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お稲荷様と、お巫女様

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お稲荷様と、お巫女様

1 - お稲荷様と、お巫女様

♥

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2020年05月19日

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ね、起きてまーすーかー?

紡柧

起きてるけど……
こんな夜中に何?

紡柧

うちが起きてたの奇跡みたいなもんだよ?

あ〜ごめんww

実はさ、霊感少女のツムグさまにお願いがありまして

紡柧

嫌だ

はやっ!

紡柧

どーせ、ろくでもないじゃん

否定はしないけどさー

紡柧

で、なに?

紡柧

勝手に変なことに関わられるの困るから聞くけど

あ〜

六年前はごめんて

若気の至りみたいな感じだよ〜

紡柧

ごめんで済ませられないよ!

紡柧

そんなことしてたら、いつ死ぬかわかんないって何度言えばわかるの?

紡柧

リツはいつも勝手なことするよね?

紡柧

それと、自分で若気の至りとか言っちゃダメだから

だからごめんて。

でも、やめられないんだよ

知ってるでしょ、ツムグも

紡柧

……馬鹿リツ!

紡柧

……で、今回は?

あのねっ

この街にさ、稲荷神社って何個あると思う?

紡柧

普通は一個二個でしょ

紡柧

そもそも一つの街にそんな神社ないし、その上で稲荷でしょ。少なそうだよなぁ

紡柧

紡柧

まぁでもこの街はそこそこ多いから、五個くらい?

それがさ、九個あるんだよ

紡柧

は?多くね?

そ!多いの!何故だかね

だから気になって調べたんだよ

紡柧

その結果?

うちって、代々続いてる古い家じゃん?だから、資料はごまんとあるわけ

それはね、コックリさんがこの街に根付いてるのと関係あるんだって

紡柧

……嫌な予感がしてきた

さすが幼馴染み!

私のこと、よくわかってる〜

紡柧

律。 私は嫌だし、絶対ダメだからね

紡柧

コックリさんはしないって約束したじゃん

紡柧

破んないって誓うって律言ったよね?
わざわざ怪我しに行くなんてバカじゃないの?

でもさー、もしかしたらチャンスかもだし?

紡柧

そんなこと言って怪我したらおばさんたちに顔向けできないよ

私はやるよ、意地でも

それと、私、約束破ってないんですよ

今回やるのは、コックリさんじゃなくて

お狐様だから

紡柧

お狐様?

うん。厚紙で赤い鳥居をまず作って

そこの中に、箱みたいなのを置いて、おいなりさんをお供えするの

それでね、「お狐様、お狐様。九つの尾を持つあなた様にお願いがあります。どうか出てきてください」って言うの

紡柧

なんか、コックリさんに似てない?

ちょっと似てるよ

コックリさんの派生か何かだと思う

言い忘れてたんだけど蝋燭を十個建てておいてね、お狐様がきたら、そのうちの左から三番目が消えるの

紡柧

一つだけ?

うん

九個の蝋燭が揺れながら、ついたままになれば呼び出し完了

そのあとは、お願いを聞いてもらうたびに、おいなりさんを増やしていって、九個聞き終えたとこで、

おかえりくださいってやるの

で、全部の蝋燭がちゃんと消えれば帰ってもらえるんだ

紡柧

……帰ってもらえないとどうなるの?

紡柧

コックリさんも、帰ってもらえないのが大変なんだよ

お狐様はね、お約束をちゃんと守る人なの

だから、ちゃんと九個質問をすればね、ちゃんと帰ってくれるんだよ

それに心配なら、九個目のお願いとして、頼めばいーんだよ♪

紡柧

もし、もし破ったら?

そんなことないって書いてあるもん 平気平気♪

紡柧

それと、どうやって返事を聞くの?

紡柧

召喚はいいとして、それ以外は?

あ、そーだった

言うの忘れてたね

携帯電話を電源切って置いておくの

普通は電話じゃん?でもお狐様は違ってね、

メッセージが来るの。差出人は、九を九個並べた名前

それにね、答えが書いてあるんだ

紡柧

こっちから、返信できるの?

ううん、それはね、電源を切ってるから無理だよー

紡柧

紡柧

それ、本気でやるの?

紡柧

最近、学生の行方不明事件が多いの知ってるよね?

知ってるけど……

ツムグはそれがお狐様のせいだって言いたいわけ?

紡柧

そうじゃないけど、その可能性は大いにあり得ると思う

えー、そんな怖いもんじゃないよー

紡柧

リツは知らないんだよ

紡柧

あーゆータイプは本気で怒ると対処できないってこと

除霊方法とかもちゃんと調べたし、ツムグの力があればでいるじゃん?

