多良木音弥
多良木音弥
莉子の危機を察し 卯木家の前までやってきた音弥は 目の前の状況に困惑する
そこにはパトカーが停車しており 警官2名が必死に千寿に対して 外に出てくるように声かけをしていた
多良木音弥
音弥はゆっくりと 警官を見守る近隣住民に近づく
近隣住民
近隣住民
彼氏さん?
多良木音弥
多良木音弥
電話もらって
多良木音弥
近隣住民
近隣住民は音弥の言葉を遮るように 怒りに満ちた表情で詰め寄る
多良木音弥
近隣住民
近隣住民
私たち言ったわよね?
多良木音弥
音弥はうつむいたまま黙り込む
近隣住民
なってるのよ!!
多良木音弥
近隣住民
やめなさいよ!
近隣住民
筋違いでしょ?
近隣住民
近隣住民
莉子ちゃんは
近隣住民
かもしれないのよ?
近隣住民
近隣住民
近隣住民
いるかもしれないって
近隣住民
見て見ぬふり
してたじゃない!
近隣住民
莉子ちゃんに話を
聞いてあげていたら
近隣住民
なってなかった筈よ?
近隣住民
それは私たちよ!
近隣住民
近隣住民
近隣住民
恩人だって言うのに
多良木音弥
多良木音弥
気配りできていたら
多良木音弥
近隣住民
悪くないわ!
玄関先では警官が 千寿に呼びかけていた
警官
警官
警官
警官が懸命に呼びかけるが 千寿は一向に姿を現さない
多良木音弥
音弥は恐る恐る警官に近づく
警官
警官
音弥と面識の無い警官は 野次馬が入って来たと勘違い 音弥を追い返そうとする
多良木音弥
警官
近隣住民
彼氏さんなんです!
警官
多良木音弥
多良木音弥
感じでしょうか?
警官
ありません
多良木音弥
近隣住民
近隣住民
電話もらったそうなんです
警官
警官
多良木音弥
多良木音弥
通話が切れまして
多良木音弥
家まで来たんですけど
警官
多良木音弥
助けてって・・
警官
警官
警官
卯木莉子
卯木莉子
卯木千寿
卯木千寿
卯木莉子
卯木千寿
卯木莉子
卯木莉子
卯木千寿
卯木千寿
泣き落とせば
卯木千寿
思ってるんでしょ!?
卯木千寿
卯木莉子
くれないの!
卯木莉子
莉子さん!!
莉子さん!!
居るんでしょ!?
莉子さん!!
卯木莉子
卯木千寿
卯木莉子
来てくれたんだ!
卯木千寿
卯木千寿
卯木千寿
来たって言う訳?
卯木莉子
見てくれてるの!
卯木千寿
多良木音弥
多良木音弥
多良木音弥
多良木音弥
警官
警官
多良木音弥
居るんですよ!?
多良木音弥
言うんですか!?
多良木音弥
警官
卯木千寿
ドアの向こう側から 千寿の声が聞こえる
警官
多良木音弥
多良木音弥
ドア一枚隔てた向こう側に 千寿が居る事に 音弥は目を見開いて驚く
多良木音弥
多良木音弥
多良木音弥
卯木千寿
卯木千寿
多良木音弥なの?
多良木音弥
多良木音弥
多良木音弥
卯木千寿
千寿はそう言うと鍵を開け ドアを少しだけ開く
警官
そこに警官が突入しようとするが
卯木千寿
卯木千寿
莉子を殺すわよ!?
警官
そう言われてしまっては 警官はどうする事も出来ず 突入は諦めるしかなかった
卯木千寿
卯木千寿
入って来なさい
多良木音弥
いきなりの言葉に躊躇う音弥
卯木千寿
多良木音弥
音弥は深呼吸をする
多良木音弥
警官
多良木音弥
卯木千寿
から出なさい!
卯木千寿
警官
警官二人は千寿に 言われるがままに後退る
卯木千寿
多良木音弥
音弥は恐る恐る 家の中に入る
多良木音弥
卯木千寿
歩きなさい?
