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それから2年の月日が流れた

千寿は当初5年の禁固刑を 言い渡されていたが

莉子や音弥の証言、千寿の精神状態 罪に対する自責の気持ちから 情状酌量の余地があると判断され 2年の禁固刑になった

そして2年経過した今日

無事に千寿の出所日を迎える

多良木音弥

もうそろそろかな?

音弥は刑務所の前で スマホで時間を確認する

卯木莉子

多分もう直ぐだと思う

多良木音弥

早く会いたいでしょ?

卯木莉子

うん・・・

卯木莉子

面会も出来てたけど

卯木莉子

直接会えてた
訳じゃないから

多良木音弥

だよね・・・

2人が千寿との再会を 心待ちにしていると

多良木音弥

あ!出てきたよ!

音弥が声を張り上げて指を指す

その先には

卯木千寿

・・・・・

刑務官にお辞儀をして 出てくる千寿の姿があった

卯木莉子

お母さん!!!

莉子は目にうっすらと 涙を浮かべながら 千寿に近づいていく

卯木千寿

莉子・・・

卯木千寿

それに音弥さん

多良木音弥

お久しぶりです・・・

卯木千寿

もう・・お迎えなんて
良かったのに・・・

卯木莉子

何言ってるの

卯木莉子

家族なんだから
来るはのは
当たり前でしょ!!

卯木千寿

ふふふ・・そうね

卯木千寿

ありがとう・・・

卯木千寿

ぐすっ・・・

卯木莉子

お母さん!

莉子は千寿に抱きつく

卯木莉子

ずっとこうしたかった

卯木千寿

私もよ莉子・・・

卯木千寿

ぐすっ・・・

卯木千寿

ずっと待たせて
ごめんなさいね?

多良木音弥

(莉子さん・・)

多良木音弥

(お母さんに
会えたのが)

多良木音弥

(相当嬉しい
みたいだな・・)

音弥は抱き合う2人に 暖かな眼差しを向ける

すると

ぐぅ〜〜

莉子のお腹が大きく鳴る

卯木莉子

あっ///

多良木音弥

ぷっ

多良木音弥

あははははは

卯木莉子

ちょっと!

卯木莉子

笑わないでよ!

多良木音弥

ごめんごめん

多良木音弥

そう言えば今朝から
何も食べてなかったよね

多良木音弥

何か食べに行こうか

多良木音弥

お義母さんも一緒に

卯木千寿

私もいいの?

多良木音弥

当たり前ですよ

多良木音弥

それにお義母さんが
居ないと意味ないですよ

多良木音弥

今日はお義母さんの
出所祝いなんですから

卯木莉子

そうだよ!

卯木莉子

ね?一緒に行こう?

卯木莉子

ほら!ほら!

莉子は満面の笑みで 千寿の手を両手で握る

卯木千寿

ありがとう・・・

一同は音弥が運転する車で 近くのレストランに来ていた

多良木音弥

遠慮せずに
食べてくださいね?

卯木千寿

え、ええ・・・

卯木千寿

あ、ありがとう・・

千寿は困惑した表情をしている

卯木莉子

どうしたの?

多良木音弥

元気ないですね?

多良木音弥

どうかされました?

卯木千寿

あ、いや、そういう
訳じゃないんだけどね

卯木莉子

遠慮しなくていいんだよ

卯木莉子

食べようよ!ほら!

莉子は千寿に箸を手渡す

卯木千寿

あの・・莉子?

卯木莉子

なぁに?お母さん

卯木千寿

そんなに食べるの?

千寿は莉子の目の前に並べられている 大量の料理を驚いたように見る

卯木莉子

え?

卯木千寿

いや、多くない?

卯木千寿

食べれるの?

多良木音弥

あ!そっか!

音弥は何かに気づいたように 声を張り上げる

卯木莉子

どうしたの?

卯木莉子

急に大声出して

多良木音弥

お義母さん
知らないんだよ

卯木莉子

知らないって何が?

多良木音弥

莉子さんが大食いな事

卯木莉子

え?

多良木音弥

だってホラ!

多良木音弥

今までは黙って
外食してたんでしょ?

卯木莉子

あ!そっか!

卯木莉子

私、お母さんの前で
大食いした事無かった

卯木千寿

大食い?莉子が?

多良木音弥

莉子さんってめっちゃ
大食いなんですよ!

卯木千寿

だからって
こんなに食べれる?

卯木千寿

すごい量よ?

卯木莉子

余裕だよ!余裕!

多良木音弥

これでもだいぶ
セーブしてる方ですよ

卯木千寿

え!?ホントに!?