紡柧

そんなの

じゃ、おやすみー!

紡柧

はぁ?

紡柧

え、ちょっと、律?!

紡柧

待って!話聞いてって!

紡柧

ねぇ、律!

なに?

紡柧

お願い、実践しないって約束して

なんで?

紡柧

調べてもいーよ、調べるだけなら手伝う

手伝ってくれるの?

紡柧

うん

紡柧

だから、やらないって約束して

紡柧

実践だけはしないって、約束して お願い

……わかったよ

紡柧

よかったぁ

じゃ、おやすみ

紡柧

ん、おやすみ

後日。律の家にて。

みんないらっしゃーい

遠慮せずにあがっていってね!

紡柧

……本気?

何度も言ってんじゃん

紡柧

私の話じゃなくて、二人の……

ここがリツの家か〜

美琴

思ってたより広いじゃん

律と紡柧の親友である、華と美琴も、今日律の家へと招待された

紡柧

……

紡柧

ねぇ、二人はなんで呼ばれたのか知ってるの?

えーと、たしか、コックリさんするって

美琴

そーそ!

みるみるうちに、紡柧が青ざめていく

今日、紡柧は律から二人を交えて、資料を読み返すと言われていた

紡柧

リツっ!

仕方ないじゃん

そーしないと、紡柧来ないんだもーん

え、どしたの?

美琴

なになに?揉めてる?

私ら余計なこと言ったのかな?

花は不安そうに紡柧を伺う

紡柧

華たちは悪くないよ

紡柧

……律はこんなこと、しないってな思ってた

え、紡柧……?

紡柧

そっか、そうなんだね

紡柧

本当に忘れたんだね、律

え、紡柧

なに言ってんの?私が忘れた?

え、どゆこと?

美琴

んーと、今どんな感じなんだ?

紡柧

ねぇ、律

紡柧

私はアンタが解放されたって知ったとき、ずるいって思ったよ

紡柧

でもいいや、幸せならって思ってたのに……

紡柧

アンタは約束を誓ったのに破るんだね

紡柧

私は帰るから、あとは好きにしなよ

そう言って、紡柧は足早に部屋を去った

ねぇ、どうしたのよ?

美琴

りーつー?

紡柧に、コックリさんやるって言ってなかった

美琴

え、それだけ?

紡柧、コックリさんを毛嫌いしてんの

今回やるのは正しくはコックリさんじゃないんだけど

それでも、コックリさんだから
誘わなくてもよかったけど、紡柧にはいて欲しかったし

だからナイショにしてたとー?

美琴

そーゆーことか

うん

ならさ!

コックリさんに聞こうよ

なんで紡柧がコックリさんを苦手だと思ってるのか

どーすれば仲直りできるのか

美琴

華、ナイスアイディア!

美琴

ね、律

美琴

そーしよ?

律は、うなずいて、鳥居を部屋から取り出してきた

場所が揃い、それぞれはテーブルを間に好きな位置に座る

全員、携帯は電源をオフにして、机の上に置いている

そ、それじゃあ行くよ?

うん

美琴

やろやろ〜♪

お狐様、お狐様

九つの尾を持つあなた様にお願いがあります

美琴

どーか出てきてくださいっ

三人は目を閉じて、そう祈る

……何もない?

顔を上げて、目を開けると、左から三番目の蝋燭が風なんて吹いていなかったのに一つだけ消えていた

は、華!美琴!

なに?

美琴

ん? あ!!

美琴

消えてるっ

確かこれがおいでになられた合図なんだよね?

うん、そうだって書いてあったよ

じゃ、じゃあ質問言わなくちゃ!

美琴

小手調べにまずは、わかってる事柄行きますか!

だねー

それじゃあね……

お狐様、お狐様質問です

美琴が恋をしている男の子は誰ですか?

美琴

ちょっ、律?!

三人のスマホが一気に起動した

で、電源切ってたよね?!

うんっ

美琴

それに送り主、話どおりだし!

美琴

ほんとだけどっ、なんで私の好きな人なわけ?!

いや、一番脈ありみたいだからさ

いやぁ、青春してるねぇ

美琴

うっさぁい!!!

それじゃあ次は、両思いになれるかやりますか

美琴

えっ///

あれ〜?なに照れてんの?

じゃ、いっくよー!

美琴

え、ちょっ。待ってヨォ!

三人はその後も質問を続けて、8問目の質問

どうかお答えください

何故、紡柧はコックリさんを嫌い、私がしようとしたことを怒ったのですか?

えっ

どーゆーことだ??

美琴

『あなたは、忘れたの?』

な、なんのことなの?

私、知らない!

