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シロクロのセカイ

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シロクロのセカイ

13 - 12. 「黄金色に光る月。」

♥

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2025年09月25日

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隣で眠る少女のような者の髪に、 そっと指を通した。

相手は寂しそうに俺の服の袖を 掴んでいる。

ハルト

……。

何杯かお酒を飲み交わしても、 コガネの目は虚ろなままだった。

ハルト

……そろそろ帰る?

コガネ

……ねえ、ハルト。

ハルト

ん?

コガネ

今日は、一緒に寝てほしいって
言ったら、怒る?

ハルト

……!

ハルト

どうしたの?珍しいね。

コガネ

……酒を入れても、
心地よくならなくて。

コガネ

本当は、怖いんだ。

コガネ

でも、爺さんの人生を壊すために、
私は……。

ハルト

……いいよ、ホテル取ろうか。

言わなくていい、 そう伝えるように制止した。

爺さん、コガネはまだ弱い。

体は23に育っても、 心は10歳で止まってるんだ。

誰もその先を教えてくれなかったから。

ハルト

(まあ、二人きりのホテルでも
なにもないんだけどね……。)

あの後、コガネは俺を ベッドに投げつけて、 抱き枕のように抱きしめながら眠った。

そうだ、アメが決断すればこの子は……。

ハルト

(……お義父さん。)

ハルト

(俺がこの子を守る方法は無いの?)

コガネはいつもいい子だった。

強くて、優しくて、 誰にでも寄り添える子だった。

ハルト

……いい夢見てね、サトミ。

ハルト

……ごめん、俺のせいで……。

コガネ

…………ハルトは何も
悪くないよ。

コガネ

……だってハルトは最後まで、
サトミさんを愛してた。

コガネ

ミツルを信用してた。

コガネ

……それの、何が悪いの?

ハルト

コガネ、来てくれたの?

コガネ

うん。

コガネ

サトミさん、私のお義母さんだから。

コガネ

私は、ハルトとサトミさんの
娘だから。

コガネ

来るのは当たり前でしょ?

サトミの墓の前で、コガネは そっと手を合わせる。

あのときサトミが言ったことを、 コガネは宝物のように覚えていた。

ハルト

……コガネ。

ハルト

君だけが俺の残された
家族だよ。

コガネ

……うん。

あの時、コガネは突然抱きついた俺に 驚きもせず。

ただ背中を撫で続けてくれた。

この時、コガネはどれだけ 傷ついていたんだろう。

どれだけ苦しんでいたんだろう。

ただ、嬉しかった。

俺やお義父さん以外にも サトミを思ってくれる人がいて。

ハルト

じゃあコガネ、
俺は先に出るから。

ハルト

15時頃に拷問室で。

コガネ

……うん。

ハルト

……疲れてるなら、
もう一日伸ばしてもいいよ。

コガネ

ううん。

コガネ

アメと今日までって
約束したから。

ハルト

……分かった。

その日、

ミツルさんの処刑が無事に 終わった連絡が来た。

これで、全て終わったんだ。

アメ

(…俺は、どうしよう。)

年齢飛躍という、 神の領域に達する能力。

ハルヒという犠牲のおかげで 生きてしまった、この体。

爺やが託した、人生そのもの。

……まだ、ここで解決していないことがある。

コガネ

ただいま。

アメ

おかえりなさい、コガネさん。

アメ

……教えてほしいことが、あるんです。

コガネ

……なあに?

アメ

どうしてコガネさんは、
爺やの全てを継いだんですか?

俺は、これを知りに来た。

彼女の正体と、

爺やの、真実を。

コガネ

……そうだね。
もっと早く教えるべきだった。

コガネ

まず座る前に、
真実を教えようか。

コガネ

……爺さんはね、

私の両親を殺したんだ。

アメ

えっ……?

13年前、某日。

黄金色の月が、くっきり見えた。

まあるい、満月だった。

ゲツ

(友だちと遊んでたら
遅くなっちゃった……)

ゲツ

(お母さんに角が生えちゃう〜!)

家の中に入ると、 真っ白な壁は血に染まっていた。

わけがわからないまま、 リビングまで走った。

知らない人の大きな足跡が床についていた。

靴の跡だった。

荒れ果てた部屋の中に、

転がった死体の真ん中に、

そいつは当たり前かのように立っていた。

ゲツ

おとーさん……

ゲツ

おかー、さん?

コガネ

そいつらはもうただの死体だ。

コガネ

声をかけても意味はない。

ゲツ

あ、

ゲツ

あぁ……

ゲツ

あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!

その後の記憶はあまりない、

荒れ果てた部屋の中を暴れ続けた。

ただ奇声を上げて、 丸腰で殺人鬼に挑んだ。

気絶したのは、いつだっただろうか。

気がつけば病院にいて、

点滴をぶっ刺されて、

医師と看護師と警察に囲まれていた。

親を失った喪失感もあった。

殺人鬼に対しての恨みもあった。

でも、それよりも、

自分が殺人鬼に”生かされた”という事実が、 ただただ息苦しさを感じさせた。

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