桃side
年下三人と分かれたあと、 俺たちは特にいく場所も見つからず、 建物の中をひたすらブラブラと歩いていた。
悠佑
悠佑
いふ
ないこ
出かける前に食べてきた昼飯によって、これ以上食べ物が腹の中に入ることはできないと思われる。
だが二時間半ずっとこうやって建物内を右往左往するのは、 さすがに飽きてくるし疲れる。
「何かいい店でもないか」と歩きながら辺りを見回していると、 一つの雑貨屋らしき店を見つけた。
他の店に比べたら少し店の大きさは小さめだが、 全体的に木でまとめられた棚や観葉植物、 置いてある雑貨に俺は心が惹かれた。
ないこ
悠佑
ないこ
俺がその雑貨屋を指で指すと、 二人は店をチラリと横目で見て大きくコクリと頷いた。
悠佑
いふ
ないこ
意外とあっさり了承してくれた二人と共に、 雑貨屋の中へと入っていく。
外からも見えたように、 自然あふれる木の棚の上には小さな馬の置物や、 見ているだけでなんだか懐かしい気持ちになるようなぬいぐるみなど、 様々な小物が置かれていた。
中には手作り感溢れるアクセサリーもあったりして、 少し若めの女の子たちが棚の前でワイワイ騒いでいる。
いふまろとアニキは、 ブックカバーの場所を二人ウロウロしながら探しているらしい。
一人取り残された俺はとりあえず店内をぐるりと見回し、 大体の雰囲気や商品を確認する。
ないこ
そんな独り言を呟きながら、 視線の先に入ってくる商品を片っ端から眺めていると、 ふと一つだけポツンと商品棚の端に置かれている髪ゴムに目がいった。
黒くて太い、しっかりとしたゴムに付けられた黄色く丸っとしている平面のヒヨコの飾り。
手作りすればフリマでも売っていそうな簡素な物だったが、 なぜだかその飾りに俺はとても惹かれた。
商品なのか、 誰かの忘れ物だったりするのか、 ヒヨコの裏を見て値札が無いか確認する。
だがどこにも値札は無く、 やはり誰かの忘れ物なのだろうかと諦めて元ある位置に髪ゴムを戻した。
パッと頭の中にりうらの顔が思い浮かぶ。
ないこ
誰のものかもわからないから本当は手に取ってはいけないのだろうけど、 この髪ゴムが似合う人まで脳内に浮かんでしまうと、 人間やはり欲望が出てしまうものである。
なかなかその場から離れられず、 商品棚の端をひたすら男子高校生が眺めているという、 側から見たらよくわからないカオスな状況の中、 背後からピョンと抱きついてきた人がいた。
いふ
まろはお腹の辺りに手を回して肩に頭を乗せながら、 俺の視線の先を見るように棚の端へ興味を向ける。
呼ばれたことの無かった「ないこたん」という単語に違和感を覚えつつ、 目の前の髪ゴムを指差して事情を説明した。
いふ
独特な音程でまろはそう言うと、 先ほどの俺みたいに髪ゴムをジロジロと舐め回すように眺める。
すると今度は周りを確認するようにキョロキョロと見回すと、 「あっ」と声を出して女の子達が群がっているアクセサリー売り場の方を指差した。
いふ
ないこ
いふ
目を凝らして見てみると確かに本当に小さくだが、 編まれたカゴの中に猫や犬などの平面飾りが付いた髪ゴムがあった。
ただあまりにも小さくて遠いので、 俺が犬や猫だと思っているものでもなんだか違う動物なのでは無いか、 そう思ってしまうほどだったので、 すぐ「あれだ!」と決めつける訳にはいかなかった。
ないこ
ないこ
いふ
いふ
本当に良いの、 そう聞くと「ええやろ」と軽い返事が返ってくる。
いふ
いふ
もし他の人の買ったものだったら、 と一瞬躊躇ったが、 まろが言うなら良いのかなと俺は髪ゴムを手に取り、 なにやら割れ物コーナーをジッと見ているアニキの方へ向かった。
悠佑
ないこ
悠佑
ないこ
ないこ
悠佑
いふ
ないこ
未だ俺の背中にくっ付くまろにそうツッコんで、 俺はいくつかの茶碗を持つアニキに問いかけた。
ないこ
首を傾げる俺に対して、アニキは「何を言っているんだ」とでも言うように不思議そうな顔で答えた。
悠佑
ないこ
ないこ
俺たちは今日の朝、 普通に茶碗は用意されていたから別にこれ以上増やす必要もないのでは無いか。
だがアニキは首を振って、
悠佑
悠佑
悠佑
悠佑
そこまで言うと、アニキは口籠る。
そして手に持った二つの茶碗を見比べると、 ニコリと俺の方を見て微笑んだ。
悠佑
ないこ
「よし、これに決めた」とアニキは小さく叫び、 赤い茶碗一個とピンクの茶碗一個を持ってレジの方向へ体を向けた。
ないこ
悠佑
俺の手元から髪ゴムを取ったアニキは、一人でレジの方へ向かっていった。
本当だったら俺が買わなきゃいけないのに・・・・・・。
あとでお金渡さなきゃ、 俺はそう思いながらレジを済ませたアニキとまろと共に、 年下三人との待ち合わせ場所に向かった。
コメント
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ブク失ですm(*_ _)m 応援してます!(ง ˙-˙ )ง