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放課後の音楽室には、トランペットの音が重なって響いとった。
窓の外はすっかり夏の匂いや。
蝉の声も、どこか懐かしく感じる。
高槻素樹
部長の高槻素樹先輩が、譜面を手に言うた。
堀居瑞恵
思わず聞き返してもうた。
周りの部員が「瑞恵なら大丈夫やって」と笑うけど、心臓がどんどん早くなる。
──ソロ。
去年、あのパートを吹いとったんは、宮城先輩や。
宮城章広
その声を聞いた瞬間、背筋がびくっとした。
扉のところに、白いシャツ姿の先輩が立っとった。
相変わらず、落ち着いた声。けど、その目は真剣やった。
宮城章広
堀居瑞恵
宮城章広
そう言うて、先輩は優しく笑った。
その笑顔見ただけで、胸の奥が熱くなる。
宮城章広
堀居瑞恵
宮城章広
その一言で、息が止まった。
先輩の言葉は、いつもまっすぐや。
痛いくらい、心に響く。
宮城章広
堀居瑞恵
──その日から、放課後の音楽室に、また“あの音”が戻ってきた。
トランペットのベルが並んで向き合う。
音を合わせるたびに、心臓がリズムを乱す。
顔を上げると、先輩の横顔がすぐそこにある。
宮城章広
宮城章広
堀居瑞恵
声が震える。
息も、音も、ぜんぶ、先輩に見透かされそうで。
でも、不思議やな。
怖いのに、楽しい。
音が重なるたびに、
“またここにおれる”って思うねん。
──もう一度、先輩と金賞を目指せる。
それだけで、胸の奥が鳴りやまへんかった。