でも、約束したって言ってたよね?なんて約束したん?

美琴

そこにヒントあるかも〜

え……

六年前、私、嫌がる紡柧にせがんで、お化け塚に行ったの

美琴

お化け塚って、町外れにある?

うん

そこで、なんか、変なおじさんとかそーゆー人に会っちゃって、その人、ちょっとおかしくて襲われそうになって

私の好奇心は身を滅ぼすって紡柧が言って、あの時助けてあげたんだから、私と約束してって

美琴

コックリさんの約束させられたんだ?

うん

九九九九九九九九九 あなたは忘れた、朝倉 律。 六年前はそれだけじゃない。 六年前、あなたはお化け塚に行く前に、周りの友達のノリにつられて、半ば無理矢理紡柧をコックリさんに誘った

私、コックリさんしたこと、ない……

九九九九九九九九九 そのとき、コックリさんは本当に現れた。悪戯が好きな、善悪の分別のついていない動物の子供の霊だった。その霊は一人に乗り移った。 乗り移られた子は豹変し、律を襲おうとした。それを、紡柧は守った。 左腕を切り、血があふれた。 その血を見て、恐ろしいと思ったのか、臆したのか、霊は逃げた。 だから、紡柧はコックリさんが嫌いになった。 自分の体を傷つけるから。 怖い思いをしてしまうから。

(そんな、そんなの、知らない)

(だって、だって! 紡柧、あの怪我は私と会う前に事故にあったからって言ってた)

美琴

紡柧が……

美琴

ねぇ、律、あんたは知らないんだね?

わからない。私、憶えてないの

九九九九九九九九 その後、怪我を治せるとコックリの狐が言った嘘を信じて、お化け塚に取り憑かれたやつに会いに行った馬鹿がいた。 それがお前だ。 お前は霊を信じて、何度も親友を殺しかけた。 そのくせ、すべてを忘れた。 過去の辛さも、痛みも、悲しさも、苦しさも全部、全部。 此岸 紡柧に押し付けた。

(私が、紡柧に押し付けた……)

ねぇ、それってさ、いつの話?

え?

美琴は中学からだけどさー、私ら三人は同じ小学校で一緒にいたじゃん?

二人がやってたとしたら、多分、私もやってると思うんだけどなー

美琴

てことは、紡柧以外みんな覚えてないってこと?

そーゆーことかも……

美琴

ねぇ、最後の質問、どうする?

え?

美琴

最後の質問。

美琴

仲直りの方法はやめてさ、なんでみんな忘れちゃったのかにしない?

それ、私と華的には得だけど、美琴に利益ないよ?

美琴

それくらい別にいーよ

美琴

てか、素直に私も気になる!

わかった、それにしよう

お狐様、お狐様

質問です。

何故、六年前コックリさんのことを紡柧以外の人が覚えていないのですか?

そのとき、律のスマホが鳴った

不在着信

不在着信

えっ

美琴

律に、電話?

え、おかしくない?

私ら、電源切ってんだよ?

メールなら、ともかく……

美琴

……さまだ

え?

美琴

お狐様だよ

なんで?

なに言ってんの、美琴?

どうしたの……?

美琴

さっき言ってたよね

美琴

お狐様は、電源の入ってないケータイに連絡して教えるんだって

そう書いてあったから

美琴

ならさ、その電話、お狐様からだよ

えっ

お狐様じゃなきゃ、ケータイに連絡しても表示されないってこと……?

美琴

そーゆーこと

不在着信

不在着信

不在着信

不在着信

不在着信

不在着信

こ、これ、出た方がいい?

わかんない……

美琴

どっちにしろ、帰ってもらわなきゃいけないし、スピーカーにしてくれる?

うん、わかった……

再びケータイが鳴る

は、はい

お狐様

朝倉 律

(わ、私の名前……)

お狐様、ですか?

お狐様

そう。我がお狐

お狐様

お前たちは何度我に問うた?

美琴

えっ?

何回だった?

九回でしょ

だよね?

美琴

九回っ

九回、です

お狐様

そうだ

お狐様

我が電話をかけたのは、お前が過去を忘れたからだ

なんで、私と華は忘れてるんですか?

お狐様

あの力をかけた霊が強くなりお前たち力のない人間にとっては認識の中に止めることが困難になったからだ

に、認識?

お狐様

あぁ。認識

お狐様

記憶しておくだけでも命を削ってしまうほどになった故に、体が本能的にその記憶を抹消したのだ

……忘れなきゃ死にそうだから

忘れたってこと?

