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多良木音弥

なんだ!?

多良木音弥

これ・・・

莉子の危機を察し 卯木家の前までやってきた音弥は 目の前の状況に困惑する

そこにはパトカーが停車しており 警官2名が必死に千寿に対して 外に出てくるように声かけをしていた

多良木音弥

あ、あの・・

音弥はゆっくりと 警官を見守る近隣住民に近づく

近隣住民

あ!あなたは!

近隣住民

莉子ちゃんの
彼氏さん?

多良木音弥

は、はい・・・

多良木音弥

莉子さんから
電話もらって

多良木音弥

これはどういう・・

近隣住民

あなた何やってたの!

近隣住民は音弥の言葉を遮るように 怒りに満ちた表情で詰め寄る

多良木音弥

あ、いや・・・

近隣住民

莉子ちゃんの事・・

近隣住民

お願いねって
私たち言ったわよね?

多良木音弥

・・・・・

音弥はうつむいたまま黙り込む

近隣住民

なのに何でこんな事に
なってるのよ!!

多良木音弥

す、すいません・・・

近隣住民

ちょっと!
やめなさいよ!

近隣住民

彼に当たるのは
筋違いでしょ?

近隣住民

で、でも・・・

近隣住民

彼がいなかったら
莉子ちゃんは

近隣住民

もっと酷い目に遭っていた
かもしれないのよ?

近隣住民

・・・・・

近隣住民

それに私たちだって

近隣住民

莉子ちゃんが虐待を受けて
いるかもしれないって

近隣住民

薄々気付いていながら
見て見ぬふり
してたじゃない!

近隣住民

そもそも私たちが
莉子ちゃんに話を
聞いてあげていたら

近隣住民

こんな事には
なってなかった筈よ?

近隣住民

責任があるとしたら
それは私たちよ!

近隣住民

そ、そうよね・・・

近隣住民

ごめんなさいね・・

近隣住民

あなたは莉子ちゃんの
恩人だって言うのに

多良木音弥

いえ・・事実ですから

多良木音弥

俺がちゃんと
気配りできていたら

多良木音弥

こんな事には・・・

近隣住民

あなたは何も
悪くないわ!

玄関先では警官が 千寿に呼びかけていた

警官

卯木千寿!

警官

観念して投降するんだ

警官

卯木千寿!

警官が懸命に呼びかけるが 千寿は一向に姿を現さない

多良木音弥

あ、あの・・

音弥は恐る恐る警官に近づく

警官

なんですか?あなたは!

警官

関係ない方は退がって!

音弥と面識の無い警官は 野次馬が入って来たと勘違い 音弥を追い返そうとする

多良木音弥

い、いや、俺は

警官

いいから!退がって!

近隣住民

この方は莉子ちゃんの
彼氏さんなんです!

警官

え!?あなたが?

多良木音弥

多良木音弥と言います

多良木音弥

それで様子はどんな
感じでしょうか?

警官

出てくる気配は
ありません

多良木音弥

そうですか・・・

近隣住民

彼氏さん・・

近隣住民

莉子ちゃんから
電話もらったそうなんです

警官

で、電話!?

警官

いつですか?

多良木音弥

つい10分ほど前です

多良木音弥

けど、直ぐに
通話が切れまして

多良木音弥

嫌な予感がしたから
家まで来たんですけど

警官

どんなご様子でしたか?

多良木音弥

開口一番に
助けてって・・

警官

まずいですね・・

警官

卯木千寿!

警官

早く出てくるんだ!

卯木莉子

やめてよ・・・

卯木莉子

お母さん・・・

卯木千寿

やめないわ

卯木千寿

もう・・無理なの

卯木莉子

無理じゃない!

卯木千寿

無理なのよっ!!!

卯木莉子

私たち・・・

卯木莉子

まだやり直せるよ

卯木千寿

うるさい!うるさい!

卯木千寿

そう言って
泣き落とせば

卯木千寿

私が躊躇うとでも
思ってるんでしょ!?

卯木千寿

そうはいかないわ!

卯木莉子

何で分かって
くれないの!

卯木莉子

私はお母さんから──

莉子さん!!

莉子さん!!

居るんでしょ!?

莉子さん!!

