廃病院前
雪城葵
着いたね。今は何時?
東雲薫
今は、20時16分よ。
雪城葵
犯行はいずれも21時〜23時に行われていたから今回もそうだと思う。
望月雪翔
ということは今ここに犯人がいるのか?
雪城葵
ううん、これから来るよ。
雪城葵
さぁ、ベールの下を暴く時です。
廃病院内
元島久美
ねぇ、こんなところに連れてきてなんのつもり?あんたがいい儲け話があるからって言ってたのに今更なしとか言わないでよ。
五月茨
そんなこと言いませんよ。そういえば五月百合香って子知ってます?
元島久美
百合香?どっかで聞いたことあった気がする…ってあ!あぁ〜あのちょっと可愛がったら死んだあいつね〜。もしかしてあんた知り合いだったの?
五月茨
えぇ、知ってるも何も百合香は私の妹でしたから。
元島久美
うっそ〜マジでぇ!?あんな弱っちくてトロイやつが妹とかお姉さんかわいそー。ってその百合香のこと今更言ってきてなに?謝って欲しいとか?
元島久美
ごめんなさーい。はい、これでいい?私忙しいのよ。なんか話聞く気失せちゃった。私帰るわ。
五月茨
…んでこんな奴らが…
元島久美
ん?なに?言いたいことあんならはっきり言えよ!!妹がグズなら姉も大概か。あ〜ウザイ!
五月茨
なんであんたみたいなのが生きてんのよ!!お前らがいなければ百合香は死ぬことは無かったのに!!お前もあの3人みたいに殺してやるー!!
元島久美
きゃーこっち来ないでよー!!
犯人が元島を襲った瞬間雪翔は犯人の腕を掴んで制圧した。
望月雪翔
はーい、そこまででーす。犯人確保ー!
五月茨
ッいつの間に!?離せ、あいつは生かしていてはいけないのよ!!
元島久美
あはは助かった。やっぱ私って運いいー。
雪城葵
初めまして元島久美さん、五月茨さん。
私はネスト所属、序列82位スパロウメモリーの探偵、雪城葵です。
私はネスト所属、序列82位スパロウメモリーの探偵、雪城葵です。
雪城葵
この悲しい連続殺人事件を解決しに来ました。
東雲薫
私は記録者の東雲薫です。
望月雪翔
僕は同じく記録者の望月雪翔です。
雪城葵
五月茨さん、貴方は飯田陣平、桃園夏帆、安田舞の3名を殺害しましたね。動機は、妹の百合香さんの敵討ちですよね。だから黒い百合の花を死体の上に置いたんですよね。
雪城葵
殺害された3名と元島さんは、五月百合香さんを学生時代、虐めていましたよね。貴女方の虐めを苦に百合香さんは自殺してしまった。百合香さんが亡くなったあとに虐めていた4人は茨さんとそのご両親に謝りに来たことによって一度終結しました。ですが、つい最近茨さんは見てしまったんですね。当時の4人のうちの誰かが、虐めをしている現場を…ちがいますか?
五月茨
合ってるわ。殺した3人とここにいる元島含めて誰も反省してなかった。これじゃあ百合香が報われない…だから私が百合香の代わりにアイツらに正義の鉄槌を下したのよ!!
東雲薫
あの〜正義っていうのは今の貴方が使っていい言葉じゃないと思います。百合香さんが自殺してしまった件は法では裁けませんが、大人になった今そんな事をすれば恐喝罪暴行罪等罪に問うことができるはずです。それにどんな理由があろうと人を殺してしまえばそれは悪になるんです。だからそんな人が正義を語るのは違うと思います。
五月茨
そうね。あなたの言う通りだわ。殺す以外の方法だってあったわ。でもね、警察に捕まったところで数年したら妹を殺したも同然のことをしたのに反省していないようなヤツらが野放しになるのよ。私はね、許せなかったの…だから直接手を下したのよ。確かに今の私は犯罪者だわ。でも殺したことを後悔してないわよ。
望月雪翔
うわ〜執念って怖いね〜。ん?でも今の話を聞くに証拠をあまり残さないなんてできるのかい?入念な準備している余裕なんてなかっただろうに。
雪城葵
それはきっと五月茨さんが復讐の機会をずっと待ってたからかもしれません。私は先程百合香さんの自殺の件が終結したと言いましたが、茨さんは許していなかったんですよね。あの日からずっと復讐する機会を伺っていたのでは無いでしょうか?
