管理人
黒髪の女性が睨む先には1人のヒト。
所有者
睨まれているヒトは特に気にも止めずに笑うばかり。
────そんなヒトに痺れを切らしたのか、彼女は手を振り上げる。
パァン
乾いた音が鳴り響き、茶髪のヒトの頬が赤くなる。
所有者
…痛いじゃないか。
少し、驚いたような声色でヒトは喋る。
管理人
痛い、どころの話じゃないでしょ!!!
怒りを露にした声で彼女は叫ぶ。
管理人
■■様がお作りになられた台本に逆らうだなんて!!!
何様のつもり!?
何様のつもり!?
管理人
あんた、何したか分かっているの!?
管理人
なんであのお方の作品を汚すようなことをするん!?
管理人
台本は守れ、とあれほど言ったやろが!?
彼女は口調がどんどん崩れ、取り乱していく。
管理人
あたしが消えたらどうするの!!!
あたしじゃないならあの子達が1人減るかもしれないでしょうが!!!!
あたしじゃないならあの子達が1人減るかもしれないでしょうが!!!!
管理人
なんとか言いなさい、■■■!
その言葉にぴくり、と反応する。
所有者
…僕を、■■■と呼ぶな!!!
こちらも怒りを露にした声で叫ぶ。
所有者
この…
所有者
──■■■が!!!
その言葉を聞き、明らかに動揺する彼女。
管理人
…やめなさい。
違う、違うから、そうじゃないの。
違う、違うから、そうじゃないの。
混乱が全面に押し出された声色で、たどたどしく言う。
管理人
─あたし、は■■■として生きるの、辞めたの。
管理人
もう、やめた。
昔の、あたしはどこにも…いないから。
昔の、あたしはどこにも…いないから。
そこで言葉を切り、彼女は迷うような素振りを見せる。
管理人
管理人
昔の、馬鹿なあたしは、死んだはずなの。
そう言い、顔を伏せる。
それを聞いたヒトも静かに言葉を溢す。
所有者
…僕だってそうだ。
僕だって、辞めた。
僕だって、辞めた。
所有者
それに、あの方もお辞めになられた。
所有者
─だから、僕も■■■じゃない。
所有者
だけど、あのときの馬鹿な僕はまだ、生きてる。
…縋るしか、なかった。
…縋るしか、なかった。
ヒトは目を伏せ、自らを嘲笑している。
そのまま、それに、とつけたした。
所有者
…それに、あの方も■■であることはお辞めになられたんだ。
所有者
あの方は確かに■■としての…
そこでヒトは言い淀む。
所有者
──神としての、力があった。
そこまで言うと彼女はびくり、と体を震わせ、顔をあげる。
所有者
故に、あの方は自分を捨てれない。
髪型も変え、性も騙るのをお辞めになられたが…捨てきることができておりませぬ。
髪型も変え、性も騙るのをお辞めになられたが…捨てきることができておりませぬ。
所有者
…ただ、そのお陰で僕らはこの世界で息をできるのです。
管理人
…えぇ、そうでしたね。
管理人
…申し訳ありません。
はっとしたように彼女は言う。
そこからはただ、気まずい沈黙がその場を支配した。
その沈黙に耐えられなくなったのか、黒髪の方が動いた。
管理人
…あたしは、■■■様に赦しを乞いに行きます。
目を伏せつつ、彼女は言った。
管理人
あなたは■■■様の瞳に映らないから、あたしが代わりに行きます。
所有者
…感謝します。
その言葉を聞ききり、彼女は赦しを乞うためにゆっくりと歩き始めた。







