天使に口付け 桃青

息を吐くほど身体中に痛みが走った

血液が不足してて今にも死にそう

人間はやっぱ恐かった

信じるんじゃなかった

好きなだけ殴って相手の気持ちなんて考えない

自分が満足すればそれでいい

怖い

羽を広げても激痛が走って

ふらついてまともに飛べる状態じゃなかった

気がつけば真っ逆さまに落ちていき

意識も途絶えていた

ちゃんｯｯ.....

ろちゃんｯｯ....

ころちゃんｯｯ

長時間寝てたのか頭がぼーっとしていた

体は起こせないぐらい重くて視界には友人が映っていた

少し涙を浮かべながら叫ぶ橙くん

そんなに僕のこと心配してたのかな

あれ？

謝罪...

今思えば怒りに任せて動きすぎたのかもしれない

一気に自分がやったこととやられたことがリピートされて恐怖でパニック状態だった

自分に何が起こってるのかわからなかった

体が震えて、周りにあるもの全てに恐怖を抱いていた

なんだか昔に戻ったみたいで怖かった

また皆して殴ってきて好きなだけ暴言を吐くような

そんな日常が帰ってくるみたいで

だけど橙くんはずっとそばに居てくれて落ち着くまで世話をしてくれた

流石に人間の力を舐めてた

しばらく傷が痛んで人間界に降りるのを拒否したまま2週間が過ぎていた

ｶﾞﾗﾗﾗｯ

１回感じた恐怖は取れないもので目線を合わせることも出来なくなっていた

怖がってばかりでまともに会話できない

"怖いも2人で半分こ"

そうだ、怖い事も橙くんがいるから大丈夫....ｯ

ｶﾞﾀｯ

相変わらず古い校舎

椅子も座るだけでぎしっと木の音がする

久々に優しい声で呼ばれる

いつからそう呼んでくれるようなったかな

優しくて大きな体で突然抱きしめられた

ほんのりたばこのような香りがしたけど石鹸のいい匂いもほのかに香る

左手で支える手と柔らかく頭に触れる手が僕の心を落ち着かせた

少し苦しいけど嫌な気持ちじゃなかった

そんなに気にしててくれたんだ

ごめんね、桃くん

たくさん泣かせてごめんね

今は少し、桃くんの優しさに甘えさせて

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