卯木莉子

見てればわかるよ

卯木千寿

ゴクリ・・・

千寿は生唾を飲み込む

卯木莉子

ふぅ〜・・・

卯木莉子

ごちそうさまでした〜♬

莉子は満面の笑みで手を合わせる

卯木千寿

本当に全部
食べちゃった!!

卯木千寿

信じられない・・・

多良木音弥

僕も最初の頃は
目の前の現実が
信じれませんでしたよ

卯木莉子

まぁ腹八分
くらいだけどね

卯木千寿

は、はらはちぶぅ!?

卯木千寿

こんなに食べて!?

卯木千寿

嘘でしょ!?

卯木千寿

この細い体のどこに
あんな量が入るの?

千寿は莉子のお腹を触りながら 物珍しそうに体を見回す

卯木莉子

なんかその反応
懐かしい

卯木莉子

出会った頃の
音弥くんを思い出す

多良木音弥

あはは!確かに!

多良木音弥

終始驚きっぱなし
だったからね

卯木千寿

こんなに大食いなんて
全然知らなかった

卯木千寿

私・・莉子の事全然
見れてなかったのね

卯木千寿

つくづく母親失格って
思い知らされるわ

卯木莉子

お母さん・・・

多良木音弥

これから知っていけば
いいと思いますよ

卯木千寿

これから?

多良木音弥

そうです!

多良木音弥

人生はまだまだ
長いんですよ

卯木莉子

そうだよお母さん

卯木莉子

それにお母さんは
まだ50なんだよ?

卯木莉子

ホラ!今は
人生100年時代!
って言うじゃん!

卯木莉子

それだとまだ
50年あるんだよ?
半分だよ!半分!

卯木千寿

ふふふ・・そうね

多良木音弥

俺が思うに、これまでの
莉子さんとお義母さんは

多良木音弥

なんというか、親子の
会話が少なかったんじゃ
ないか?って思うんです

卯木千寿

親子の・・会話?

多良木音弥

そうです

多良木音弥

今だって莉子さんが
実は大食いだったって
初めて知ったんですよね?

卯木千寿

えぇ・・そうね

多良木音弥

でも逆に言えば
莉子さんが知らない

多良木音弥

お義母さんの
意外な一面だって
きっとある筈です

卯木莉子

確かに・・・

多良木音弥

いろんなところに行って

多良木音弥

いろんな物を見て

多良木音弥

互いに知っていけば
いいんですよ

多良木音弥

遅いなんて事は無いです

多良木音弥

今からだって十分
間に合います!

卯木千寿

私に・・出来るかしら?

多良木音弥

出来ますよ!

多良木音弥

互いを尊重し合いながら
手を取り合ってれば
絶対にできますよ!

多良木音弥

俺も出来る限り
サポートしますから!

卯木千寿

ふふふ

卯木千寿

あなたにはお世話に
なりっぱなしね
音弥さん・・・

多良木音弥

愛する人が
大切にしてる人は

多良木音弥

俺にとっても
大切な人ですから!!

卯木莉子

音弥くん///
声が大きいよ///

卯木莉子

愛する人なんて
恥ずかしいじゃん///

莉子は顔を赤くしてうつむく

多良木音弥

あはは!ごめん!

多良木音弥

つい熱くなっちゃった

卯木千寿

ふふふ

卯木千寿

それと、2人は
今はどうしてるの?

卯木莉子

どうって?

卯木千寿

同棲とかしてるの?

卯木莉子

ど、同棲!?

卯木千寿

何を驚いてるのよ

卯木千寿

付き合ってるのよね?
莉子と音弥さんは

卯木莉子

いや、同棲は、ま、まだ

卯木千寿

え?してないの?

多良木音弥

いや、やっぱり
同棲ってなると

多良木音弥

お義母さんの許可が
必要かなって思いまして

多良木音弥

お母さんが出てくる日を
待ってたんですよ

卯木千寿

まぁ!そうだったの?

卯木千寿

てっきりもう同棲
してるとばかり
思ってたわ!

卯木莉子

でも私が音弥くんと
同棲したりしたら

卯木莉子

お母さん・・・
ひとりぼっちに──

卯木千寿

何言ってるのよ

卯木千寿

私の事なんて
気にしなくていいわよ

卯木莉子

でも・・・
お母さん寂しく無い?

卯木千寿

そりゃ寂しく無い
って言ったら
嘘になるわよ?

卯木千寿

でも莉子の人生だもん

卯木千寿

今まで私は莉子から
人生を奪ってた

卯木千寿

そんな私が今更
同棲するな!なんて
おこがましいでしょ?