お狐様

ああ

美琴

なるほどねー

ありがとうございます

じゃ、やろっか

うん

美琴

だねー

お狐様、お狐様

質問に答えてくださりありがとうございました

美琴

どうか、ご退場ください

お狐様

嫌だね

!?

えっ

美琴

なんで?!

お帰りください

お狐様

嫌だ

美琴

帰ってください

お狐様

断る

お、お願い帰って!

お狐様

嫌だと言っている

お狐様は、一向に帰ろうとしない

お狐様

紡柧を追い出してくれて感謝してるよ

お狐様

お前たちが間抜けだったおかげでこうして、お前たちを喰える

〜 紡柧目線 〜

紡柧

……馬鹿

紡柧は、近くの公園のベンチに腰掛けていた

紡柧

……絶対ダメって言ったのに

紡柧

(六年前、なにがあったか覚えてないのに。それなのに平気って言わないでよ)

紡柧

(私、あの時……)

はると

なになやんでるの?

紡柧

! はると

はると

ひさしぶりだね!紡柧おねーちゃん!

どこからともなく、その少年は現れて、私隣に座った

はるとは、一応幽霊 詳しくはわからないけど、ここらへんで死んだらしい

ずっとここに居座っているのに幽霊としては珍しく害がない

紡柧

もめた

はると

んーと、りつちゃん?

紡柧

うん。律ともめた

はると

なんでー?

紡柧

律が私との約束破ったの

紡柧

コックリさんしないって約束

紡柧

お狐様しないって約束

はると

オキツネサマ?

紡柧

コックリさんの名前違いみたいなやつだよ

はると

コックリさんの、狐さんを呼ぶやつでしょー?知ってるよー

紡柧

えっ?

はると

ん?

はるとはニコニコ笑っている

紡柧

(コックリさんの狐を呼ぶやつ?)

紡柧

(なにその話、知らない。 そんなこと、律一言も言ってなかった!)

紡柧

はると

紡柧

お狐様について、私に教えてくれる?

はると

うん!いーよ

はると

オキツネサマはね、前に紡柧おねーちゃんが言ってた狐の幽霊の集合体みたいなものなの

紡柧

集合体……

はると

うん!

はると

九個のお願いを聞くけどね、九個の中に帰ってを入れないと、帰ってもらえなくなっちゃうの

紡柧

え……?

はると

九個言うことを聞くって約束事をね、破れないから

はると

でも、それ以外のルールには逆らえるから、九個の中にお願いと、聞きたいことと、帰ってを入れなきゃいけないの

紡柧

(律の言ってたことと違う……)

紡柧

(ってことは、律は絶対に……)

ガタッと、紡柧は立ち上がる そんな紡柧をニコニコしながら、はるとは見つめる

はると

紡柧おねーちゃん

はると

なにしたいか決まったんだねっ

紡柧

うん、決まったよ

紡柧

はると、手伝ってもらえる?

紡柧

前みたいに

はると

うん、いーよ

はると

紡柧おねーちゃんのお願いなら、もちろん!

紡柧

はると、ありがとう

紡柧

じゃあーーー

はると

ーーーうん!

はると

わかったよ

はると

それじゃ、急いでそこに行こー!

私は律の家に勝手に入る はるともそれに続く

紡柧

律!

紡柧

ねぇ、律!

紡柧

律!華!美琴!

急いでリビングの扉を開けるとそこには、ぐったりとした彼女たちと、黒髪に白い装束の女がいた

お狐様

あら

紡柧

……!

紡柧

(すごい、寒気……。こいつ、ほんとに強い霊だ)

お狐様

久しぶり、紡柧ちゃん

紡柧

あんた、六年前の……!

紡柧

(思い出した。この圧迫的な雰囲気と、黒い髪に白装束。青白い肌と光のないつり目)

紡柧

(あの時と全く同じ、狐の霊だ……!)

お狐様

こないと思ってたのに

紡柧

律たちを返して

お狐様

あら、いきなり交渉?

お狐様

それにしては、武が悪いんじゃない?

紡柧

……っ!

紡柧

(確かにあっちには、三人人質を取られてるわけだし……)

紡柧

ねぇ、そっちの儀式は終わったんでしょ?

お狐様

ええ。九つ願いを聞いたわ

紡柧

(やっぱり! 馬鹿律!)

紡柧

それなら……

お狐様

あぁ、駄目よ

お狐様

最低二人はいないとできないから

紡柧

(……最低二人ならいける)

紡柧

お狐様!お狐様!

お狐様

ふふっ、なに?やるの?

お狐様

馬鹿みたいね〜

くつくつとお狐様は嘲笑う

紡柧

九つの尾を持つあなたにお願いがございます!

お狐様

まだやるの?

