんだこいつって正直思ってたよ。
けど、今は違う。
好きってそんな簡単なものじゃなかったんだ、カヤが悩むのも今なら少しわかる気がする。
カケル
だからっていうか、不思議なもんだな。
昨日のお前らと同じ気持ちだ。
好きの答えが俺も知りたい、愛するって何なのか俺も探したい。
カヤ
…。
やっぱりカケルはすごいね。
カケル
???
カヤ
なんでもないよーだ!
最後の1個のスコーンもーらいっ!