卯木莉子

お母さん・・・

卯木千寿

まぁ、でも寂しいから
たまには会いにきてね?

卯木莉子

うん♬

多良木音弥

て事は同棲OK
って事ですか?

卯木千寿

もちろんよ

卯木千寿

莉子の事よろしくね

多良木音弥

はい!何があっても
莉子さんを護りますっ!!

多良木音弥

莉子さんを悲しませたり
しませんからっ!!!

卯木莉子

だから声が
大きいってば///

多良木音弥

あ、ごめん

卯木莉子

もぅ///バカ///

卯木千寿

ふふふ

そして音弥、莉子、千寿の3名は レストランを後にし久しぶりの 我が家へとやって来ていた

卯木千寿

久しぶりね・・・

卯木莉子

さぁ!入ろ?

卯木千寿

うん・・・

千寿は玄関に向かって 歩みを進めるが

卯木千寿

あれ?

千寿は家を見上げて 驚いた様に目を見開く

多良木音弥

どうかされました?

卯木千寿

窓の鉄格子が
無くなってる

卯木家の窓と言う窓全てに 取り付けられていた鉄格子が 綺麗さっぱり無くなっていた

卯木莉子

音弥くんと協力して
取り外したの

卯木千寿

2人で?

多良木音弥

ええ・・・

多良木音弥

もう必要ないか
と思いました

多良木音弥

あ、余計でしたか?

卯木千寿

ううん・・・

卯木千寿

そんな事ないわ

卯木千寿

私もアレはもう
いらないって
思ってたから

多良木音弥

そうだったんですね

卯木千寿

あんな息苦しい物で
莉子を縛り付ける
訳にはいかないもの

卯木莉子

お母さん・・・

近隣住民

あら?

近隣住民

もしかして千寿さん?

皆が家に入ろうとすると 近隣住民が話しかけてきた

多良木音弥

あ!みなさん!

多良木音弥

こんにちは

卯木莉子

こんにちは

近隣住民

こんにちは

近隣住民

そう言えば
今日だったわね

卯木千寿

その節は色々とご迷惑を
おかけしてしまい

卯木千寿

申し訳ありませんでした

千寿は近隣住民に 深々と頭を下げる

近隣住民

いいんですよ!

近隣住民

そう!そう!

近隣住民

これからは
莉子ちゃんの事を

近隣住民

1人の人間として
見てあげてくださいね?

卯木千寿

はい・・・

卯木千寿

互いに手を取り合って
生きていくつもりです

近隣住民

その言葉を聞けて
安心しました

それから軽く談笑した一同は 千寿の手料理を堪能する

多良木音弥

うまっ!!

多良木音弥

なんですか!?
この卵焼き!

多良木音弥

凄い美味しいですね!

千寿お手製の 卵焼きを口にした音弥は 目を見開いて驚く

卯木千寿

でしょ?

多良木音弥

何が入ってるんです?

卯木千寿

それね──

卯木千寿

すき焼きのタレと
わさびふりかけが
入ってるのよ

多良木音弥

わ、わさびふりかけ?

卯木莉子

私の大好物なの♬

多良木音弥

卵焼きにわさびふりかけ
って発想無かったなぁ

卯木千寿

わさびだとちょっと
辛いんだけどね

卯木千寿

ふりかけだと
マイルドで
美味しいのよ

多良木音弥

へぇ〜・・・

多良木音弥

参考にしよ

音弥はスマホを取り出して メモ帳に卵焼きを記録する

卯木莉子

音弥くんも普段から
料理するからね♬

卯木千寿

あら?そうなの?

多良木音弥

いやぁ俺なんて
素人に毛が生えたような
レベルですけど・・あはは

卯木莉子

そんな事ないよ!

卯木莉子

すっごい美味しいんだよ

卯木莉子

音弥くんの手料理

卯木千寿

そんなに美味しいなら
ぜひ食べてみたいわ♬

多良木音弥

ちょ!莉子さん!

多良木音弥

大袈裟だって!

多良木音弥

歴戦の主婦に
品定めされるみたいで
プレッシャーだよ

卯木千寿

あはは!歴戦って(笑)

卯木千寿

面白い表現するのね

卯木千寿

そんな大層なモン
じゃないわよ?

卯木莉子

ふふふ

卯木千寿

でも莉子?

卯木莉子

なぁに?お母さん?

卯木千寿

それだけで足りた?

卯木千寿

足りないなら
何か作ろっか?

