信太郎
秀平
信太郎
廊下で何やら話し込んでいた信太郎が不意に言葉を切った。 信太郎の視線の先には
上靴を引きずるようにして歩く吉田 響の姿があった。 吉田 響は当然のように彼らの元に歩を進める。
吉田 響
信太郎
秀平
秀平は目も合わさず呟くと、さっと踵を返した。 信太郎達もそれに続く。
吉田 響
吉田 響の笑みがひきつった。
吉田 響
しかし取り巻き達は答えずにそれぞれのクラスに入って行った。
女子大生と男子中学生が交際している話 シーズン2 第6章「受験」編 第14話
鳴沢 柚月
山崎 孝太
山崎 孝太
鳴沢 柚月
山崎 孝太
鳴沢 柚月
3月と言ってもまだマフラーは手離せない。
__この辺りでは一番の進学校の、蒼陽高校校門前では伝統になっているのか、様々な制服を来た生徒が受験生に声援を送っていた。
その数の多さと視線に一瞬気圧されそうになる。 僕はマフラーを口元まで引き上げた。
今日は蒼陽高校の一般入試だ。
「秀平ーー、篤ぃー 頑張れよぉー」
集団の中に、やはり聞き慣れた声があった。 僕が彼らの前を通りすぎると、嘲笑が幾つかぶつかった。
でも僕にも「頑張れ」と言ってくれる人はいる。 昨日そんなラインがいっぱい届いたし、のぞみさんとは電話もした。
山崎 朋美
鳴沢 柚月
山崎 朋美
山崎 朋美
鳴沢 柚月
孝太くんのお姉さんに会釈して、その場をあとにしようと体の向きを変えると
その拍子に後ろの人とぶつかってしまった。 苛立たし気な舌打ちが落ちて来る。
秀平
吉田に最も忠実な取り巻きである秀平は大袈裟にマフラーを翻して歩いて行った。 後ろを歩く三津屋 篤も僕とは一切目を合わせない。
鳴沢 柚月
___大丈夫。怖くない。
僕は1人じゃない。
~jealousy~ and…
嫌な物を見た。
__今日は蒼陽高校の一般入試だ。 蒼陽高校の校門をくぐると、鳴沢 柚月がいた。
蒼陽高生と親し気に話している。「頑張ってね」とか言われてる。 はにかみながら頷く鳴沢柚月。ムカつく。
___体育館で注意事項等聞いた後、 会場となる教室が発表された。
僕は鳴沢柚月と一緒だった。 秀平が「ドンマイ」と言って来たが、もうそこはどうでもいい。
きっと鳴沢柚月は蒼陽高校に合格する。僕もよっぽどのヘマをしなかったら安全圏の成績だ。 ___僕は受け入れた。
高校でも鳴沢柚月と戦う運命(さだめ)を。 僕は高校でも「一番」になる。
僕なら出来る。 僕は一度 鳴沢柚月より上回ったのだから。
英単語帳の内容を再び頭に叩き込んでいると、机が揺れた。 誰かが僕の机の足にぶつかったらしい。
ぶつかった人は鬼気迫る形相で参考書を眺めている。 ぶつかった事に気づいていないのか、その人はそのまま歩いて行った。
机上に置いた僕の鉛筆はぶつかった振動で数本 床に落ちた。 胸中で舌打ちしながら、鉛筆を拾うため腰を上げる。
床に散らばった鉛筆を回収していると、視界に別の手が映った。 その手は素早く残りの鉛筆を集めると、そっと僕に差し出した。
三津屋 篤
視線を上げた先にいたのは、 鳴沢柚月だった。
貼り付けた優等生の仮面が一瞬で剥がれ落ちるのが分かった。
次の言葉が出て来ない僕などお構い無しで、鳴沢柚月は いつものおどおどした表情で会釈すると自席に戻って行った。
三津屋 篤
___なんだこれ。
僕は「一番」になりたいのに なんだこれ。
これじゃまるで……
秀平
……確かに大問4の二次関数は難しかった。 でも手応えはあった。たぶん受かるだろう。
それより朝の 鉛筆回収を手伝った鳴沢柚月が頭から離れない。
秀平
独り善がりの善意? いや、そんな感じじゃなかった。
秀平
施し?憐れみ? 有り得ない。僕は全てにおいて鳴沢柚月より上回った。
秀平
三津屋 篤
僕は…
僕は
信太郎
秀平
信太郎
昼休み終了間際の廊下。 片隅で今日も取り巻き達が何やら話し込んでいた。
頭の後ろで両手を組んでいた信太郎がもたれていた窓から背を離した。
