上を見上げれば 嫌味な空が 視界を覆い尽くす
僕
僕
そう呟いたって 死ぬ事には変わりない
きっと天使様が "死んじゃダメだ" って こんな空を見せているんだ
自殺をしたら 天国には行けないと 聞いた
それでも良かった
僕
次に目を開けた時は どうか 目を開けたままでいられる 世界だと良い
さぁ 飛ぼう
足を踏み出した瞬間 僕の身体は 宙へと浮いた
僕
静かに目を開けても 先程とは変わらない世界
変わったとすれば 空が地面に変わっただけ
死とは こんなものなのだろうか?
僕は ちゃんと 死ねたのだろうか...?
僕
声は出せない 身体も動かせない きっと呼吸もしていない
ただ ただ宙に浮いているだけ
ーリーンゴーンリーンゴーンー
突然 頭の中に 鐘の音が響いた
どこか懐かしい様な 聞きたくない様な 体をスっと抜けていく様な そんな キレイな鐘の音だった
天使
天使
僕
いつから居たのか 全く分からなかった
白い羽 光り輝く輪っか 真っ白なワンピース
そして 太陽みたいな 満面の笑顔
天使と言われれば 天使に見えるし 悪戯っ子と言われれば その通りに見える
天使と名乗った子供は ピシッ と敬礼をしてみせた
天使
天使
天使
天使
天使の表情は クルクルと変わる
可愛くもあり イケメンでもある
そんな感じの 整った顔
喋りたくても 僕 喋れないんですよ...
天使
天使
天使
天使
天使は口を大きく開けて 真似をして! と言うかの様に 僕を見詰める
今 心の中を 覗かれた様な...
天使
天使
それは凄い
じゃあ 天使さんの真似をして 少し 声を出してみよう
天使
僕
天使
天使
僕
僕
天使
死人に口なし と言葉があるくらいだし 死んだら喋れない そう思っていた
実際 さっきまでは喋れなかったし
でも どーゆう訳か 今は簡単に声が出せる
僕
1番の疑問を 目の前の天使に 投げ付ける
天使は 満面の笑みで 答えた
天使
僕
天使
天使
天使
死ぬか 生きるか 消滅するか
生きる以外なら どれでも良い と思った
生きる事は 辛い あれ...?
辛い?
何が 辛いんだったかな...?
天使
天使
天使
天使に手を引かれ 僕の体は 更に上へ 上へと昇っていく
空に 雲に 光に向かって進むのは 何だか 心が穏やかになる様だった
連れて来られたのは 延々と続く空
その空に 沢山の天使が居た
僕
天使
天使
天国事務所
そこでは 多くの天使たちが 何やら忙しそうに 下界のサラリーマンの如く パタパタと羽をはためかせていた
僕
天使
天使
天使
天使に まさか事務的な仕事があるなんて 誰も想像しなかっただろう
ずっと握っていた手を 少し強く引かれ 働く天使たちの元へと ふよよ〜 っと飛んでいく
天使
僕
天使
天使
天使たちが持っている書類は 透明で 文字だけが そこに浮かび上がっている
あれは 紙と呼ぶのだろうか?
天使
天使
天使
僕
天使
天使
天使
僕
それにしても 地球上の生命ある者のデータ なんて そんな想像もし得ない規模のデータを 天使たちは管理しているのか
これは 人間の仕事なんて とてもちっぽけに 見えてしまうな
天使
僕
天使
天使
僕
もっと 電話対応とか 経理とか 天使たちのスケジュール作成とか 人間みたいな仕事も 有るのかと思っていたけれど...