卯木莉子

あ、いや、大丈夫だよ

卯木莉子

昼間もいっぱい
食べちゃったし

卯木莉子

太るとアレだから
セーブしよっかな

卯木千寿

そう?

卯木千寿

ならいいけど

卯木千寿

遠慮しなくていいわよ?

卯木莉子

大丈夫だよ!

卯木莉子

遠慮なんてしてないから

莉子と千寿のそんなやりとりを 音弥は微笑みながら見つめる

卯木莉子

ん?音弥くん?

卯木莉子

どうかした?

卯木莉子

なんか笑顔だね?

多良木音弥

ああ、いや

多良木音弥

なんか微笑ましいなって

多良木音弥

やっぱ家族って
こうじゃなきゃ

卯木千寿

音弥さん・・・

卯木莉子

これも全部
音弥くんのおかげだよ

卯木莉子

ありがとうね

多良木音弥

俺は何もしてないよ

多良木音弥

俺はただキッカケを
作っただけ

卯木莉子

キッカケ?

多良木音弥

今の2人があるのは
互いが尊重し合って
求め合ってるからだよ

卯木莉子

音弥くん・・・

多良木音弥

だから今2人が
笑い合えてるのは
2人の力!

卯木千寿

音弥さんってホント
不思議な人よね

卯木千寿

彼女の為だからって普通
ここまで出来ないわよ?

多良木音弥

そりゃ愛してますから

多良木音弥

愛してる人の為なら
火の中水の中ですよ

卯木千寿

ふふふ、今どき
それ言う人居ないわよ

卯木莉子

音弥くん古いよ(笑)

多良木音弥

あはは!確かに古いかも

多良木音弥

自分不器用なんで

卯木莉子

それも古いよ(笑)

卯木千寿

音弥さん!あなたになら
莉子を任せれるわ

卯木千寿

これからも莉子の事
よろしくお願いね?

多良木音弥

はい!!

夕食後、帰宅しようとしていた音弥は 泊まっていけという千寿の好意に甘え 卯木家で一泊する事になった

多良木音弥

すいませんね

多良木音弥

せっかくの家族
水入らずの時間なのに

多良木音弥

泊まらせて
もらっちゃって

卯木千寿

ふふふ、いいのよ

卯木千寿

そんな事気にしないで

多良木音弥

ありがとうございます

卯木莉子

じゃあ私は今日
お母さんと寝るから

多良木音弥

うん!わかった!

卯木莉子

おやすみなさい!

多良木音弥

おやすみなさい!

その日の深夜

多良木音弥

う、うー・・ん

多良木音弥

(今何時だ?)

音弥は寝ぼけ眼で スマホを手に取り時間を確認する

多良木音弥

(まだ3時前か・・・)

多良木音弥

(もう一眠りかな?)

多良木音弥

(う・・・)

多良木音弥

(でもトイレ
したくなってきたな)

多良木音弥

(トイレだけ行って
また寝るか)

音弥はベッドからむくっと起き上がり トイレに行くために廊下に出る

しかし音弥が廊下に出ると

ズズッ・・ズズッ

奇妙な音が聞こえてくる

多良木音弥

ん?何だ?この音・・・

多良木音弥

キッチンから
聞こえてくる?

多良木音弥

何だろ・・・

音弥は音の正体を確かめるべく ゆっくりキッカケへ向かう

多良木音弥

あっ・・・

卯木莉子

あっ!音弥くん!

多良木音弥

莉子さんだったのか

多良木音弥

それに・・・

莉子はキッチンで縮こまりながら コソコソとカップラーメンを食べていた

多良木音弥

ぷっ

卯木莉子

ちょっと!

卯木莉子

笑わないでくれる?

多良木音弥

あはは、ごめんごめん

多良木音弥

でも何でカップラーメン?

卯木莉子

いや、それが

卯木莉子

やっぱり足りなくて

卯木莉子

お腹すいちゃったから

多良木音弥

ああ!なるほどね!

多良木音弥

でもなんか
ラーメン食べてる
莉子さん見てたら

多良木音弥

俺もお腹
すいてきちゃったな

卯木莉子

あ、なら音弥くんも
一緒に食べる?

卯木莉子

食べるなら作るよ?

多良木音弥

そう?なら
お願いしようかな

卯木莉子

わかった!なら作るね

卯木莉子

ちょっと待ってて

多良木音弥

うん

それから2人で談笑しながら カップラーメンを食べていた

多良木音弥

なんか深夜に食べる
カップラーメンってさ

多良木音弥

背徳感あるよね

卯木莉子

あはは!確かに!

多良木音弥

てか莉子さん?