五月茨
そうよ。百合香が自殺してしまった時から準備はしていたわ。でも結局は見破られちゃって最後の1人を殺せなかった。私の復讐もここまでか…
犯人が諦め、表情が緩んだ時、葵は犯人に近づき、ひとつ聞いた。
雪城葵
五月茨さん、その御守り随分大切にしていますね。妹さんから貰ったとかですか?
五月茨
そうよ
雪城葵
あの、もし良ければ少しお借りできますか?
五月茨
別にいいわよ。どうせこのお守りも警察では没収されてしまうでしょうしね。
望月雪翔
葵ダメだよ。お願いやめてよ。そんなことしたら葵が…
雪城葵
ごめんね…でもこれはやらなきゃいけないことなの。最後の想いを伝えなくちゃだから…
雪翔の制止の言葉を振り切り、茨の了承を得てから葵はお守りに触った。
雪城葵
ありがとうございます。少し失礼しますね。
葵は少しの間お守りを手に取り、目を閉じていたが、少し悲しげな表情をしてお守りを返して言った。
雪城葵
ありがとうございました。お返ししますね。実は私は触れたものの記憶と触った人の想いを読み取ることができます。先程お守りをお借りさせていただいた時に百合香さんが貴方にお守りを渡した時、何を思っていたのかを読ませてもらいました。
五月茨
…嘘、そんなことができるの?それで百合香は最後に何を思っていたの?教えて!
雪城葵
はい、百合香さんは復讐なんてしないで貴方が幸せに生きてくれることを望んでいました。それと先に死ぬことについて謝ってもいました。
五月茨
そう…だったの…百合香ごめんなさい。私、私…百合香の望まないことをしちゃったわ。
葵が百合香の最後の想いを伝えると茨は涙を流しながら自分を責めた
東雲薫
確かに妹さんが望まないことをしてしまったけど、これから罪を償って、貴方なりの幸せを見つけたらいいんじゃないかしら?
五月茨
…そうね。ありがとう。妹が望んだ未来になるように頑張るわ。
東雲薫
じゃあ私が五月茨さんを警察まで送っていくわ。
望月雪翔
じゃあ僕は葵と先に事務所行って待ってるよ。
薫は茨を警察署に連れていこうと歩き出した時、葵がストップをかけた。
雪城葵
ちょっと待って、五月茨さん、最後に一つだけいいですか?
五月茨
なんでしょうか?
雪城葵
もし、出所後に困ったら私たちの事務所に来てください。そうしたら仕事の紹介とかならできますので。それでは、貴方が幸せになることを祈っています。
五月茨
ありがとう。探偵さん。
葵の言葉に茨は涙を流しながらお礼を告げ、薫に付き添われ、警察に行った。
元島久美
えーとあたしはもう行っていい?
望月雪翔
あ!そういえば居ましたね。事件も解決しましたし、帰ってもらって結構ですよ。
元島の問に雪翔が答えると元島は去っていった。
薫と茨と元島の姿が見えなくなると葵は雪翔に話しかけた。
雪城葵
雪翔お兄ちゃん、ごめんね。私の事心配してダメだって言ってくれたのに…
望月雪翔
いいよ。止めても聞かないことはわかってたしね。ほらおいで、もう立ってるのもというか意識を保ってるのもやっとなんじゃないのかい?
雪城葵
やっぱりわかる?
ごめんね。
ごめんね。
葵は雪翔に言われるまま雪翔の方に行き、大人しく抱っこされた。
望月雪翔
僕達にはね、でも普通の人なら分からないと思うよ。事務所に着いたら起こしてあげるから少し寝てなよ。
雪城葵
あり…がとう…お兄…ちゃん…
望月雪翔
全く無茶するんだから
雪翔は葵を横抱きにし、事務所へと向かった。