テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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人に優しくしたら、自分が壊れた。

第6話 - 第６話

2021年03月17日

#ミステリー

#いじめ

#学園

#ホラー

#青春恋愛

#ドラマ

クリオネ

平澤由佳里

(宮坂さん…)

平澤由佳里

(一体、私に見せたいものってなんなの？)

平澤由佳里

(もちろん、いいものじゃないんだろうけど…)

平澤由佳里

(とりあえず、体育倉庫に行ってみよう)

平澤由佳里

(ん？)

平澤由佳里

(話し声…？)

おそるおそる、体育倉庫の中を覗いてみた

宮坂樹里

ねぇ、私のことだけ見てよ…勇也

上原勇也

見てるじゃん…今は（笑）

平澤由佳里

(宮坂さんと…上原くん…？！)

平澤由佳里

(こんな場所で、何して…)

宮坂樹里

あんた…平澤のこと好きなの？

上原勇也

俺が？（笑）

上原勇也

前から言ってるだろ？

上原勇也

俺は誰とも付き合わない主義だって

平澤由佳里

……！！

宮坂樹里

じゃあ、私のことは？

上原勇也

…お前は特別（笑）

上原勇也

だってさ、お前って親の地位と金で何でもできるじゃん？

上原勇也

人を動かしたり、陥れたりはもちろんだけど

上原勇也

俺のカンニング疑惑を帳消しにしたり（笑）

宮坂樹里

…ふふっ

宮坂樹里

あんたが成績優秀でいられるのは、この私のおかげなんだからね？

上原勇也

あぁ、ほんと感謝してるよ

上原勇也

おかげで、うちのうるせぇバカ親たちも静かになったし（笑）

宮坂樹里

それだけなの？

宮坂樹里

私の存在価値って…

上原勇也

…何が望みなんだよ？

宮坂樹里

私はこんなにも勇也のことが好きなのに…

上原勇也

…付き合うのは無理だよ

宮坂樹里

じゃあ、今すぐここで抱いて？

上原勇也

ええ？

宮坂樹里

だってさっきは、平澤に迫ってたじゃん

宮坂樹里

したいんでしょ？

宮坂樹里

なら、いつもみたいに私としよ？

平澤由佳里

(上原くんっ…！)

平澤由佳里

(やめて…)

上原勇也

仕方ねえなぁ

由佳里が見ている中、２人は抱き合って絡み合い始めた

平澤由佳里

(いや…嫌だよ、こんなの…！)

平澤由佳里

(上原くん…！！)

宮坂樹里

あっ…勇也ぁ…

宮坂樹里

好きぃっ…！

平澤由佳里

(私のこと…好きだって言ってくれたのに…)

平澤由佳里

(あんなに優しくしてくれたのに…)

平澤由佳里

(全部、嘘だったの…？！上原くん…！)

宮坂樹里

………

由佳里の視線に気付き、目が合った樹里は勇也の背中越しにニヤリと笑った

平澤由佳里

(そう…)

平澤由佳里

(これが、あなたが私に見せたかったものだったんだね…！)

平澤由佳里

(ひどい…！)

平澤由佳里

(こんなの、ひどすぎるよ！)

平澤由佳里

(ねぇ、上原くんっ…！！)