卯木莉子

お、音弥くん!?

卯木千寿

え?何で?

卯木莉子

さっきの電話で
来てくれたんだ!

卯木千寿

ま、まさか・・・

卯木千寿

あんな短い通話時間で

卯木千寿

全てを察して
来たって言う訳?

卯木莉子

音弥くんは私の事を
見てくれてるの!

卯木千寿

・・・・・

多良木音弥

莉子さん!!

多良木音弥

莉子さん!!

多良木音弥

居るんでしょ!?

多良木音弥

莉子さん!!

警官

多良木さん!

警官

無闇に刺激するのは

多良木音弥

この先に莉子さんが
居るんですよ!?

多良木音弥

黙って見てろって
言うんですか!?

多良木音弥

そんなの無理です!!

警官

ですが──

卯木千寿

あなたは多良木音弥?

ドアの向こう側から 千寿の声が聞こえる

警官

卯木千寿!

多良木音弥

え?この人が?

多良木音弥

莉子さんのお母さん!?

ドア一枚隔てた向こう側に 千寿が居る事に 音弥は目を見開いて驚く

多良木音弥

(ドアの向こうに・・・)

多良木音弥

莉子さんに何した!?

多良木音弥

無事なんですか!?

卯木千寿

私の質問に答えなさい!

卯木千寿

あなたは
多良木音弥なの?

多良木音弥

(刺激しない方がいいな)

多良木音弥

は、はい・・・

多良木音弥

そ、そうです・・・

卯木千寿

そう・・・

千寿はそう言うと鍵を開け ドアを少しだけ開く

警官

卯木!!

そこに警官が突入しようとするが

卯木千寿

入ってくるなぁ!!!

卯木千寿

入って来たら
莉子を殺すわよ!?

警官

っ・・・

そう言われてしまっては 警官はどうする事も出来ず 突入は諦めるしかなかった

卯木千寿

多良木音弥?

卯木千寿

あなただけ
入って来なさい

多良木音弥

え!?俺だけ!?

いきなりの言葉に躊躇う音弥

卯木千寿

嫌ならいいのよ?

多良木音弥

・・・・・

音弥は深呼吸をする

多良木音弥

わ、わかりました・・

警官

多良木さん!?

多良木音弥

だ、大丈夫です・・・

卯木千寿

警察は敷地
から出なさい!

卯木千寿

じゃないと──

警官

わ、分かった!出る!

警官二人は千寿に 言われるがままに後退る

卯木千寿

さぁ?入って来なさい?

多良木音弥

は、はい・・・

音弥は恐る恐る 家の中に入る

多良木音弥

・・・・・

卯木千寿

さぁ・・まっすぐ
歩きなさい?

多良木音弥

は、はい・・・

音弥は言われるがまま 突き当たりまで歩く

卯木千寿

さっさと歩きなさい

千寿は音弥の背中に 包丁を突きつけながら急かす

多良木音弥

わ、わかりました

卯木莉子

音弥くん!!

莉子は音弥の顔を見ると 涙を流しながら抱きつく

多良木音弥

莉子さん!?

多良木音弥

あぁ・・よかった・・・

音弥は莉子が無事で居た事に安堵し 涙を流しながら抱きしめる

多良木音弥

ごめんね?

多良木音弥

俺が不用心な
ばっかりに

卯木莉子

何言ってんの?

卯木莉子

音弥くんは何も
悪い事してないでしよ?

多良木音弥

あ!この傷は?

音弥は莉子のおでこに 優しく触れる

卯木莉子

お、お母さんに・・

多良木音弥

なんだよ・・それ

卯木千寿

感動の再会は
出来たかしら?

卯木莉子

お母さん・・・

多良木音弥

実の娘にこんな
酷い事して

多良木音弥

あなたの胸は
痛まないんですか!?

多良木音弥

それでも親ですか!?

卯木千寿

初対面なのに
随分な物言いね?

多良木音弥

初対面だとか
関係ありません!

卯木千寿

まぁ、威勢が良い事

多良木音弥

それより
答えてください!!

多良木音弥

自分がお腹を痛めて
産んだ娘なのに

多良木音弥

なんでこんな事が
出来るんですか!?