お狐様

ほんっとどうしようもない馬鹿な子ね

はると

どうか、おいでください

お狐様

なっ?!

はるとの存在を認識していなかったお狐様が驚く

はるとは、幽霊に認識されない特殊な霊なのだ

紡柧

一つ目のお願いです

紡柧

私の友達を、律と華と美琴を返して

お狐様

うぐぅ

お狐様

『返してあげましょう』

ルールに無理やり言葉を言わされ、彼女は三人を私に差し出す

これで、三つ。

紡柧

四つめのお願いです

紡柧

もう人に危害を加えないと約束してください

お狐様

『構わない』

紡柧

五つ目です

紡柧

あなたの成仏の仕方を教えてください

お狐様

お狐様

『我に九つの命を捧げること』

紡柧

六つ目のお願いです

紡柧

六年前に私からとって行ったものを返して!

紡柧

(あの子を……返して……)

お狐様

『もう我の腹の中じゃ』

紡柧

……っ!!!

紡柧

(巳継っ)

はると

おねーちゃん?

 はるとが、上目遣いに私の服の袖をつかんで見上げる

紡柧

ん、平気

紡柧

(巳継のことは、おいておこう。ちゃんと、大丈夫)

紡柧

六つ目のままの交渉です

紡柧

返してください

はると

みつぎを返して

お狐様

それを七つ目にするのなら良い

はると

駄目だよ

はると

[ルールに逆らうな]

ドスの効いた低い声がした

お狐様

っ!!!

お狐様は、もう嫌だと言いたげに小さな勾玉を投げる

紡柧

巳継っ!

お狐様

これでよかろう!

紡柧

七つ目のお願いです

紡柧

今まで襲ってきた子たちを記憶を消して、元の場所に返して

お狐様

そんなこと!

紡柧

約束ですっ

お狐様

『返却する』

はると

それでいい

はると

おねーちゃん

紡柧

うん

紡柧

八つ目のお願いです

紡柧

どうか、どうか

紡柧

成仏をしてください

お狐様

断る!!

紡柧

ルールに逆らっちゃ駄目ですっ

はると

……

はると

紡柧

はると

詔を

紡柧

うん

紡柧は勾玉を握り締めた

紡柧

我が巫女の血において、悪霊を滅ぼしたまうことを畏み畏み願い奉

はると

阿吽の狛犬の名において、悪狐を滅ぼしたまう

そう言うが早いか、悪霊となったお狐様を、はるとは飲み込む

お狐様

や、やめろ!

お狐様

くるな!近寄るんじゃない!

はると

ガァウッ!

はると

ごっくん

紡柧

……

はると

んぅ〜…………まずい

紡柧

え、いや

紡柧

美味しかったら困るから……

はると

じゃ、紡柧おねーちゃん

はると

最後のお願いよろしく!

紡柧

もぅ……はいはい

紡柧

お狐様、お狐様

紡柧

九つ目の、最後のお願いです

紡柧

黄泉の国で輪廻転生を果たしてください

お狐様

『承る』

お狐様の形をした煙はそう音を残して消えた

はると

これにてしゅーりょー!

紡柧

これでほんとにいいのかな……?

はると

ん?なんで?

紡柧

ううん

紡柧

やっぱりまだ、こーゆーの慣れなくて

はると

でもカッコ良かったよー?

はると

巳継のこと、返してって言った時とか

はると

詔を唱える時とか

紡柧

それは単に必死だったから

紡柧

それに、はるとのためにも巳継は取り戻すしかなかったじゃない

紡柧

阿吽の始まりである巳継と

紡柧

阿吽の終わりであるはると

紡柧

あなたたちは二人で一つだもの

はると

まぁね〜

はると

あ!そろそろおねーちゃんたち起きるね!

紡柧

! 本当?

はると

うんっ

はると

それじゃあ、紡柧おねーちゃん

はると

またあとでね!

そう言ってはるとは空気に溶けた

んぅ?

ん〜……え、あれ?

なんでここに紡柧が……

紡柧

馬鹿律!

紡柧

大馬鹿者がっ

紡柧

駄目って何度言えばわかるの!

紡柧

やめてって、死んじゃうって言ったじゃない!

紡柧……

紡柧

馬鹿、馬鹿、馬鹿ぁ……

ごめん、紡柧

今度から言うこと聞くから

絶対破らないから

だから、泣かないでよ……

ん?え、あれ?

美琴

ふぁ?

紡柧

もぅ……あんたたち、

紡柧

私、心配したんだからね!

え、そーなの?

美琴

なんか……ごめんね?

紡柧

そこは言い切ってよ!

美琴

ふふっ、ごめんごめんww

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