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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで

白來

もう大丈夫

白來

大丈夫だから降ろして…!

長髪の青年

お前の気配が
大丈夫じゃねぇんだよ

横抱きにされたまま 青年の家に入る

庶民の物というには立派で 武士の物とも違う作りだ

白來

どこまで行くの?

長髪の青年

そこの奥の部屋

長髪の青年

長髪の青年

はい、着いたぞ

白來

あ…

そっと降ろされたその部屋には

妖が2匹いた

雪!

雪さん!

長髪の青年

ん?

長髪の青年

…だいぶ回復してんな

長髪の青年

外には出てねぇよな?

もっちろん!

外にはヒトが
うようよいますから

長髪の青年

…まあそうだろうな

白來

えっと…?

あ!新入りだな!

狐さんだ…!
よろしくです!

白來

あ、うん…よろしく

白來

ここは何…?

長髪の青年

ああ、説明してなかったな

俺は雪

ここは俺の家で仕事場…

主に、傷付いた
“ヒトならざるモノ”を

治療してる

雪は薬師(クスシ)って言うんだ!

白來

薬師…

ちらりと雪の方を見れば

雪は陰のある表情で そっと目を伏せた

白來

雪…?

…ん?どうした

白來

今…っ、やっぱ何でもない

そうか

白來

(聞けなかった…)

白來

(なんであんな表情…)

それじゃあ、俺は
コイツの治療するから

へいへい

わかりましたっ!

駆けていく その後ろ姿を見ていると

ん、そしたらお前
(ヘンゲ)
変化解いて

白來

ッ…!

???

『変化を解いた姿、
 見せてよ』

白來

ぁうっ…

急に押し寄せるのは 激しい頭痛

おい、どうし…?

白來

ごめ、待って…!

断片的な何かが 頭の中に流れ込んで

どうしようも無い程に、苦しい

っ……(やばいな)

(妖力が僅かな状態で
この症状…)

(原因が解らないことには
何も出来ねぇけど…)

(なんとか妖力だけでも
回復させられれば――)

袂から1枚の札を出し 2本の指で挟む

     リキジュシュヨ
心身静寂、力授呪与

…急喼如律令

自身の力――呪力を札に込め

そっとそれを妖狐の肩に当てる

妖狐

っは、は…

妖狐

妖狐

……あれ

…大丈夫か

妖狐

う、うん…

妖狐

僕、何がどうなって…?

俺にはまだわかんねぇ

でもまぁ…

取り敢えずは
落ち着いたらしいな

妖狐

あ…ほんとだ

妖狐

ありがとう、雪

ああ

それで…お前は?

妖狐

え?

お前の名

別に本名でなくても良い

ここには他の妖狐も来る

紛らわしいから
呼ばれたい名を名乗ってくれ

妖狐

わかった

白來

  ビャクラ
――白來って呼んで

白來…わかった

そしたら白來
変化を解いて

無駄に妖力使うな

白來

っ…やってみる

白來は一瞬ボーッとして、 それから何かを振り切るように

ブンブンと首を振った

(何で今、一瞬)

(呆けたような表情を…?)

深く息を吸って力を抜く

それと同時に、保っていた妖力が 解けていく感覚があった

白來

(今のは…平気だった)

白來

(何でさっきは
あんな変な感覚に…)

よくわからない あの断片的な何かは

もう朧気で

思い出そうとしても 霞がかかって思い出せない

うん…毛並みは問題ねぇな

つかお前、何で
妖力尽きかけてたんだ?

白來

え?

何もせず
ただ存在してただけなら

あそこまで危ない状態には
ならねぇだろ

お前これまで
一体何してた

白來

僕…

白來

…あ、何となく憶えてる

じっと見つめてくる その黒く澄んだ瞳に緊張しながら

白來

確か何も判らなくなる前…

白來

男のヒトが何か唱えて

…唱えた?

白來

うん

白來

それから

白來

こう…手で格子を描いて……

微かな記憶の中にある その時の手の動きを真似ると

っ…四縦五横の格子だな

白來

何かわかるの?!

ああ

破邪の法を使われて
岩に封じられた妖ってのは

白來…お前のことか

白來

封じられた…?

白來

待って、よくわからない

今は記憶が曖昧だからだろ

白來

違う、そうじゃなくて

あ?

白來

…何で雪は、僕が封じられてた
って知ってるの?

一瞬、その瞳に陰が差す

……こっちにも色々と
面倒な事情があんだよ

憂いを帯びた表情で そう言われ

もう何も言えなくなる

…少しずつ俺の呪力与えて
回復させるからな

取り敢えず、今日は
この1回で終わりだ

これは長く掛かるから

ここに住むのが嫌でも
我慢しろよ

白來

……

…どうした

白來

あ、えと…なんでもない

そうか

じゃあ眼、閉じてろ

白來

…わかった

すぅ、と瞼を閉じたことで 下りてくる闇の中で

心身静寂、力授呪与
急喼如律令

暖かいのに冷たくて 穏やかなのにどこか危うい

そんな感覚の呪力がそっと

自分の身体を 包み込んだのがわかった

白來

(気持ちいい…)

白來

(なんか
眠くなってきたな……)

身体を伏せると、少し冷たい手が そっと毛並みを撫でていく

…疲れたんだろ
ゆっくり休め

その声に誘われるように 白來は眠りへと落ちていった

第2話【暖かいのに冷たくて】

続く

玉響の刻は縁の果てに【BL】

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コメント

4

ユーザー
ユーザー

雪さんにも何かあるようですね…。びゃくらさんの持つ断片的な記憶と何か関係があるのでしょうか…? んーー…まぁ難しく考えずに、キスで目覚めた白雪姫のようにもう一度キスしてみたらどうでしょうか?😌😌

ユーザー

おはようございます! 今週はスマホの機種変やら何やら、どうなる事かと思いましたが…無事更新出来ましたε-(´∀`;)ホッ まあお察しの通り、雪にはこんがらがった事情がございます() ちなみに今まで雪は1回も笑顔を見せてません 妖2匹との会話も真顔です( ¯ ꒳¯) 次回も読んで頂けたら嬉しいです!

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