コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
主〜
主〜
主〜
主〜
主〜
学年末テストも無事に終わり,一学年も残りわずかになった三月半ば。
中野律花
今日,十三日は,ひよりの十六歳の誕生日だった。
朝の教室で,律花が早速渡してくれたプレゼントは,
携帯電話につけるストラップ。
白い恋人ネコのぬいぐるみと,ピンクのリボンがぶら下がっている。
西山ひより
ぷいぷいはひよりの飼っているネコの名前である。
中野律花
5月生まれの律花はもうとっくに十六歳で、
あと2ヶ月ほどで17になってしまうけど、
同い年でいられる間は,2人ともちょっと嬉しい。
夏輝
美沙
夏輝と美沙も,他のクラスメート達も,いっせいに拍手してくれた。
クラスメート
西山ひより
西山ひより
人見知りのせいで,幼なじみの律花以外とはなかなかうちとけられず、
中学時代はあまり友達がいなかったから、こういうのってちょっと緊張する。
???
ぼんやりした声と一緒に大きな影が隣の席に現れた。
それは_______________
結心だ。
美沙
美沙に教えられて,結心はひよりをふり返る。
広瀬結心
にっこり笑ってくれた。
西山ひより
美沙
美沙がカバンからカメラを取り出して、頭の上にかかげた。
美沙
広瀬結心
結心が美沙からカメラを受け取る。
感激しているひよりの周りを,律花と夏輝,それに雪乃が囲んだ。
広瀬結心
西山ひより
緊張して顔がこわばる。
広瀬結心
バレバレだった。みんなが笑う。
広瀬結心
結心も言う。
そんなに優しく言われると,余計緊張してしまうような。
広瀬結心
にー!とピースサインでみんなが笑う。
ひよりもつられてやっと笑顔になる。
西山ひより
夏輝
夏輝がカメラに手を伸ばす。
美沙
美沙もパチンと手を叩いた。
ひよりはびっくりして目を見開く。
美沙
広瀬結心
結心も笑顔でOKだが,本当にいいのだろうか?
クラスメート
クラスメート
クラスメート
ひよりが焦っているうちに,たくさんのクラスメートがゾロゾロと見物にやってきて,二人のまわりには人だかりができた。
平井純平
結心と仲がいい平井純平が,黒板にチョークで
190センチ↓ 140センチ↓
と書きつける。
広瀬結心
結心が笑いながら,ひよりを黒板の前に連れて行き、
矢印の前に二人で立った。
西山ひより
思い出す。
律花以外の友達を作れなかった中学時代のこと。
高校の入学式の前日に交通事故にあい、
登校するのがどんどん怖くなっていったこと。
それなのに_______________
今はこんなに,
こんなに幸せ。
美沙
こんなに楽しいなら_______________
もっと早く来れば良かった
今度は自然に,ひよりもにっこり笑うことができる。
美沙のカメラや,みんなのシャッター音がいっせいに響いた。
けれども_______________
それからほんの数日で,三学期はおしまいだった。
講堂での始業式がすみ、教室に戻って成績表を受け取れば,もう本当に終わり
三谷美代子先生
三谷先生が泣きながら最後のあいさつをしている。
みんなそれを,おおげさだと笑っているけど,
ひよりは一緒に泣きたい気分だった。
西山ひより
2年生になれば______クラス替え。
ちらり、と,隣の結心を見ると,
最後だというのに,相変わらず、
机につっぷして、いびきをかいている。
西山ひより
気持ちよさそうな結心の寝顔を見るのも,もうこれで_________。
西山ひより
目をつぶっていると少し子供っぽく見える顔。
よく寝癖ではねている黒髪。
広瀬結心
じっと見つめていると,結心がいたずらっぽい笑いを浮かべて顔を上げた。
西山ひより
一気に真っ赤になってあたふたするひよりを尻目に、
結心はいきなり立ち上がり、
大きくのびをした。
広瀬結心
まだ泣いている三谷先生をからかっていたクラスメート達が、
いっせいにふり返り,どこに?とたずねる。
結心は人差し指をピッと立てて,ポーズを決めた。
広瀬結心
「クラス最後の打ちあげっ!!」
……と,いうわけで。
1年4組は,みんなでゾロゾロと駅の繁華街(はんかがい)へ向かっていた。
平日の昼間なのに,駅前は結構な人だった。
買い物客に交じって,いろいろな学校の制服が行き交っている。
どこも今日が始業式なのだろう。