多良木音弥

それ何個目?

卯木莉子

ん?何個目って何が?

多良木音弥

カップラーメンだよ

多良木音弥

カップラーメン

卯木莉子

ひ、ひとつ目ですけど?

莉子は目を逸らしながらつぶやく

多良木音弥

本当に?

多良木音弥

ならそこに重なってる
ラーメンの容器は
目の錯覚かな?

音弥はジト目で キッチンのカウンターに重なっている カップラーメンの容器を指差す

卯木莉子

よ、よっつ目です・・

莉子は申し訳なさそうにうつむく

多良木音弥

カップラーメンは
あまり食べすぎると
体に毒だよ?

多良木音弥

まぁ、でも俺と
莉子さんじゃ

多良木音弥

体の作りが違うだろうし

多良木音弥

たまにはいいかもね

卯木莉子

で、でしょ?

卯木莉子

ならあともう一個

多良木音弥

莉子さん!

卯木莉子

嘘です・・・

卯木莉子

すいません・・・

多良木音弥

嘘!嘘!冗談だよ

多良木音弥

というかさ・・・

卯木莉子

ん?なに?

多良木音弥

あれからもう
吐かなくなったね

卯木莉子

え?

多良木音弥

過食嘔吐だよ

卯木莉子

あ、う、うん・・

卯木莉子

音弥くんのおかげだよ

卯木莉子

ありがとうね

多良木音弥

そんな事ないよ

多良木音弥

俺はただ──

卯木莉子

ううん・・・

卯木莉子

私・・音弥くんに
救われたの

千寿の出所前

卯木莉子

ふぅ・・

卯木莉子

ご馳走様!

多良木音弥

美味しかった?

卯木莉子

うん!すっごく!

卯木莉子

美味しすぎて
食べすぎちゃったよ

多良木音弥

ふっ、なら良かったよ

卯木莉子

なら・・トイレに

多良木音弥

待って!莉子さん!

音弥はトイレに 向かおうとする 莉子の腕を掴む

卯木莉子

離して音弥くん

莉子は音弥の手を 振り解こうとする

卯木莉子

吐かなきゃ・・・

卯木莉子

お母さんに・・・

多良木音弥

だからもう
大丈夫なんだって!

多良木音弥

吐く必要なんて
無いんだよ!

卯木莉子

でも・・バレちゃう

多良木音弥

莉子さん!

音弥は莉子の体を 全身で包み込むように抱きしめる

多良木音弥

大丈夫なんだよ・・もう

卯木莉子

音弥くん・・ぐすっ

多良木音弥

莉子さんは全然
太ってなんてないし

多良木音弥

お母さんとだって
仲直り出来たでしょ?

多良木音弥

ずくに吐くのを
辞めるなんて

多良木音弥

それは無理かもしれない

多良木音弥

だから俺が近くで
サポートするから!

多良木音弥

徐々に治していこう!

多良木音弥

ね?莉子さん!

卯木莉子

うん・・ぐすっ

卯木莉子

ごめんね・・音弥くん

多良木音弥

謝らなくていいよ

多良木音弥

莉子さんは吐きたくて
吐いてるわけじゃない
って俺・・知ってるから

多良木音弥

ぐすっ・・・

多良木音弥

ふぅ・・ふぅ・・

卯木莉子

音弥くん?

卯木莉子

大丈夫?

多良木音弥

だ、大丈夫・・・

多良木音弥

うっぷ

音弥は莉子と同じ 食事量を無理やり食べ 今にも吐き出しそうな程に 顔を真っ青にする

卯木莉子

いや、明らかに
大丈夫じゃないよね?

卯木莉子

無理して食べなくても

多良木音弥

それじゃダメなんだよ

卯木莉子

え?

多良木音弥

莉子さんと同じように
俺も食べなきゃ

多良木音弥

莉子さんの
辛さは分からない

卯木莉子

音弥くん・・・

多良木音弥

そりゃ莉子さんの
トラウマには遠く及ばない
かもしれないけどさ

多良木音弥

俺も吐かないように
耐えなきゃ

多良木音弥

莉子さんにばかり
言えないから

卯木莉子

音弥くん・・・

多良木音弥

だから俺も──

多良木音弥

ゲヴォォ

音弥は爆音のゲップをする

卯木莉子

ちょ(笑)

卯木莉子

音弥くん(笑)

多良木音弥

笑わないで
もらえるかな?

卯木莉子

ごめん(笑)

多良木音弥

まだ笑ってるし

多良木音弥

俺だってね、慣れない

多良木音弥

グベヴォォ

卯木莉子

だめ(笑)

卯木莉子

お腹痛い(笑)

多良木音弥

もう!また笑う!

