彼は毎日、 朝早くから学校に来て
なにかを折っていた
小さい頃から折り紙が大好きで
高校生になった今も、 折り紙を折っていた彼は
折り紙博士と呼ばれていた
ただひたすら、折っていて
その瞳は
なにかを待ち望むようだった
わくわくした少年の瞳が
この後、消えてしまうなんて
誰も、思っていなかった
その日の夕方
通学路が騒がしかった
誰かが車にはねられたという
それが
彼だった。
理由は運転手の不注意
希望に満ちた1人の青年は
もういない。
命の代わりに
涙だけが
溢れる
あの笑顔も
あの瞳も
あの折り紙を折る姿も
もう目にすることは無い。
先生や同級生が泣いているとき
我慢していた涙が
いっきに零れ
我が子を失った悲しさが
いっきに溢れた
数日後
彼の部屋を片付けようと
母はクローゼットを開けた
そこには
折り紙で折られた、 たくさんの花
そして、花束が作られていた
茎まで本物そっくりで とても丁寧な
彼が事故にあった翌日は
母の誕生日
もういない彼の気持ちが
たくさん
たくさん
つまった、折り紙
母は、花束を抱えて
涙を流した──