卯木千寿

親だからよ

卯木千寿

我が子に躾できるのは
世界でただ一人
親である私だけだからよ

多良木音弥

これは躾
なんかじゃない!

多良木音弥

一方的な暴力!
支配!独裁です!

卯木千寿

いやね、これは愛よ

卯木千寿

愛の鞭よ

多良木音弥

殴って包丁で傷つけて

多良木音弥

そんなのが愛なわけない

多良木音弥

仮にこれが本当に愛なら

多良木音弥

莉子さんはもっと
笑ってられる筈です

卯木莉子

(音弥くん・・・)

卯木千寿

子供を持った事が無い
あなたには分からないのよ

多良木音弥

・・・・・

多良木音弥

確かにあなたは
愛でやっていた
のかもしれません

多良木音弥

ですが──

多良木音弥

自分の行為を相手が
そのまま受け取ってくれる
とは限りませんよね?

卯木千寿

何がいいたいの?

多良木音弥

あなたはそれが身に染みて
分かってる筈ですよね?

卯木千寿

!!!!!!

音弥の言葉から 何かを察したのか

千寿は莉子に 声を張り上げて詰め寄る

卯木千寿

莉子!?

卯木千寿

まさかあなた
話したの!?

卯木千寿

不倫の事を!!!

卯木莉子

・・・・・

莉子はうつむいたまま 口を開かない

多良木音弥

俺が無理矢理
聞き出したんです

卯木莉子

(音弥くん・・)

卯木千寿

他人のプライベートに
土足で踏み入るなんて

卯木千寿

随分と図々しいわね?

多良木音弥

愛する人が悩んでいたら

多良木音弥

話を聞いて力になりたい

多良木音弥

そう思う事が
図々しいんでしょうか?

卯木千寿

・・・・・

多良木音弥

あなたは違うんですか?

多良木音弥

莉子さんの事を
愛してる筈ですよね?

卯木千寿

さっきからベラベラと

卯木千寿

あなたは自分の置かれた
状況が分かってない
みたいね?

多良木音弥

え?

卯木千寿

あなたには罰を
受けてもらうために

卯木千寿

家にあげたのよ?

多良木音弥

ば、罰?

卯木千寿

娘をたぶらかした罰よ

多良木音弥

俺はやましい事は
していません

多良木音弥

健全なお付き合いを
させてもらってる
つもりですけど?

卯木千寿

健全?

卯木千寿

娘を無理矢理
誘拐する事が健全?

多良木音弥

人聞きの悪い事を
言わないでください

多良木音弥

俺はただ莉子さんを
護りたかった

多良木音弥

ただそれだけです

卯木莉子

待ってお母さん!

ずっと沈黙していた莉子が口を開く

卯木莉子

私は音弥くんに
誘拐された訳じゃ無い!

卯木莉子

私を護ってくれただけ

卯木千寿

・・・・・

多良木音弥

莉子さん・・・

卯木莉子

お母さん・・・

卯木莉子

最近おかしかったから

卯木千寿

おかしい?

卯木莉子

探偵使って私を調べたり

卯木莉子

包丁を私を
切り付けたり

卯木千寿

・・・・

卯木莉子

私はお母さんを愛してる

卯木莉子

ずっと一緒に居たい
って思ってる・・

卯木千寿

・・・・・

卯木莉子

けど・・・

卯木莉子

もう耐えられない
って思った・・・

卯木千寿

莉子・・・

卯木莉子

でも信じて?

卯木莉子

お母さんの事を
愛してるって気持ちには

卯木莉子

嘘は一切ない!

多良木音弥

莉子さん!?

多良木音弥

ここまでされて──

卯木莉子

音弥くんは黙ってて!

多良木音弥

莉子さん・・・

卯木莉子

助けに来てくれた人に
こんな言い方はしちゃ
いけないんだろうけど

卯木莉子

やっぱり私は
お母さんが好きなの

卯木千寿

・・・・・

卯木莉子

ねぇ?お母さん?

卯木莉子

またやり直そうよ

卯木千寿

莉子・・・

卯木莉子

私・・やっぱり
離れたくないよ

卯木千寿

・・・・・

莉子は涙ながらに 胸の内を明かすが

卯木千寿

嘘ばっかり

千寿には響かなかった

卯木莉子

え!?