中野律花
さっきまで隣を歩いてたはずのひよりの姿が見えなくなって,
律花と美沙はきょろきょろとあたりを見まわす。
西山ひより
なんと,駅の改札から出てきた人の波にさからえず,
まきこまれてはるか後ろへ流されてしまっていた。
2人はあわててかけもどり,ひよりの手を取って連れ戻す。
西山ひより
半泣きのひよりに,美沙が言った
美沙
西山ひより
人ごみの中でも,頭ひとつ大きい結心はとても目立つ。
たしかに,結心にくっついていれば、
もうはぐれる事は無いだろうけど。
広瀬結心
結心の方はノリノリで,まるで
犬を呼ぶようにその場にかがむと両手を広げた。
とまどっているひよりを,
美沙が思いきりつきとばす。
ドーン,とひよりは結心の胸にぶつかってしまった。
西山ひより
あわててひよりは飛び離れたが、
なぜか結心は何も言わなかった。
_________なんの反応も返って来ない。
西山ひより
中野律花
美沙
西山ひより
結心は,もうひよりの方を見ていなかった。
目を見開いて,遠くを見つめている。
そこに立っていたのは__________。
長い栗色の髪。
水色のふちどりのついた上品なセーラー服を着た、
長い栗色の髪の少女。
西山ひより
結心の幼なじみの,富永妃だった。
あれが結心のウワサの
「本命」か、と、
ざわめくクラスメート達を気にもとめず、
妃はゆっくりと,結心に歩み寄ってきた。
富永妃
広瀬結心
西山ひより
家が隣の幼なじみのはずなのに,なんだか
よそよそしくあいさつする二人のに、ひよりは驚く。
西山ひより
バレンタインデーの時,ひよりが預かった妃のチョコレート。
結心が,妃に返しておくと言って持ち帰ったけど、
あの後なにかあったのだろうか。
富永妃
広瀬結心
興味しんしんで取りまいていたクラスメート達は、
結心に言われて、しぶしぶその場を離れていく。
ひよりも夏輝に呼ばれて歩き出す。
富永妃
ところがそれを呼び止めたのは妃だった。
富永妃
富永妃
さっきの場所から少し歩いたコンビニエンストアの前で、
ひよりと妃は向かい合っていた。
結心はコンビニに入ってしまったので,今は二人きりだ。
富永妃
頭を下げる妃に,ひよりはあわてて両手を振る。
西山ひより
富永妃
西山ひより
妃は寂しそうに笑った。
富永妃
違う。そんなことない。
ひよりは知っている。
結心が妃の事を話す時,とても優しい顔をするのを。
ひよりが妃を助けた時、
まるで自分のことのようにお礼を言ったのを。
妃は,やっぱり,結心の特別なのだと言うことを。
それを口に出せないひよりに,妃は続ける。
富永妃
顔をあげて,ひよりをまっすぐに見た。
富永妃
「ほかの人には渡さない」
もしかして「話がある」って言うのは,このことだったのだろうか。
これは……もしかして,,ライバル宣言?
びっくりして言葉を失い、
立ち尽くしているひよりを、
妃はしばらくじっと見つめていたが,やがて
もう話は終わったとばかりに,コンビニの方をふり返った。
ガラスごしに,雑誌を立ち読みしている結心に手を振る。
西山ひより
結心が出てくる前に,ひよりはおもいきって妃に声をかけた。
西山ひより
妃にライバルと思われるような自分だとは,全然思えないけれど
__________でも。
西山ひより
「私も同じです」
妃は驚いたような顔をしたあと、
なぜかにっこりと笑い_______________
いきなりひよりを抱きしめた。
ひよりもびっくりしたが,ちょうどコンビニから出てきた
結心も変な顔をしている。
広瀬結心
富永妃
妃は楽しそうに笑うと、
2人に「またね」と手をふって,去っていってしまった。
広瀬結心
結心は,訳がわからず,きょとんとしている。
西山ひより
三谷美代子先生
カラオケパーティは,三谷先生のあいさつから始まった。
三谷美代子先生
だが,それを聞いている人は誰もいなかった。
運ばれてきた飲み物で,あっちこっちのグループが勝手に乾杯を始めている。
中野律花
1番すみのソファーに座り、
オレンジジュースを手に取ったひよりに、
律花が心配そうに尋ねた。
西山ひより
心配をかけないように,詳しいことは言わなかった。
律花はまだ何か聞きたそうだったが,
その時,誰かが入れた1曲目のイントロが
大音量で部屋に流れ始める。
クラスメート
マイクを渡された結心が歌い始めた。
