コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
佳代
いつもと同じ帰り道
夕日に染まる道を並んで歩きながら、佳代が突然そんなことを聞いてきた
真美
真美
放課後の廊下を、忘れ物を取りに来た女の子が歩いていると、後ろから「コツコツ、コツコツ」と言う音が聞こえてきた
振り返ると、上半身だけの女の子が、手にカマを持ってこちらをじっと睨んでいる
これがテケテケだ
女の子が悲鳴をあげて走り出すと、テケテケもひじで走って追いかけてきた
追い詰められた女の子は、トイレに逃げこむと、一番奥の個室に入ってドアを閉めた
そのままトイレの隅でしゃがみ込んで息を殺していると
コツコツ、コツコツ
という音が、トイレの中に入ってきた
しかも、入り口側の個室から順番にドアを開けて、
「ここでもない…」 「ここでもない…」
と言いながら、どんどん近付いてくる
そして、ついに自分が隠れている個室の前まで来たところで、音はぴたりと止まって
「どこに隠れた…」
うめくような声とともに、コツコツという音は遠ざかっていった
シンと静まり返ったトイレの中で、女の子はしばらく耳を済ませて外の様子を伺っていたけど、いつまで経ってもなにも聞こえてこない
ようやくホッとした女の子が顔を上げると、ドアの上からテケテケが覗き込んでいて、にやりと笑ってこう言った
「見ーつけた」
真美
私が話し終えると、
佳代
佳代は真剣な顔で話しだした
すごく寒い地方でのお話
本を読みながら道を歩いていた女の子が、ふみきりで電車にはねられてしまった
特急列車に跳ねられた女の子のからだは、腰のところでまっぷたつになった
普通ならすぐに死んでしまうところだけど、その日は氷点下何度という、一年のうちでも一番寒い日だったので、切断された血管は一瞬にしてこおりつき、一時的に出血が止まった
そのため、女の子はすぐには死なずに、「死にたくない」と呟きながら自分の下半身を探してひじではいまわったらしい
その女の子がテケテケになって、いまだに下半身を探しているというのだ
さらにテケテケは、カマで女性のからだをまっぷたつに切ると、切り取った下半身に自分のからだをつなごうとするらしい
だけど、他人の下半身は自分のからだにはあわず、すぐに腐ってしまうので、次々と人を襲うということだった
佳代
真美
佳代
佳代はにやにや笑いを浮かべながら続けた
佳代
真美
その手の話が苦手な私が佳代の肩を叩こうとすると、佳代は笑い声をあげながら逃げて行った
その日の夜
私がお風呂あがりにテレビを見ていたら
というニュースをやっていた
しかも、上半身はまだ見つかっていないらしい
真美
そう思いながらニュースを見ていた私は、近くに落ちていたバッグから判明したという死体の身元を聞いて、思わず
真美
と声をあげた
それは、佳代が家庭教師をしてもらっているという女子大生と、同じ名前だったのだ
その日の夜
私はテケテケに追いかけられる夢を見た
コンコン、と窓を叩く音に、私が目を覚まして窓を開けると、すぐ目の前にカマを持ったテケテケの姿があった
窓から入ってこようとするテケテケに、パジャマのままのまま部屋をとびだした私は、どこをどう走ったのか、いつの間にか学校に逃げ込んで、トイレの一番奥の個室に隠れていた
そのまま息をひそめていると、テケテケの足音がどんどん近づいてくる
そして、自分のいる個室の前まで来たところで、音がぴたっとやんだ
しばらくしてから、おそるおそる顔をあげてみるけど、ドアの上に顔はない
私がホッとしてドアに手をのばした時
???
頭の上から声がした
再び顔をあげると、隣の個室のしきりの上から、テケテケがにやにやと笑いながら覗き込んでいた
真美
自分の悲鳴で、私は目を覚ました
ベッドの上に起き上がって、肩で大きく息をする
汗でびっしょりと濡れた体に、窓から吹き込んでくる夜風が冷たい
手を伸ばして窓を閉めようとした私は、ドキッとしてその手を止めた
夜は冷え込むので、寝る前に窓は間違いなく閉めたはずだ
真美
急いで窓を閉めてベッドに横になってからも、私はなかなか寝付けなかった
おかげで次の日は、朝から寝不足気味で、お昼前にとうとう貧血で倒れてしまった
今日は学校に着いたら、佳代に昨日のニュースのことを聞こうと思ってたのに、佳代は朝から休んでいた
帰ったら電話しよう、と思いながら、私は保健室のベッドの上で目を閉じた
どれくらい眠っていたのだろうか
ふと目を覚ますと、隣のベッドの更に向こう側のパイプ椅子に佳代が座っているのが見えた
真美
私が呼びかけると、佳代は眉を八の字にして、力なく微笑んだ
佳代
佳代
真美
私は横になったまま、小さく首をふった
真美
私が言いかけると、佳代は青い顔で頷いて
佳代
消え入るような声でそう言った
佳代
真美
ニュースでは通り魔による犯行の可能性が高いって言ってたけど、もしかしたらテケテケに襲われたんじゃ...
そんな思いを、私がなかなか口に出せないでいると
佳代
佳代が暗い声で呟いた
真美
私が聞き返すと
佳代
佳代
佳代は真顔でそんなことを言い出した
真美
笑いとばそうとして、ベッドの上に体を起こした私は、驚きと恐怖で息が止まりそうになった
上半身しか見えてなかったので、佳代はてっきりベッドの向こう側にすわっているものだとばかり思っていた
でも違った
実は、佳代の上半身だけが隣のベッドの上に乗っていたのだ
しかも、佳代の手元では鋭いカマが光っていた
私が目を見開いたまま凍りついていると
佳代
佳代は寂しそうに笑って、窓から飛び出していった