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倉庫の空気は 張りつめたままだった。 雨音が壁の向こうで 一定のリズムを刻んでいる。
康平は,少しだけ距離を 保ったまま立っている。 近づきすぎない。 触れない。 その選択が, 正しいと思っている顔だ。
康平
蓮音は瞬きをする。
康平
「だから」の後に、続く言葉を待ってしまう。
康平
静かで,柔らかい声。 本気で,守ろうとしている声。
康平
蓮音の指先が わずかに震える。
康平
悪気はない。 むしろ,気遣いのつもりだ。
康平
少し笑ってみせる。
康平
──その瞬間。 蓮音の中で,何かが静かに切れた。
蓮音
康平は言葉を止める。
蓮音
声は低い。 怒っているわけでも, 泣いているわけでもない。 ただ,冷えている。
康平
蓮音
一歩,前に出る。
蓮音
康平は,答えに詰まる。 その沈黙が,答えだった。
蓮音は,短く息を吐く。
蓮音
その言い方が、距離を作る。
蓮音
視線を上げる。
蓮音
蓮音
蓮音
康平の目が,わずかに見開かれる。
康平
蓮音
蓮音
蓮音
言葉が,はっきりと刃になる。
蓮音
康平は,初めて 動揺を隠さなかった。
康平
蓮音
目を逸らさない。
蓮音
倉庫に,雨音だけが残る。
蓮音は一歩下がる。 距離を取る動き。
蓮音
その言葉は, もう”大丈夫”じゃない。
蓮音
康平
思わず出た声。
蓮音は立ち止まらない。
蓮音
振り返らずに,続ける。
蓮音
扉の前で,足を止める。
蓮音
それは,拒絶ではない。 撤退だ。
康平は,その背中を 見つめたまま動けない。
──自分が言ったのは、 正論だったはずだ。 ──優しさだったはずだ。 けれど。 その一言が, 蓮音の覚悟を否定したことに, このとき初めて,気づき始める。