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太宰治

……それから兄は変わってしまった。

太宰治

私が話せるのは、ここまでだ。

あたりがシーンと静まり返る。

その中で国木田が近くのコインランドリーに車を停めながら、

国木田独歩

聞きたいことはたくさんある。

国木田独歩

まず一つ目、お前はいくつだ?

と、質問を投げかけた。

太宰治

……君と同じ、22歳だよ。

平然と真実を述べる。

国木田はにわかには信じがたいとでも言いたげな顔だった。

いや、その場にいた誰もがそうだった。

中原中也

変わったつーのは

中原中也

危篤の状態になったから、

中原中也

“魔人”になったってことか?

太宰治

いいや。危篤になったから、

太宰治

変わろうとしたんだよ、兄は。

中原中也

あー? 余計にわけわかんねえ……

中原は嫌そうに窓の外を眺める。

江戸川乱歩

降りよう

江戸川の言葉にみな反応し、

車から出る。

そして、横浜ランドワークタワーの入り口をくぐった。

江戸川乱歩

じゃあ、今から太宰は一人で最上階まで上がれ。

江戸川乱歩

僕たちは二手にわかれよう。

谷崎潤一郎

え! 太宰さんはわかるけど……

谷崎潤一郎

集団で行動したほうが良いのでは……?

江戸川乱歩

二手になって行くべきだ。

江戸川のまっすぐな言葉に

何も、言い返せなかった。

谷崎潤一郎

わかりました……

江戸川乱歩

それじゃあ、僕と国木田。谷崎とナオミ、芥川。

江戸川乱歩

というふうにわかれよう。

江戸川乱歩

そして、太宰は鏡花を連れて行け。

泉鏡花

……私?

江戸川乱歩

うん、そうだ。

泉鏡花

わかった

江戸川乱歩

あ、あと

江戸川が中原に手招きをする。

中原はだるそうに江戸川の元へ行き、

なんだよと目を細めて言った。

江戸川乱歩

中原も太宰についていって。

中原中也

はあ?

江戸川乱歩

いいから

中原は嫌そうにしかめた顔のまま、

渋々頷いた。

江戸川乱歩

それじゃあ、わかれ。

パンと手を叩く音と同時に

太宰はエレベーターへと歩き出した。

早く、早く、敦と

“兄”を救えるように、早く。

そしてエレベーターは最上階へと着き、

鏡花は窓ガラスから外の景色を見下ろしながら、

泉鏡花

どうして、乱歩さんはここに魔人が来るだなんて……

と独り言を呟いていた。

そこに被せるように中原が窓ガラスにもたれながらこう言った。

中原中也

そもそもよ、

中原中也

なんなんだ? この世界

中原中也

確信をもてても確証は得られない。

中原中也

ましてや全部うそだなんて。

中原中也

よくもまあ、こんな面倒なことをしてくれるわ。

太宰治

うん、そうだね

太宰治

本当、時間の無駄だと思うよ

ゆっくり、窓ガラスにもたれかかる中原に近づき、

太宰は優しく微笑んだ。

太宰治

本当、回りくどいことをしてくれるよね、君は。

太宰治

ねえ、“魔人”?

泉鏡花

……え?

鏡花がずさりと中原から離れ、太宰の背中へと行く。

中原は顔をしかめて、訝しそうに太宰を睨んだ。

中原中也

とうとう疲れちまったか?

中原中也

この俺があの魔人に見えるって?

中原中也

ハッ。寝言は寝て言え。

太宰治

たしかに君は“魔人”だよ。

太宰治

こんなことくらいでは私を騙せやしない。

太宰治

さあ、敦くんを返してもらおうか。

中原は黙り込み、太宰を引き続き睨む。

太宰治

……いや、語弊があるな。

太宰治

君は“魔人”ではない。

太宰治

君は“悪魔”だよ。

太宰治

悪魔アバドン。

“アバドン”

その名を聞いて、中原の口角は不気味なほどに上に上がり、

気味の悪い声で笑い始めた。

中原中也?

いつから、気がついていた?

太宰の背中を掴む鏡花の手が震えているのがわかった。

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