天使
天使
天使
天使
天使
僕
天使
天使
確かに 働く天使たちは 皆 誰もが笑顔だ
けれど 僕にはそれが 楽しいから とは思えなかった
天使
僕
昇った空を 今度は逆に スーッと降りていく
つまりは 最初に僕が居た所
下界に戻ってきたのだった
天使
天使
天使
天使
下界に降りた僕たちは 空よりは低い ビルの屋上から 地面を踏みしめて歩く人の流れを 緩やかな川を見るように 眺めていた
天使の声を 確かに耳に聞き入れながら 人とはこんなにも 小さく か弱い生き物だったか と 僕の思考は巡っていた
天使
僕
天使
天使
僕
天使
天使
天使
天使の笑顔は いつでも輝く 満面の笑みだ
ーピリリリリリッー
突然 携帯のアラームの様な 軽快な音が響いた
どうやら音は 天使の持っている あの透明な文字盤から 鳴り響いているようだ
天使は チラリと 文字盤を眺めると 表情を変えずに 呟いた
天使
僕
天使
僕
天使
天使
天使
天使に背中を グイグイ押され まだロクに 空の飛び方を知らない僕は ぎこちなく空を歩いた
向かう先も 分からないままに
僕
薄暗い部屋
この場所に辿り着くと 天使と僕は 部屋にあった ふわふわのベットに 腰掛けた
その部屋には もちろん人が居た
薄暗い部屋の中で ボーッと ある一点を 飽きもせずに 見詰めていた
いや 既に 飽きていたのかもしれない
きっと この世界で 生きる事に
天使
天使
天使
僕
天使
天使
天使は 抜け殻のようなその人から 決して 目を逸らさない
生命が尽きる その瞬間を 見逃さないように
僕
天使
天使
天使
僕
天使
天使
僕
天使
天使
僕の生命が 何故 特別なのか
その答えを 僕は 何となく 聞けないでいた
僕
ーカタン...キシッー
ーギチッギチッ...ギュギウッー
この部屋の住人は 座っていた椅子から立ち上がり そして その椅子に足を乗せ 姿勢悪く 立ったのだ
手を伸ばして 頭上にあった物を目の前にし その強度を 確かめた
強く 左右に引っ張り 体重をかけ 下へと引く
天井からぶら下がったソレは 確かな強度を保ち 決して 千切れる事も 解ける事も無かった
僕
天使
天使
天使
天使
僕
僕
天使
生命が尽きるその人は 静かに 自分の首に輪を掛け 一つ 深い深呼吸をした
縄から手を離し 少し膝を曲げ 体を前に倒しかけ ピタリ と動きを止める
天使
僕
天使
天使はそう言って 笑顔で 尽きる生命へと 近付いていく
そして
慈しむような笑顔で その両手を広げ
優しく
生命を包み込む
ーバサッー
ーガタンッー
ーギチギチィッ...ギッ、ギギッー
天使が 羽を羽ばたかせ 少し後ろに下がる
まるで 風に吹かれたかの様に 止まった身体は 動き出した
流れに沿って 天使が体を離すと 重力に逆らえない身体は 首に掛かる輪っかを軸に ガクン と下へ落ちたのだった
その後 あの生命は死に 天使の導きによって 転生までの魂生(こんせい)を 地獄の手前の地上獄(ちじょうごく)で 過ごす事となった
地上獄では 魂だけの存在となり この世に散らばる 負の粒子を 食べて 満映させない仕事を こなさなければならない
ある一定の 負食値(ふしょくち)を超えれば 転生への切符を 貰える仕組みとなっている
僕
天使
天使
天使
天使と共に 羽を広げ 天使と出逢った場所へ行く
どうやら お仕事ツアーは これでお終いの様だ
天使
天使
僕
天使
天使
天使に言われて ようやく気付く
僕は いつから 感情が欠落していたのだろうか...
それに いつの間に こんなに真っ白な 天使と同じ羽が 生えていたのだろうか...
僕の笑顔は 何故 こんなにも 清々しいものなのだろうか...
天使
僕
天使が 透明な文字盤を 僕の目の前で 広げてみせる
透明だから 見えてしまう
それは 僕のデータで 透明な文字盤は そのほとんどが 透明だった
僕の人生とは 何も無い 空っぽなものだったんだ
天使
天使
天使
天使
天使
僕
僕が 短く返事をすると 天使は祈る様に 指を重ねた
天を仰ぎ 目を閉じて 天使は言葉を 紡ぎ出す
天使
天使
天使
天使
天使
天使の輪っかが 僕たちを ぐるりと囲む様に 大きく広がる
輪っかの取れた天使は 小さい頃に よく遊んだ近所の子供の様に 何だか 妙に懐かしい 綺麗な顔した子供に見えた
空は今日も青い
何だってこんなに青いんだ
俺に喧嘩を売っているのか?
だがもうこの空ともおさらばだ
思えば何も無い人生だった
だから地獄にでも旅行しよう
また会えた時には地獄の土産話をしてやるよ
じゃあな
憎いくらいに青い空よ
ーリーンゴーンリーンゴーンー
天使
天使
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コメント
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アイコンの表情が変わっていて本当に動いてる様に見えました…! 新鮮で面白かったです!
いいね500した!
面白い!!!しかも天使の絵(丸いとこの)の表情がちょくちょく変わってたのがすごいと思った 皆のゆうように斬新な発想力があると思う✨これからも応援してるね~