多良木音弥

あ、でもちょっと
お腹楽になったかも

卯木莉子

そう?(笑)

卯木莉子

なら良かった(笑)

多良木音弥

はぁ〜・・・

多良木音弥

死ぬかと思ったよ

卯木莉子

とりあえず水飲む?

卯木莉子

結構楽になるよ?

多良木音弥

そう?なら飲もうかな

卯木莉子

全部音弥くんの支えが
あったからこそだよ

卯木莉子

本当にありがとう

莉子は音弥に抱きつく

多良木音弥

恋人を支えるのは
当たり前だよ!

卯木莉子

ふふふ、大好き

多良木音弥

俺もだよ

音弥は莉子を優しく抱きしめる

多良木音弥

でもさ、ずっと
莉子さんに合わせて
いっぱい食べてたらさ

多良木音弥

なんか昔より
食べれる様に
なったんだよね

卯木莉子

あ!それ
私も思った!

卯木莉子

やっぱ食べる
量増えたよね?

多良木音弥

量を食べれる様に
なってから
思ったんだけどさ

多良木音弥

美味しいって思える
時間が増えるのって

多良木音弥

なんかいいよね

卯木莉子

でしょ?

多良木音弥

うん!幸せな時間が
増えたって感じ

卯木莉子

ご飯食べてる時って
幸せだよね♬

多良木音弥

でも俺は──

卯木莉子

ん?

多良木音弥

ご飯食べる時より
莉子さんとこうして

多良木音弥

何気ない会話を
してる時の方が
幸せかな

多良木音弥

なんちゃって

卯木莉子

もう何言ってんの

卯木莉子

バカ・・・

多良木音弥

その・・莉子さんは?

卯木莉子

え?

多良木音弥

やっぱりご飯
食べてる時の方が

卯木莉子

私だって・・その

卯木莉子

音弥くんと同じだよ

卯木莉子

こうして音弥くんと
会話してる時の方が
幸せだよ

卯木莉子

って何言わせるの

卯木莉子

音弥くんのバカ

莉子は顔を赤くし 不等号目で 音弥の胸をポカポカと叩く

多良木音弥

ごめんごめん(笑)

音弥は笑みを浮かべながら 莉子を優しく包み込む様に抱きしめる

それから数日後

音弥と莉子の同棲の話が 順調に進みつつあるある日

卯木莉子

え?お父さんが?

卯木千寿

うん・・・

卯木千寿

急に会いたいって
連絡してきたのよ

卯木莉子

何よ・・今更

多良木音弥

あの・・確か
お父さんって不倫を・・

卯木千寿

うん・・そうなの

卯木千寿

話したい事が
あるらしいの・・

卯木千寿

私・・会って
みようと思うの

多良木音弥

え?会うんですか?

卯木莉子

大丈夫?お母さん・・

卯木千寿

大丈夫よ・・・

卯木千寿

今はもう
なんとも思ってないし

卯木千寿

私にも悪い部分は
あったって思うしね

卯木莉子

お母さんに悪い部分なんて
これっぽっちも無かったよ

卯木千寿

あの人に一方的な
気持ちをぶつけて

卯木千寿

莉子の事で
ないがしろにしてた

多良木音弥

・・・・・

卯木莉子

お母さん・・・

卯木千寿

だから大丈夫・・・

卯木莉子

わ、わかった・・・

卯木莉子

お母さんがそう言うなら
私は止めない・・・

多良木音弥

・・・・・

卯木千寿

ワガママな母親で
ごめんなさいね

卯木莉子

ううん・・・

数日後

都内の某レストランには 元旦那の到着を待っている 千寿の姿があった

そんな千寿の事を 音弥と莉子は離れた席から 見守っていた

卯木莉子

大丈夫かな?お母さん

多良木音弥

確かに心配だよね

多良木音弥

不倫して家族を捨てた人から今更連絡があるなんて

卯木莉子

何考えてんだろ?

卯木莉子

お父さん・・・

莉子が千寿に 不安な眼差しを向けていると

卯木莉子

あ!来た!

莉子は声を張り上げて指差す

多良木音弥

あの人が?

卯木莉子

うん・・お父さん・・

口梨樹

ひ、久しぶりだな

口梨樹

千寿・・・

卯木千寿

久しぶりね

卯木千寿

それと──

卯木千寿

そちらの女性は確か

口梨ひとみ

お久しぶりです

樹と共にやってきた女性を 千寿は見た記憶があった

それは離婚前、家族でよく 利用していたレストランで 勤めていた女性

つまり不倫相手だった

卯木千寿

1人で来るとばかり
思ってたけど

卯木千寿

どういう事?