多良木音弥
音弥は言われるがまま 突き当たりまで歩く
卯木千寿
千寿は音弥の背中に 包丁を突きつけながら急かす
多良木音弥
卯木莉子
莉子は音弥の顔を見ると 涙を流しながら抱きつく
多良木音弥
多良木音弥
音弥は莉子が無事で居た事に安堵し 涙を流しながら抱きしめる
多良木音弥
多良木音弥
ばっかりに
卯木莉子
卯木莉子
悪い事してないでしよ?
多良木音弥
音弥は莉子のおでこに 優しく触れる
卯木莉子
多良木音弥
卯木千寿
出来たかしら?
卯木莉子
多良木音弥
酷い事して
多良木音弥
痛まないんですか!?
多良木音弥
卯木千寿
随分な物言いね?
多良木音弥
関係ありません!
卯木千寿
多良木音弥
答えてください!!
多良木音弥
産んだ娘なのに
多良木音弥
出来るんですか!?
卯木千寿
卯木千寿
世界でただ一人
親である私だけだからよ
多良木音弥
なんかじゃない!
多良木音弥
支配!独裁です!
卯木千寿
卯木千寿
多良木音弥
多良木音弥
多良木音弥
多良木音弥
笑ってられる筈です
卯木莉子
卯木千寿
あなたには分からないのよ
多良木音弥
多良木音弥
愛でやっていた
のかもしれません
多良木音弥
多良木音弥
そのまま受け取ってくれる
とは限りませんよね?
卯木千寿
多良木音弥
分かってる筈ですよね?
卯木千寿
音弥の言葉から 何かを察したのか
千寿は莉子に 声を張り上げて詰め寄る
卯木千寿
卯木千寿
話したの!?
卯木千寿
卯木莉子
莉子はうつむいたまま 口を開かない
多良木音弥
聞き出したんです
卯木莉子
卯木千寿
土足で踏み入るなんて
卯木千寿
多良木音弥
多良木音弥
多良木音弥
図々しいんでしょうか?
卯木千寿
多良木音弥
多良木音弥
愛してる筈ですよね?
卯木千寿
卯木千寿
状況が分かってない
みたいね?
多良木音弥
卯木千寿
受けてもらうために
卯木千寿
多良木音弥
卯木千寿
多良木音弥
していません
多良木音弥
させてもらってる
つもりですけど?
卯木千寿
卯木千寿
誘拐する事が健全?
多良木音弥
言わないでください
多良木音弥
護りたかった
多良木音弥
卯木莉子
ずっと沈黙していた莉子が口を開く
卯木莉子
誘拐された訳じゃ無い!
卯木莉子
卯木千寿
多良木音弥
卯木莉子
卯木莉子
卯木千寿
卯木莉子
卯木莉子
切り付けたり
卯木千寿
卯木莉子
卯木莉子
って思ってる・・
卯木千寿
卯木莉子
卯木莉子
って思った・・・
卯木千寿
卯木莉子
卯木莉子
愛してるって気持ちには
卯木莉子
多良木音弥
多良木音弥
卯木莉子
多良木音弥
卯木莉子
こんな言い方はしちゃ
いけないんだろうけど
卯木莉子
お母さんが好きなの
卯木千寿
卯木莉子
卯木莉子
卯木千寿
卯木莉子
離れたくないよ
卯木千寿
莉子は涙ながらに 胸の内を明かすが
卯木千寿
千寿には響かなかった
卯木莉子
卯木千寿
なんで逃げたのよ
卯木莉子
卯木千寿
卯木千寿
離れていった!
卯木千寿
卯木千寿
卯木莉子
くれないの!?
卯木莉子
多良木音弥
ないんですか!?
莉子の言葉を代弁するかのように 音弥が声を張り上げる
卯木千寿
多良木音弥
多良木音弥
逃げなかったんですよ?
卯木莉子
卯木莉子
言おうとした事が?)
卯木千寿
卯木千寿
卯木千寿
多良木音弥
感じたからでしょ?
多良木音弥
切り付けられたら
怖いですよ!
多良木音弥
逃げたくなりますよ!
卯木千寿
多良木音弥
多良木音弥
さんはお母さんの
元から離れなかった!
卯木千寿
多良木音弥
逃げる事だって出来た
多良木音弥
多良木音弥
だってあります!
多良木音弥
助けてくれる場所は
山ほどあります!
