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最初に聞いた時、正直、笑いそうになった
医者
医者の口から出た言葉は、あまりにも都合が良すぎて
___そんなこと、ある?
って思った
でも同時に理解した
ああ、これは
やり直せるってことだ
医者
淡々とした説明を聞き流しながら、ベッドの上のあいつを見る
目を閉じて、静かに眠ってる
何も知らない顔
何も覚えてない顔
都合がいい
本当に。
ありえないくらいに
だって、あいつはもう。 あの頃のあいつ”じゃない
昔から、あいつは少しだけ面倒なやつだった
すぐ笑うくせに、すぐ無理をする
誰にでも優しくて、でも誰にも本音を見せない
中途半端
見ていてイライラした
なのに。
山中柔太朗
って何度も思った
あいつが辛そうな顔をしてるとき、
隣にいるのは、いつも別のやつだった
あいつは平気な顔して、 「大丈夫」なんて言って、
どうでもいいやつに、弱い所を見せていた
俺には何も言わない
ふざけんなよ
ってなんども思った
だから、あの日。
あいつの手首を見た時。
正直、安心した
あぁやっぱりって。
綺麗な線じゃなかった
隠しきれていない雑な傷
どう見ても、“誰にも頼れてないやつ”のやり方
なのに、俺には言わない
気づいて欲しそうなくせに
めんどくさい
ほんとに
でも、 だからこそ。
やっと、理由ができた
“俺が必要な理由”
最初は、ちゃんと止めるつもりだった
普通に
メンバーとして
でも。
山中柔太朗
そう言った時のあいつの顔
あれで全部変わった
佐野勇斗
って、どうでもよさそうに言うあいつ
そのくせ、どこか期待してる目
——ああ、こいつ。
ほんとは
誰かに縋りたいくせに
誰にも縋れないフリしてる
中途半端で、めんどくさくて
でも
だから、丁度いい
山中柔太朗
山中柔太朗
あの時口に出した言葉は半分本気で
半分衝動だった
でも
あいつが一瞬黙った時
その瞳が揺れた時
___いける。
って。
そこからは簡単だった
少しずつ距離を縮めて
少しずつ言葉を選んで
逃げ道を減らして
優しくして
でも完全には安定させない。
少し不安定なままで
そうすれば勝手にこちらを見る。
勝手に縋る
_____思った通りだった
あいつはちゃんと俺を選び始めた
完全じゃないけど確実に。
前よりずっと、“俺の方”を見てた。
なのに。
全部リセットされた
山中柔太朗
誰もいない廊下で、小さく吐き捨てる
あと少しだったのに
もう少しで、完全にこっちに来てたのに
全部、消えた
記憶ごと。
関係ごと。
なにもかも
でもだからこそ。
チャンスだと思った
今のあいつは何も知らない
何と覚えていない
誰も知らない
だったら
俺があいつの全てになればいい
それだけだ
最初に「だれ」って言われたときは、少しだけムカついた
さすがに。
でもすぐにどうでもよくなった
どうせ、これから覚えさせるんだから。
俺の事だけ
俺との関係のことだけ
「俺たち、特別な関係だったんだよ」
あれは嘘じゃない
ただ、“形”が違うだけで
これから、そうなるんだから
問題ない
他のメンバー?
邪魔でしかない。
あいつを中途半端に支えるやつら
優しくするだけで、責任は取らないやつら
だから、排除する
違和感を持たせないように
自然に。
「俺だけ見てればいい」
あいつが頷いたとき
正直笑ってしまった
簡単すぎて
でも同時に、ちゃんと怖がってる顔もしてて。
——最高だな
って思った
あいつは、もう逃げられない
記憶が無い分余計に
判断基準がないから
全部俺が基準になる
俺が正しくなる
俺が世界になる
山中柔太朗
誰もいない病室で眠っているあいつに話しかける
山中柔太朗
前よりももっといい形に
もっと狂った世界を
今度は絶対に逃がさない
山中柔太朗
小さく笑う
山中柔太朗
何も知らないまま、
全部を与えられて、
それが“正しい”って信じていく顔を、
これから何度でも見れるんだから
主
主
主
主
主