輝かせるもの

阿部のマンション

その後どうやってここまで来たのかは よく覚えていない 地面に足がくっついて離れなかった

守ると決めた彼女は とっくに自分を犠牲にして 俺を守って 俺の前から消えた

阿部ちゃんには全部話した 電話越しで号泣する俺を心配して 飛んで迎えに来てくれたらしい

阿部は静かに 翔太の話を聞く

肩を震わせて子供のように 泣きじゃくる翔太の背中を 阿部は優しく撫でる

静かな阿部ちゃんの部屋のリビングに 翔太の咽び泣く声だけが響いた

AM8：００

どんなに辛いことがあっても 朝はやってくる 最悪なことに１０時からライブのリハだ！

阿部ちゃんの言う通りだと思った 翠のためにも ここで立ち止まってるわけには いかないんだ！

泣きながら無理やり口におにぎりを押し込む翔太を 優しい笑顔で見守る

その後翔太は前のように 精力的に仕事をこなしていた

メンバーが心配するほどに…

無理しているように見えた

会うたびに　元々華奢な体がさらに細くなり 顔色も悪く おまけに泣き腫らした目をして 更にみんなを心配させた

LIVEまであと１週間と迫った

最近やたらみんなが俺を食事に誘ってくる 食欲ないんだけど…

ほら　まただ

こんな具合に毎日誰かが俺をご飯へ 誘い込む おかげで　倒れずにすんでる

ライブ当日

さっきから何やら俺抜きで ヒソヒソと話してる

なんでウザいかって？ さっきから康二がﾁﾗﾁﾗこっちを 見てくるからだ！

午後からのライブにむけ 集中したかった俺は イヤホンをして　外の音を シャットダウンした

メンバーのお節介も功を奏し 翔太は前より元気を取り戻していた

時々トイレで啜り泣く声が 聞こえたが 皆んな

気づかないふりをしてくれた

メンバーにそう言うと 裏口から外へ出る

大きく背伸びする

すげぇ〜青空

久々に空を眺めてる

繋がってんだよな空は 翠のいる場所も晴れてっかな？

毎日のInstagramのストーリー 青空の写真を載せる

さぁライブの始まりだ！ 俺は両手でバチンと頬を たたいた