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うちはあまり金持ちとは言えない、かと言って金銭的に困っている訳でもなくごく普通のどこにでもいる家族だ。
ただ父の仕事が自動車製造業で転勤が多く、それに合わせて春樹も転校していた。
家に帰ると母がCDプレイヤーで曲を流しながら夕食の準備をしていた。
渡辺春樹
玄関で靴を脱いでいると母が顔だけひょこりと出して
春樹の母
と言うと台所に戻った。
春樹はまだ慣れぬ自分の部屋に行くと扉の鍵を閉めてベッドの上でスマホをひらいた。
渡辺春樹
別に調べる程興味があった訳じゃない、ただあの老婆の言ったことが本当かどうか知りたかったから・・・
どうでもいいことなのに疑っていた、どうせしばらくすれば顔も忘れているのに。
渡辺春樹
・・・春樹は眠りから覚めた。 いつの間にか眠ってしまったようで外は闇に包まれ雲もないのに星は一つも見えなかった。
渡辺春樹
まだ眠気の残っていた春樹はまた眠りに落ちた。
彼は夢を見た、自販機の横にあるベンチに座って今日出会った老婆と会話をしていた。
とても楽しそうに話す自分を別の視点から見ていたが自然と涙が出てくる、
こんな顔しばらくしていただろうか・・・ネットで他人の投稿を見て笑ったことはあった、ただそれが幸せを感じてだったかと言われれば嘘になる。
幸せそうに笑う自分をずっと眺めていると急に場面が切り替わった。
赤い空に背筋の凍る冬風、腕時計を見るとまだ朝の八時前だった。
肩を摩り赤い空を眺めているともの凄い速さで黒い鳥が春樹の頭上を通り過ぎていった。
そしてしばらくすると鳥の向かった先の遠い空がパアァッと光ると黒い雲が赤い空を徐々にどす黒く染めていく。
その雲は春樹に向かって降下し、迫って来た。脚が異様に重くその場を動けずにいた春樹は雲に包まれ目が覚めると朝になっていた。