多良木音弥
命の危機を感じる
レベルじゃなきゃ
多良木音弥
離れなかったんです!
多良木音弥
分かりますか?
卯木千寿
多良木音弥
多良木音弥
愛しているからです!
卯木千寿
多良木音弥
多良木音弥
逃げてます・・
多良木音弥
自殺してるかも
しれません・・・
多良木音弥
卯木千寿
千寿の目から涙が溢れ出る
卯木千寿
卯木千寿
卯木千寿
言う通りよね・・
卯木莉子
卯木千寿
なんか見捨てて
卯木千寿
出来たのよね・・
卯木千寿
私を見捨てなかった
卯木千寿
卯木千寿
卯木千寿
何もかも奪って
卯木莉子
多良木音弥
卯木千寿
奪ってしまった
多良木音弥
音弥の頭の中には 莉子の笑顔が浮かんでいた
大量の料理を 満面の笑みで食す 莉子の笑顔が浮かんでいた
多良木音弥
多良木音弥
多良木音弥
好きなんですよ
卯木千寿
卯木莉子
不意に口を開く音弥に 莉子と千寿は首を傾げる
卯木千寿
多良木音弥
音弥は千寿にスマホを手渡す
そこには音弥の手料理を 満面の笑みで食す 莉子の写真が映し出されていた
卯木千寿
卯木千寿
千寿はその写真を 食い入るように見つめる
卯木莉子
卯木莉子
こんなの///
莉子は恥ずかしいのか 顔を赤く染める
多良木音弥
多良木音弥
卯木千寿
こんな笑顔──
卯木千寿
多良木音弥
この笑顔を見るのが
好きです
卯木千寿
私も好きだったな
卯木莉子
卯木千寿
世界一好き!
卯木千寿
言ってくれて
多良木音弥
卯木千寿
笑顔を見てたら
卯木千寿
全部忘れてた
18年前
口梨莉子
口梨莉子
口梨千寿
口梨千寿
食べるわね
口梨莉子
作る料理
口梨莉子
口梨千寿
口梨莉子
世界で一番好き
口梨千寿
口梨千寿
口梨莉子
口梨莉子
口梨千寿
食べるわね〜
口梨莉子
卯木千寿
初心も忘れて
卯木千寿
強制してたのよね
卯木千寿
着せ替え人形みたいに
卯木千寿
卯木千寿
今の今まで全く
気づかなかったなんて
千寿はスマホに写っている 莉子の笑顔を見つめながら うっすらと涙を浮かべる
卯木莉子
卯木千寿
多良木音弥
卯木千寿
多良木音弥
卯木千寿
卯木千寿
なっていたわ・・・
卯木千寿
ありがとう
多良木音弥
卯木千寿
卯木千寿
卯木千寿
卯木莉子
莉子は涙を流しながら 千寿に抱きつく
卯木莉子
信じてた
卯木莉子
卯木莉子
卯木莉子
笑い合えるって
卯木莉子
卯木千寿
卯木千寿
卯木千寿
卯木莉子
一緒に──
卯木千寿
卯木莉子
卯木千寿
卯木莉子
卯木千寿
卯木千寿
卯木千寿
いけない事をやった
卯木千寿
卯木莉子
警察の人に事情を──
卯木千寿
卯木莉子
卯木千寿
捕まらなくちゃ
いけないのよ
卯木千寿
卯木千寿
ものじゃないから
多良木音弥
卯木莉子
莉子は服の裾で涙を拭う
卯木莉子
卯木千寿
卯木莉子
帰ってきてね?
卯木莉子
卯木千寿
卯木千寿
卯木千寿
どうしようもない
私なんかを・・・
卯木千寿
くれるの?
卯木莉子
卯木莉子
卯木千寿
千寿は莉子を力強く抱きしめる
卯木千寿
卯木千寿
卯木莉子
卯木千寿
多良木音弥
卯木千寿
卯木千寿
お願いしますっ
千寿は深々と頭を下げる
多良木音弥
多良木音弥
必ず護りますから!
多良木音弥
音弥は千寿の手を握り 真剣な眼差しで語りかける
卯木千寿
安心したわ
千寿は優しく微笑む
こうして千寿は警察に自首し 監禁罪、殺人未遂罪の 実刑判決を受けた