信太郎
秀平
信太郎
___信太郎の言葉が途切れた。
吉田 響
秀平の背後に、吉田 響が立っていた。 取り巻き達の顔が一斉にひきつる。
吉田 響
信太郎
吉田 響
___昼休み終了を告げる予鈴が鳴った。 取り巻き達がどこか安堵の表情を浮かべながらそれぞれの教室に向かおうと____…
吉田 響
___しかし吉田 響は制服のポケットから「それ」を取り出して遮った。 教室に戻りかけていた生徒達が一斉に吉田 響を見やる。
殺人犯に邂逅したかのように青ざめた顔の取り巻き達にカッターの刃を突き付けながら、吉田 響は口の端を吊り上げた。
吉田 響
吉田 響
教室の窓やドアから、野次馬と化した たくさんの生徒達が吉田 響達のやり取りを静観していた。 その中には三津屋 篤の姿もある。
__今まで沈黙を保っていた秀平が1歩前に出た。
秀平
吉田 響
秀平
吉田 響
吉田 響の口元から笑みが消えた。 浅い呼吸を繰り返しながら、カッターの刀身をゆっくり伸ばして行く。
吉田 響
吉田 響
吉田 響
秀平
秀平
カッターの刃先が止まった。
吉田 響
秀平
カッターを握る吉田 響の手が震えている。
秀平
吉田 響の呼吸はどんどん浅く、早くなっていく____
秀平
悲鳴。
信太郎
口元を掌で覆う秀平。 その掌の隙間から零れ落ちる血。
吉田 響
秀平の襟首を掴み窓に押さえつける吉田 響____の持つカッターの刃から滴り落ちる血。
吉田 響
秀平
秀平
吉田 響
吉田 響
駆け付けた教師が吉田 響を引き剥がした。 放り出される血の付いたカッター。 保健室に向かう取り巻き達。
5時間目どころではなかった。 __生徒指導室に連れて行かれる吉田 響の叫声が廊下に響き渡る。
吉田 響
吉田 響
それはまるで子供の泣き声のような___
「うちの子が何をしたって言うんですか! 一生傷が残ったらどう責任取ってくれるんですか!!
前から思ってたけど吉田さんちょっと おかしいんじゃないですか?どう言う教育なさってるんですか?
とにかくお宅の子供が頭を下げに来るまでは私達に近づかないでください!!」
吉田 母
母親は 吉田 響の部屋のドアに拳を打ち付けた。
吉田 母
吉田 優一
吉田 母
吉田 母
部屋の中。 吉田 響は布団を頭まで被ってベッドに横たわっていた。
__それでも母親の金切り声は侵入して来た。
吉田 母
嘲笑。
山崎 孝太
鳴沢 柚月
山崎 孝太
鳴沢 柚月
山崎 孝太
鳴沢 柚月
山崎 孝太
鳴沢 柚月
山崎 孝太
鳴沢 柚月
山崎 孝太
鳴沢 柚月
山崎 孝太
孝太くんはチラリと廊下に視線をやった。
3年の教室棟の、とある教室にはちょっとした人だかりが出来ていた。
山崎 孝太
山崎 孝太
山崎 孝太
__人だかりを、1人の男子生徒が手刀をかざしながらかき分ける。信太郎だ。 信太郎の後ろには、バケツを持った秀平。
山崎 孝太
山崎 孝太
秀平が 教室内にいる とある人物の頭上で、バケツをひっくり返した。
どよめき。 信太郎の指笛。
山崎 孝太
「とある人物」の足元に広がる水溜まり。
長い前髪から滴り落ちる水滴。
山崎 孝太
山崎 孝太
___3年の教室棟の、とある教室にはちょっとした人だかりが出来ていた。
彼らの視線の先には、頭から水を被った生徒と
黒板いっぱいに踊る文字_____
女子大生と男子中学生が交際している話 シーズン2 第6章「受験」編
End
お知らせ!!
次回更新はお休みします🙇
現在開かれている 「GONZO×テラーノベル アニメ原案コンテスト」の執筆に集中するためです🙇
次回更新は 11月(予定)!!
🙇🙇🙇🙇 次回から「5,6,7章構成」最後の1つ、「卒業」編です。 予告↓
読んでくださりありがとうございました❗
コメント
1件
これにて長かった「受験」編も完結で……はい1ヶ月間を空ける事になってごめんなさい🙇 読んでくださりありがとうございました❗