最初の曲にぴったりの,大ヒットしたノリのいいJポップ。
クラスメート
みんなの手拍子で会場は一気に盛り上がる。
次々にみんなが曲を入れる。
タンバリンやマラカスの音。
あいの手。
笑い声。
注文した食べ物がどんどん届く。
ピザやフライドポテトの香ばしい匂いが、
部屋の中にただよい、
お菓子を山盛りにした,お皿がテーブルからテーブルへ受け渡されていく。
美沙
向かいの席から,美沙が差し出してくれたのは、
誕生日に教室で撮った写真だった。
ひよりを囲んでみんなが笑っている写真。それから……。
美沙
ひよりと結心が,黒板の前で並んで撮った
「身長差50センチ」の記念写真。
西山ひより
ひよりはその写真を,大事に生徒手帳にはさんだ。
ミラーボールがキラキラ回る下で,結心がパンクロックを熱唱している。
わざと作ったダミ声でもやっぱりうまい。
西山ひより
ひよりは,しみじみと胸の中でつぶやく。
西山ひより
マイクは途切れることなく,みんなの間を回っていく。
律花の可愛い歌声。
学級長、田中はまさかの英語のロック。
発音完璧。でも直立不動。
なんと,ジャイアンばりの音痴だった夏輝。
西山ひより
手が痛くなるほど拍手をして、
お腹いっぱい食べて、
声を出して笑って。
打ちあげパーティの数時間は,あっという間にすぎていった。
フロントからインターホンで、あと10分です,の連絡が入る。
延長しようと声もあったが、
帰りが遅くなるからダメ、と三谷先生が止めている。
クラスメート
美沙
はっと気づいたように美沙が叫んだ。
美沙
マイクが回ってきてしまった。
ひよりの頭の中は一瞬で真っ白になる。
人見知りのひよりは,人前で歌うなんて考えたこともなかった。
友達とカラオケに来たのも実は今日が初めて。
歌える曲も何もない。
西山ひより
マイクを手にしたまま,真っ青になって黙り込んだひよりに、
みんなも思わずシーンとなった。
さりげなくひよりにマイクが回らないように気を使っていた律花も、
突然のことでオロオロしている。
気まずい空気がカラオケボックスに広がる。
ミラーボールがむなしく光っている。
クラスメート
誰かが流れを変えようと明るく言った。
広瀬結心
任せたまえ,と、田中がリモコンで曲を選び始めたが、
音が途切れた大部屋は、どうにも白けた雰囲気になってしまった。
西山ひより
ぎゅっとマイクを握りしめる。
そうだ。歌うのは無理だけど________でも。
ひよりは,靴をぬいで,ソファーの上に立ち上がった。
中野律花
律花は驚いて目を見開く。
ひよりは,マイクに向かってふるえる声で話し始めた。
西山ひより
スピーカーから流れ出したその声に,みんなびっくりしてひよりを見た。
西山ひより
あははは,知ってるよー,と笑い声がもれる。
西山ひより
みんなの笑いは,ひよりの真剣な声で,少しずつ小さくなった。
西山ひより
大きく息をすいこんだ
「このクラスにいれてよかったです。ありがとうございましたっ」
ぺこり,と頭をさげる。
部屋の中に,わあっ,とあたたかい空気が満ちた。
拍手がわきおこり,みんな口々に,ひよりとの思い出を話し出す。
クラスメート
クラスメート
クラスメート
クラスメート
クラスメート
またソファーの上に立ったまま,ひよりは涙ぐんだ。
本当に短い間だったけど,このクラスにいられてよかった。
こうして、みんなにちゃんと,お礼が言えてよかった。
広瀬結心
結心がテーブルごしに手を伸ばして,ひよりの頭をぽんっ,と叩いた。
律花も抱きついてくる。ひよりもついに泣き出してしまった。
広瀬結心
結心が,ひよりから受け取ったマイクを構えて,モニターの方へ向き直る。
こうなったら、みんなで最後に,バーンと盛り上がって終わりたい。
学級長が選曲した
「みんなが知ってる曲」が流れ始めた____の、だが……。
広瀬結心
この季節,テレビのCMやスーパーのBGM繰り返し流されている童謡、
『1年生になったら』だ!!
広瀬結心
平井純平
大爆笑になった。泣いていたひよりも,もうそれどころじゃなく、
律花や夏輝達と顔を見合わせて大笑いしてしまう。
やけくそ気味の結心が、マイクを構えて歌い出す。
そしてみんなで心をこめて、
『1年生になったら』を、
大きな声で合唱したのだった_______________。
主〜
主〜
主〜
主〜
『前途多難な新学期?!』
主〜