コメント
2件
ポケモンのDLC最新情報でたぜいえい
ひどく、寒かったのを覚えている。 その日は天気が悪くて。 降る雨と冷たい風に、 ―――ベタな状況だな。 なんてことを漠然と感じた。 目の前には無機質なフェンスが張ってあって。 廃ビルも形だけ「そういう事」の対策をしているのが分かる。 ふと下を見ると、おなじみのアスファルトと時折走っていく乗用車が見える。 何となくフェンスに手を掛けた。 そのまま上る真似事をしてみた。 「どうせ、止める奴なんていねえんだろ?」 そんな呟きが漏れた。 いっそ、このまま飛べば、 ニュースで報道されたりして。 少しだけ世間が俺に注目したりするんだろうか。 そんな馬鹿なことを考えた。 よれた制服が濡れて重くなっていく。 遠雷が聞こえた。この雨はいつまで降るのだろうか。 まるで世界が俺を追い出そうとしているような。 そんな錯覚に襲われる。 溢れようとする涙を、雨粒だと自分に言い聞かせて。 意味なんて無かった。ただ――――に会いたくて。 今の時代。 友情も。愛情も。割と何でも金で買える。 でも。 消えた人間は買い戻しできなかった。 「もう、いいや。」 不覚にもそんな言葉が出た。 生きる意味がどーとか。 今生きている今日がどーとか。 そんな言葉よりも欲しい言葉があった。 「ね、きみ。」 まずい。誰か来たのか。 「なんかごちゃごちゃ考えてるみたいだけど。」 『皆さ、意味なんてないのかもしれないよ? 死んでないから生きてる。ただそれだけって。 そうやってシンプルに考えるのも、悪くないんじゃない?』 「……誰だよ、あんた。」 「知りたい?」 「…………」 「いずれ分かるわよ。だから……」 「また会いましょう。」 そう言って彼女は階段を下りていく。 不思議と追いかける気はしなかった。 でも、 「ああ、また会おう。」 雨はほんの少し、弱まっていた。