口梨樹

千寿・・実は
頼みたい事があるんだ

卯木千寿

頼みたい事?

口梨ひとみ

私から話します

卯木千寿

ん?

卯木莉子

聞こえる?音弥くん

多良木音弥

なんか頼みたい事が
あるみたいだけど

多良木音弥

何なんだろ?

卯木莉子

さぁ・・・

口梨ひとみ

私たちにはお二人が離婚
された直後に婚約させて
もらったんですけど

口梨ひとみ

なかなか子宝に
恵まれなかったんです

卯木千寿

・・・・・

口梨ひとみ

原因は私の不妊でした

口梨ひとみ

ですが去年──

口梨ひとみ

待望の第一子が
産まれたんです

卯木千寿

・・・・・

口梨ひとみ

不妊治療の末に産まれた
待望の我が子を抱ける事が

口梨ひとみ

こんなに幸せなんだと
幸せを噛み締めて
いたのも束の間

口梨ひとみ

医者から息子は難病を
抱えていると
知らされました

卯木千寿

難病?

口梨ひとみ

重症複合免疫不全

口梨ひとみ

免疫系が殆ど機能しない
先天性の免疫不全症です

卯木千寿

・・・・・

口梨ひとみ

難病に指定されていて

口梨ひとみ

最適な治療法は
骨髄移植しか無いと
されている病気です

卯木千寿

それで?

卯木千寿

何が言いたいんです?

口梨ひとみ

その・・・

口梨樹

莉子にドナーに
なってもらいたいんだ

卯木千寿

莉子に?

口梨ひとみ

どうか・・・

口梨ひとみ

お願いします

ひとみは涙を流しながら 頭を下げる

口梨樹

頼む!千寿!

口梨樹

お前から莉子に
話してくれないか?

卯木千寿

・・・・・

口梨樹

莉子に適合検査を
受けてもらいたいんだ

卯木千寿

・・・・・

口梨ひとみ

お願いします

口梨ひとみ

私たちの子供を
救ってください

卯木千寿

・・・・・

会話の一部始終を聞いていた音弥は 怒りに満ちた表情で拳を握りしめる

多良木音弥

何なんだよアイツら

多良木音弥

不倫して家族を
捨てた挙句

多良木音弥

ドナーになれだなんて

多良木音弥

あまりにも
自分勝手すぎるだろ!

卯木莉子

・・・・・

多良木音弥

それにドナーは
提供者にも危険が
及ぶかもしれないのに

多良木音弥

あまりにも
身勝手すぎるだろ

多良木音弥

俺・・行ってくる!

音弥は立ち上がり 樹の元へ歩いて行こうとする

卯木莉子

待って!音弥くん!

莉子はそんな音弥の腕を掴む

多良木音弥

何で止めるんだよ
莉子さん!

多良木音弥

あんなの絶対
おかしいでしょ?

卯木莉子

私だってそう思う

卯木莉子

あんな人──

卯木莉子

今すぐにだって
殴ってやりたいよ

多良木音弥

だったら──

卯木莉子

でも待って!

卯木莉子

ここは──

卯木莉子

お母さんを信じて

多良木音弥

莉子さん・・・

卯木莉子

お願い・・・

多良木音弥

・・・・・

多良木音弥

わ、わかった・・・

莉子の真剣な目に 音弥は自分の気持ちを 抑えて席に座る

卯木千寿

ふふふ、何それ

千寿は樹を見下すように鼻で笑う

口梨樹

え?

卯木千寿

随分と勝手な話よね?

卯木千寿

そんなに救いたいなら
自分から莉子に
話したらいいじゃない?

口梨樹

あ、いや、それは

卯木千寿

あれでしょ?

卯木千寿

今更自分が何かを
頼めた義理じゃ無い

卯木千寿

どうせ自分から
話したところで

卯木千寿

断られる事は
目に見えてる

卯木千寿

だから私に言わせよう

卯木千寿

嫌な役を私に
やらせよう

卯木千寿

そういう事よね?

口梨樹

いや、それは・・・

卯木千寿

貧乏くじを自ら
引に行くくらいの覚悟

卯木千寿

そのくらいは
持ってた方が
いいんじゃ無いかしら?

口梨樹

・・・・・

卯木千寿

それに開口一番が
謝罪じゃない事にも
私は納得がいかないわ

卯木千寿

不倫して家族を捨てた
事への謝罪はなし?

