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「私と付き合って!」
ああ、またこの展開だ。
魔法を使うしかない。
「明くん、私じゃだめかな」
まただ、この体質は本当に厄介だ。
「明、私と付き合わないか?」
いい加減にしてくれよ、本当に。
俺は関わった異性に、 必ず恋愛感情を持たれてしまう、 謎の体質を持っている。
魔法使いの家系であるという以外、 なんてことない普通の高校生だというのに。
美雨
妹の美雨が、 俺を一生懸命追いかけている。
カバンの中を注意深く確認していないから、 この展開はあれかもしれない。
明
美雨
妹からの手作り弁当。
可愛く健気な美雨は、 俺に好意を寄せている。
明
美雨
美雨は両腕を広げて立ち尽くしている。
明
美雨
どこの兄妹がそんなことするんだ。
明
美雨
俺が頭を撫でようとすると、 美雨はその手をはねのけた。
明
美雨
魔法で体質を相殺する技。
相手の頭に触れさえすれば魔法がかけられるのに、 魔法の存在を知っている美雨はことごとく阻止してくる。
明
美雨
美雨は事あるごとに、 理由をつけて学校に行こうとしない。
両親は甘やかしてばかりだ。
明
美雨
ああ、本当にしつこい奴だ。
明
美雨
そう言って美雨は、 走って家に帰っていった。
一日の始まりは大体こうだ。
もちろん、これだけではない。
私立風雷高校、 勉強と部活の両立がモットーの進学校だ。
希来里
明
俺の幼馴染の希来里だ。
人生全てがモテ期のくせに、 俺にべたべたで離れようとしない。
希来里
明
俺はサッカー部、 希来里は吹奏楽部に所属している。
かなりの仕事量で忙しいだろうに、 俺の帰宅時間に合わせようとしてくる。
希来里
明
俺と違って才能があり、 努力もできる、 そんな奴をマネージャにさせるものか。
希来里
明
この質問をすると、 毎回同じ答えが返ってくる。
希来里
明
幼稚園の頃から変わっていない。
そりゃ内心は嬉しいけれど、 俺は絶対に、 ありきたりなラブコメ展開に、 巻き込まれたくないのだ。
希来里
明
こんな調子で対応するのが大変だ。
俺の体質が年々強さを増し、 今では関わりの浅い人でも、 俺に好意を寄せるようになってきた。
明
プリントが廊下に散らばっている。
見過ごすことは出来ない。
女子生徒
明
女子生徒
名前も知らない、 なんなら学年さえ違うかもしれない。
明
女子生徒
絶対にそうはならないだろ。
これだからこの体質は……。
明
俺はそっと女子生徒の頭を撫でる。
撫でたいから撫でているわけではない。
こうしないと魔法がかからないのだ。
女子生徒
明
また一人、 俺の追っかけになるところだった。
一息ついたのも束の間、 開いていた窓から強風が吹き、 プリントが宙に舞う。
女子生徒
プリントを掴もうとした女子生徒は、 窓の外に身を乗り出して、 今にも落ちそうになっている。
明
プリントも女子生徒も、 外に落ちることはなかった。
ただ、一つだけ最悪なことがある。
女子生徒
明
女子生徒
俺の魔法は再び触れるとすぐ解ける。
しかもしばらく、 同じ相手に同じ魔法は使えない。
こうなったら選択肢は一つ。
明
女子生徒
こういう時は逃げるに限る。
これ以上対象者を増やさないために、 日々奮闘しているのだが、 注意しなければいけない人物が、 まだ一人いる。
岸川先生
担任の岸川先生だ。
担当教科は保健体育、 女子バスケ部の顧問でもある。
今日は保健のテストの返却日、 俺の番がまわってきた。
岸川先生
明
岸川先生
明
岸川先生はこんな感じで、 ナチュラルにセクハラをしてくる。
しかも俺にだけ言ってくるという点が、 かなり面倒くさい。
岸川先生
明
岸川先生
明
本当に何か狙っていそうで怖い。
岸川先生
明
岸川先生
明
やっとテストを返してもらえた俺は、 速やかに自分の席に戻った。
こんな調子で、 忙しいラブコメ展開満載の、 一日が過ぎていく。
これを回避するために、 俺は魔法で相殺し続けているのだが、 どうも俺には、 魔法使いの才能はないらしい。
魔法に関しては普通以下の、 役に立たないレベルだ。
美雨
明
美雨
明
美雨
それは誤解だ。
かろうじて基礎的な魔法は使える。
俺の今の目標は、 この体質を完全に消し去る魔法を、 使えるようになることだ。
明
美雨
俺たち父子より、 美雨たち母子のほうが能力が高い。
明
美雨
言っていることは事実だから、 反論は出来ない。
明
美雨
明
美雨
くそ、後悔させてやるからな……!
明
美雨
俺は美雨の頭に手を乗せ、 心の中で魔法を唱える。
明
美雨
無意識のうちに魔法を解いてやがる。
次はもう少し集中して……。
明
美雨
俺は再び美雨の頭を撫でる。
美雨の魔法耐性は凄まじい、 手がはじかれそうだ。
明
美雨
解除が早すぎる。
やばい、もう魔力が……。
明
美雨
言われるのは悔しいが仕方ない。
明
美雨
きっと美雨は美雨なりに、 苦労しているのだと思う。
明
美雨
明
美雨
ケチとかの話ではない。
俺の気持ちも考えてくれ。
明
美雨
確かに考えたこともなかった。
俺は結局、誰と結ばれたいのだろう。
明
美雨
明
美雨
やけに意味深な感じだ。
明
俺のラブコメ展開回避はまだまだ続く。