麻里
駅前の広場着いたよー
麻里
敬太くんはもう着いた?
敬太
僕も今着いたよ
敬太
すごい人が多いね…
麻里
うん、そうだね…
麻里
見つけるの大変かも…
敬太
そしたら待ち合わせ場所変えない?
敬太
近くの公園の噴水前とかどう?
敬太
あそこだったら落ち着いてると思うよ
麻里
そうしよっか!
敬太
じゃあ今から向かうね
麻里
敬太くん
麻里
初デートなのに手間かけさせちゃってごめんね
麻里
夜だから人少ないと思ったんだけどなぁ…
敬太
ううん、全然大丈夫だよ
敬太
僕のせいでもあるし
麻里
なに言ってるの
麻里
敬太くんは何も悪くないでしょ笑
敬太
敬太
あのさ
麻里
なに?
敬太
本当に僕が彼氏なんかでいいの?
麻里
もちろん!
麻里
どうしたの急に?
敬太
いや、だってさ…
麻里
敬太くん、初めて私達が会った日のこと覚えてる?
敬太
うん
麻里
電車で、痴漢から助けてくれたあの日
麻里
私は敬太くんに救われたんだよ
麻里
あの時すごい嬉しかったんだよ
敬太
別に、当たり前のことしただけだよ…
麻里
そんなことない!
麻里
私、すごい怖くて声も出せなくて身動きも取れなかった…
麻里
でも敬太くんが私の手引っ張って
麻里
外に連れ出してくれたから…
麻里
普通は勇気がないとそんなことできないと思う!
麻里
誰にだってできることじゃないよ
敬太
そうかな…
麻里
そうだよ!
麻里
私は、そういうたくましくて優しい所に惚れたの
麻里
だからもっと自分に自信持っていいんだよ
敬太
ありがとう
麻里
敬太くんが不安に思ってることは分かるけど
麻里
私にとってそんなのどうでもいいことだよ
敬太
え、そうなの?
麻里
当たり前でしょ
麻里
もし嫌だったら私から告白なんてしないよ笑
敬太
ありがとう…
敬太
すごく嬉しいよ
敬太
告白してくれた時も、そう言ってくれたね
麻里
いえいえー
敬太
本当は直接言いたいけど
敬太
チャットでごめんね
麻里
ううん
敬太
敬太
僕は耳も聞こえないし、声も出せないから
敬太
こうやって文章でしか伝えることができなくて…
敬太
もし電話ができればさっきの場所でも会えたと思うし…
麻里
麻里
敬太くん
麻里
もうカップルなんだから気遣い禁止だよ!
敬太
あ、うん
敬太
ごめん…
麻里
ほら、すぐ謝らないで笑
敬太
わかった
麻里
あ、そろそろ噴水前着くよー
敬太
僕も
麻里
やっぱり夜の公園は全然人いないね
敬太
ここは落ち着いててなんか安心するよ
麻里
あ!
麻里
敬太くん見つけた!
敬太
敬太
やっと会えたね
麻里
うん!
麻里
良かったぁ
敬太
麻里ちゃん
麻里
なあに?
敬太
麻里ちゃんはさっき
敬太
僕に救われたって言ってたけどさ
麻里
うん
敬太
僕も初めて会った時から
敬太
今日までずっと麻里ちゃんに救われてた
麻里
どういうこと?
敬太
僕のこと、普通の人として見てくれて
敬太
普通の恋人と同じように接してくれて
敬太
ずっと劣等感があった僕のこと
敬太
励ましてくれて
敬太
自信を持たせてくれた
麻里
私は本当に思ったことを言ってるだけだよ
敬太
だとしても、麻里ちゃんは僕にとって
敬太
本当に大切な存在だよ
麻里
ありがとう
敬太
だから麻里ちゃんのこと、これからも守っていきたい
敬太
僕のこと、いつでも頼ってくれていいから
麻里
うん…
麻里
ありがとう!
敬太
麻里ちゃん
麻里
ん?
敬太
敬太
手、繋いでもいい?
麻里
もちろん
敬太
敬太
麻里ちゃんの手、すごくあったかい
麻里
あの時と一緒だ…
敬太
え?
麻里
痴漢から助け出してくれた時
麻里
私の手握って引っ張ったじゃん?
敬太
もしかして痛かった…?
麻里
ううん、違うの
麻里
あの時も今みたいに
麻里
敬太くんの手がすごく温かかったの思い出したの
敬太
なんか恥ずかしいな笑
麻里
私にとっては良い思い出だよ
麻里
だから忘れないようにさ…
麻里
ずっと握っててくれる?
敬太
うん、もちろん
麻里
麻里
急にうつむいてどうしたの?
敬太
いや、実は…
敬太
ずっと不安だったんだ
敬太
麻里ちゃんとうまくやっていけるか…
敬太
敬太
だけど今
敬太
耳が聞こえなくても
敬太
声が出せなくても
敬太
僕には麻里ちゃんの表情を見ることができるし
敬太
こうやって手を握って温もりを感じることもできる
麻里
うん…
敬太
だから、今すごい幸せだよ
麻里
よかった
麻里
敬太くんの声が聞けなくても
麻里
私の声が届かなくても
麻里
他の方法でいくらでも気持ち確認し合えるからさ
麻里
だから、不安に思うことなんて何もないよ
敬太
麻里ちゃん
麻里
ん?
敬太
敬太
大好きだよ
麻里
私も大好き
麻里
こんな綺麗な噴水の前で改めて言われると
麻里
ちょっと照れちゃうな
敬太
ねえ
敬太
敬太
キス…してもいい?