口梨樹

いや、それは当然
申し訳ないと思ってる

卯木千寿

いいえ、あなたは
思ってないのよ

卯木千寿

だからコソコソと
私ひとりを呼び出して
こんな話をしたのよ

卯木千寿

本当に申し訳ない
ってそう思ってるなら

卯木千寿

私と莉子を呼び出して
正々堂々正直に
言うべきじゃない?

口梨樹

・・・・・

卯木千寿

それに仮に莉子が
ドナーになったとして

卯木千寿

それが原因で
死んだりしたら

卯木千寿

あなた・・どう
責任取るつもりなの?

口梨樹

いや・・それは

卯木千寿

こういう話なら尚更
直接伝えるべきじゃない?

卯木千寿

悪いけど莉子に
そんな危ない橋を
渡らせるわけにはいかない

口梨樹

・・・・・

卯木千寿

私ね──

卯木千寿

貴方には
申し訳なかったって

卯木千寿

そう思っていたのよ

口梨樹

え?

卯木千寿

自分の一方的な愛を
貴方に押し付けてしまった

卯木千寿

貴方に息苦しい思いを
させてしまった

卯木千寿

貴方の逃げ道を
全て奪ってしまてから

卯木千寿

貴方には不倫という
選択肢しかなかった

卯木千寿

そう思っていたの

卯木千寿

ついさっきまでは

口梨樹

・・・・・

卯木千寿

自分を責めていたのが
馬鹿らしく思えるわ

千寿は黙って立ち上がる

口梨樹

ま、待ってくれ千寿

口梨樹

せめて莉子に話だけでも

口梨樹

俺は──

卯木千寿

もう私たちは
離婚した時点で
何の関係もないの

口梨樹

・・・・・

卯木千寿

それにひとみさん?

口梨ひとみ

は、はい・・・

卯木千寿

これは不倫した罰

卯木千寿

だなんて言うつもりは無い

卯木千寿

けど──

卯木千寿

貴方もこの人と同じ

卯木千寿

自分から莉子に頭下げる
くらいの事やっても
良かったんじゃない?

卯木千寿

自分の子供なんでしょ?

口梨ひとみ

・・・・・

卯木千寿

私だったら自分で
直接伝えるわ

卯木千寿

莉子の為だった
何だって出来るもの

卯木千寿

貴方は違うの?

口梨ひとみ

・・・・・

卯木千寿

呆れたわ・・・

卯木千寿

その程度の覚悟で
子供を救いたいなんて
口にしないでちょうだい

口梨ひとみ

・・・・・

卯木千寿

話は以上よ

卯木千寿

さようなら

卯木千寿

もう会う事はないわ

千寿はそのまま振り返らず 店の外に出ていく

口梨樹

・・・・・

多良木音弥

何も心配する必要
無かったね

卯木莉子

うん・・・

莉子はうつむいたまま 顔を上げない

多良木音弥

莉子さん?

多良木音弥

どうかした?

卯木莉子

私ね──

卯木莉子

本音を言うと
不安だったの

多良木音弥

不安?

卯木莉子

お母さんはいまだに
お父さんの事が好きで

卯木莉子

もしかしたら
さっきのお願い

卯木莉子

聞き入れるじゃ
ないかって

卯木莉子

不安だった・・・

多良木音弥

莉子さん・・・

卯木莉子

でもそんな事
全然なかった

卯木莉子

私・・お母さんの事

卯木莉子

全然見れてなかった

多良木音弥

お義母さんと
同じ事言ってるよ

卯木莉子

え?同じ事?

多良木音弥

全然見れてなかったって

卯木莉子

音弥くん・・・

多良木音弥

これから知って
いけばいいんだよ

多良木音弥

ね?莉子さん

卯木莉子

うん・・・

多良木音弥

失った時間は
取り戻せないって
人は言うかもだけど

多良木音弥

俺は必ずしも
そうとは言えない
って思うよ

卯木莉子

え?

多良木音弥

けどこれからの時間を
互いに生きていけば

多良木音弥

失った時間を
取り戻す事だって出来る

多良木音弥

それが家族だって
俺はそう思う

卯木莉子

そうだね

卯木莉子

私・・

卯木莉子

もっとお母さんって人を
知って行きたい

卯木莉子

そしてお母さんに
もっと私を
知ってもらいたい

多良木音弥

きっと出来るよ

卯木莉子

ありがとう

卯木莉子

音弥くん・・・

多良木音弥

さぁ!俺たちも
戻ろうか

卯木莉子

うん♬

大食いの彼女には秘密がある

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