卯木千寿

一緒に居たいなら
なんで逃げたのよ

卯木莉子

だからそれは──

卯木千寿

どんな詭弁並べても無駄よ

卯木千寿

あなたは私の元から
離れていった!

卯木千寿

それが真実!

卯木千寿

それ以外にはない!

卯木莉子

なんで分かって
くれないの!?

卯木莉子

私は──

多良木音弥

まだ分から
ないんですか!?

莉子の言葉を代弁するかのように 音弥が声を張り上げる

卯木千寿

はぁ?

多良木音弥

莉子さんは──

多良木音弥

お母さんから
逃げなかったんですよ?

卯木莉子

(音弥くん・・・)

卯木莉子

(まさか私が
言おうとした事が?)

卯木千寿

逃げなかった?

卯木千寿

逃げてるじゃない!

卯木千寿

何を──

多良木音弥

それは命の危機を
感じたからでしょ?

多良木音弥

誰だって包丁を
切り付けられたら
怖いですよ!

多良木音弥

いくら家族だからって
逃げたくなりますよ!

卯木千寿

・・・・・

多良木音弥

けど裏を返せば

多良木音弥

そうでもなきゃ莉子
さんはお母さんの
元から離れなかった!

卯木千寿

!!!!!!

多良木音弥

お母さんが嫌なら
逃げる事だって出来た

多良木音弥

友達の家とか職場の寮とか

多良木音弥

今はシェルター
だってあります!

多良木音弥

逃げよう思えば
助けてくれる場所は
山ほどあります!

多良木音弥

けど莉子さんは
命の危機を感じる
レベルじゃなきゃ

多良木音弥

お母さんから
離れなかったんです!

多良木音弥

それが何故だか
分かりますか?

卯木千寿

・・・・・

多良木音弥

それは家族だからです!

多良木音弥

お母さんの事を
愛しているからです!

卯木千寿

莉子が・・・

多良木音弥

正直すごいと思います

多良木音弥

俺だったらすぐに
逃げてます・・

多良木音弥

逃げるどころが
自殺してるかも
しれません・・・

多良木音弥

莉子さんは強い人です

卯木千寿

莉子・・・

千寿の目から涙が溢れ出る

卯木千寿

そうね・・・

卯木千寿

そうよね・・・

卯木千寿

確かにあなたの
言う通りよね・・

卯木莉子

お母さん・・・

卯木千寿

莉子は私の事
なんか見捨てて

卯木千寿

逃げる事だって
出来たのよね・・

卯木千寿

けど莉子は
私を見捨てなかった

卯木千寿

そばに居てくれた・・・

卯木千寿

それなのに私は・・・

卯木千寿

莉子から
何もかも奪って

卯木莉子

お母さん・・・

多良木音弥

・・・・・

卯木千寿

笑顔さえも
奪ってしまった

多良木音弥

え?

音弥の頭の中には 莉子の笑顔が浮かんでいた

大量の料理を 満面の笑みで食す 莉子の笑顔が浮かんでいた

多良木音弥

・・・・・

多良木音弥

莉子さんって

多良木音弥

食べる事が
好きなんですよ

卯木千寿

え?

卯木莉子

音弥くん?

不意に口を開く音弥に 莉子と千寿は首を傾げる

卯木千寿

食べる事?

多良木音弥

はい!これです

音弥は千寿にスマホを手渡す

そこには音弥の手料理を 満面の笑みで食す 莉子の写真が映し出されていた

卯木千寿

!!!!!!

卯木千寿

莉子!?

千寿はその写真を 食い入るように見つめる

卯木莉子

ちょ!音弥くん///

卯木莉子

いつの間に
こんなの///

莉子は恥ずかしいのか 顔を赤く染める

多良木音弥

いや、ホラ、この前

多良木音弥

ウチでご飯食べた時に

卯木千寿

ふっ、莉子の
こんな笑顔──

卯木千寿

久しぶりに見たわ

多良木音弥

俺は莉子さんの
この笑顔を見るのが
好きです

卯木千寿

そう言えば
私も好きだったな

卯木莉子

お母さん・・・

卯木千寿

私の料理が
世界一好き!

