世界一悲しい言葉

俺の恋人は病に侵されている

治らないだろう、一生

その病気は 『惚れ恋病』

恋をしてしまう病気だ

相手は誰でもいい、 ただ恋をしてないと精神を崩し その負担で死んでしまう

その恋をする相手はコロコロ 変わる

その相手以外、目に入らなくなる

だってこの病気は、 元々愛していた人の事は絶対に─

ｺﾝｺﾝ

俺が入って来た瞬間 一瞬のまふの目の光が消えた

俺だけか？ こんなにもお前を求めて 思い出にしがみついているのは

ｺﾝｺﾝ

まふは突然立ち上がると、 天月に抱きついた

天月がチラッ、と俺を 見る

もうまふの世界に俺は

衝動的にまふの肩を掴んで 天月から引き離した

まふの怯えた目は、 赤子のように澄んでいた

気づけばまふの目に涙が 盛り上がっていた

俺が肩から手を外すと、 まふは床に崩れ落ちた

でももう限界なんだよ

俺以外の奴と、まふが 触れ合ってるだけで嫌だ

その日の夜

俺は病室に忍び込んだ

怖かったんですよ、と まふが俺に抱きつく

それが嬉しくて、 口角が上がっていくのがわかる

まふは寝る前、俺の声が 聞きたいと駄々を捏ねる

まふが俺を覚えている夜の 間

それはとても素晴らしい時間で

病にかかる前に一時だけでも 戻れている気がした

でもそんな時間も長くは 続かない…

俺の突然の告白に、 まふが目を丸くした

【好き】って言葉がどれだけ 大切か分かった

俺は後何回俺を愛してくれる まふにこの言葉を言えるのか

それでもきっと…俺は言い続ける だろう

｢好き｣

世界一俺にとっては 悲しい言葉だけど

二人にとっては 世界一、幸せな言葉だから─

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