卯木千寿

なんて
言ってくれて

多良木音弥

・・・・・

卯木千寿

莉子のそんな
笑顔を見てたら

卯木千寿

嫌な事なんて
全部忘れてた

18年前

口梨莉子

うーん♬

口梨莉子

おいし〜♬

口梨千寿

莉子はホント

口梨千寿

美味しそうに
食べるわね

口梨莉子

だってお母さんが
作る料理

口梨莉子

美味しいんだもん♬

口梨千寿

ふふふ、そう

口梨莉子

お母さんの料理が
世界で一番好き

口梨千寿

ありがとうね

口梨千寿

莉子♬

口梨莉子

お母さん!

口梨莉子

おかわり!

口梨千寿

ホントよく
食べるわね〜

口梨莉子

だって世界一だもん

卯木千寿

私はそんな
初心も忘れて

卯木千寿

息苦しい生活を
強制してたのよね

卯木千寿

まるで私の
着せ替え人形みたいに

卯木千寿

バカよね・・・

卯木千寿

そんな当たり前の事に
今の今まで全く
気づかなかったなんて

千寿はスマホに写っている 莉子の笑顔を見つめながら うっすらと涙を浮かべる

卯木莉子

お母さん・・・

卯木千寿

音弥さんだったわね?

多良木音弥

は、はい

卯木千寿

ありがとうね

多良木音弥

え?

卯木千寿

あなたが居なかったら

卯木千寿

更に莉子を苦しめる事に
なっていたわ・・・

卯木千寿

気づかせてくれて
ありがとう

多良木音弥

・・・・・

卯木千寿

莉子もごめんね?

卯木千寿

こんなお母さんで

卯木千寿

ずっと辛かったわよね?

卯木莉子

お母さん!

莉子は涙を流しながら 千寿に抱きつく

卯木莉子

私・・お母さんを
信じてた

卯木莉子

お母さんならきっと

卯木莉子

思い出してくれるって

卯木莉子

昔みたいに一緒に
笑い合えるって

卯木莉子

信じてた

卯木千寿

莉子・・・

卯木千寿

ぐすっ・・・

卯木千寿

ごめんなさいね

卯木莉子

これからは
一緒に──

卯木千寿

ううん、もういいの

卯木莉子

え?

卯木千寿

私は警察に自首するわ

卯木莉子

え!?なんで!?

卯木千寿

私はね

卯木千寿

母親として──いや

卯木千寿

人としてやっちゃ
いけない事をやった

卯木千寿

その罪は消えないの

卯木莉子

だったら私から
警察の人に事情を──

卯木千寿

それじゃ駄目なの

卯木莉子

お母さん・・ぐすっ

卯木千寿

私は警察に
捕まらなくちゃ
いけないのよ

卯木千寿

私がしてしまった事は

卯木千寿

到底許される
ものじゃないから

多良木音弥

・・・・・

卯木莉子

分かった・・ぐすっ

莉子は服の裾で涙を拭う

卯木莉子

でも約束して?

卯木千寿

約束?

卯木莉子

必ず私の元に
帰ってきてね?

卯木莉子

絶対だからね?

卯木千寿

莉子・・・

卯木千寿

こんな私を・・・

卯木千寿

こんな
どうしようもない
私なんかを・・・

卯木千寿

ずっと待ってて
くれるの?

卯木莉子

当たり前でしよ!?

卯木莉子

家族なんだから!!

卯木千寿

莉子!!!

千寿は莉子を力強く抱きしめる

卯木千寿

約束する!

卯木千寿

必ず帰ってくるわ

卯木莉子

ぐすっ・・・

卯木千寿

音弥さん?

多良木音弥

は、はい・・・

卯木千寿

莉子の事──

卯木千寿

よろしく
お願いしますっ

千寿は深々と頭を下げる

多良木音弥

はい・・・

多良木音弥

莉子さんは俺が
必ず護りますから!

多良木音弥

安心してください!

音弥は千寿の手を握り 真剣な眼差しで語りかける

卯木千寿

その言葉を聞いて
安心したわ

千寿は優しく微笑む

こうして千寿は警察に自首し 監禁罪、殺人未遂罪の 実刑判決を受けた

大食いの彼女には秘密がある

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