悔し涙を滲ませながら、由佳里はその場から走り去った

上原勇也

ハァ、ハァ、ハァ

宮坂樹里

あっあっ…あんっ…

上原勇也

何だよお前…

上原勇也

なんか、いつもよりえらくウルサイな…

宮坂樹里

ふふっ

宮坂樹里

なんだか、いつもより感じちゃうの…！

宮坂樹里

……すっごく、ゾクゾクしちゃう

事が終わり、乱れた服装を直し始めた

上原勇也

…もういいだろ？

上原勇也

帰ってゲームしたいし

宮坂樹里

……ねぇ勇也

上原勇也

ん？

宮坂樹里

なんか、いつもよりエッチが淡白だったんだけど、なんで？

上原勇也

そうかな？

宮坂樹里

うん

宮坂樹里

…あんまり性欲なさそうな感じっていうか

上原勇也

あぁ、そりゃあ２日連続だから仕方ないよ

宮坂樹里

…２日連続？

上原勇也

あ…

宮坂樹里

昨日って、あんた平澤を部屋に入れたよね？

宮坂樹里

もしかして……平澤とヤッたの？

上原勇也

いや…あの、その…

宮坂樹里

私は告白しろとしか言ってなかったよね？！

上原勇也

…仕方ないじゃん

上原勇也

思ってた以上に可愛かったから、つい…

宮坂樹里

……！！

上原勇也

別にお前とは付き合ってもないし、浮気でも何でもないじゃん

宮坂樹里

キスだけでも許せないのに…っ

宮坂樹里

どういうつもりよっ！！

宮坂樹里

私の言いつけが守れないの？！

上原勇也

俺はお前に言われた通りにやってるだろ

上原勇也

平澤を騙して、その気にさせて、こんな所に呼び出されてもノコノコ来てやったんだし！

上原勇也

これ以上、俺のこと縛りつけるつもりなら…

上原勇也

お前との関係も考えさせてもらうけど？

宮坂樹里

……っ

上原勇也

なぁ…スネんなよ樹里

上原勇也

平澤のことは…なんとも思ってないし

宮坂樹里

…本当？

上原勇也

ああ

上原勇也

平澤のことは、ちょっとした遊びだよ…

上原勇也

だからさ、平澤のこといじめる理由なんて…ないんじゃないのか？

宮坂樹里

……あんた、平澤のこと庇おうとしてない？

上原勇也

そ、そんなんじゃないよ

宮坂樹里

そう…

宮坂樹里

じゃ、さっき私たちがここでしてたこと…

宮坂樹里

平澤が見てたとしても、問題ないよね？（笑）

上原勇也

お、お前…

上原勇也

ここへ呼んだのか…？！

宮坂樹里

だったら何？

宮坂樹里

ちょっとした遊びなら、別に見られたってあんたは何も傷つかないでしょ？

上原勇也

……っ

宮坂樹里

じゃ、明日から…私の自由にさせてもらうね

樹里は不気味に微笑むのだった

平澤梨沙

おかえり！お姉ちゃんっ！

平澤由佳里

ただいま…

平澤梨沙

…どうしたの？

平澤梨沙

泣いてるの？

平澤由佳里

な、なんでもないよ…

平澤梨沙

なんでもなくないでしょ？

平澤由佳里

……失恋しただけだから

平澤梨沙

失恋って…

平澤梨沙

例の、上原くん…？

平澤由佳里

……うん

平澤由佳里

私がバカだった…

平澤由佳里

何も考えずに、自分の気持ちだけで軽はずみな行動して…

平澤由佳里

だから、当然の報いなの

平澤梨沙

お姉ちゃん…

平澤由佳里

…ごめんね、梨沙

平澤由佳里

私、もう大丈夫だから！

平澤由佳里

さ、晩御飯にしよう？

平澤梨沙

あ…私ね、お姉ちゃんの大好きなハニードーナツ揚げたんだ

平澤由佳里

…本当？

平澤梨沙

うんっ！

平澤梨沙

お姉ちゃん…学校にバイトに、忙しいでしょ？

平澤梨沙

だから、たまには甘い物食べてホッとしてもらいたくて…

平澤由佳里

梨沙…

平澤梨沙

ねっ？だから…

平澤梨沙

一緒に食べよ？

平澤由佳里

…うん、ありがとう

平澤由佳里

ありがと、梨沙…っ！

平澤由佳里

すっごくおいしいよ、このハニードーナツ！

平澤梨沙

本当？！

平澤梨沙

よかったぁ！

平澤由佳里

本当、甘くて…

平澤由佳里

涙…出ちゃいそうなくらい、甘ったるくて…！

由佳里の笑顔に、涙が伝ってポタッとテーブルに落ちた

平澤梨沙

お姉ちゃん…

平澤由佳里

ごめん…！

平澤由佳里

こんな、弱いお姉ちゃんで…ごめんっ…！

平澤由佳里

たかが失恋ごときで…泣いてる場合じゃないのに…

平澤由佳里

私たちは、２人で力合わせて生きてかなきゃいけないのに…！

平澤由佳里

ごめんね、梨沙…！

平澤梨沙

どうして私に謝るの？

平澤由佳里

だって…

平澤梨沙

ねぇ、お姉ちゃん、私…もういつまでもお姉ちゃんにお世話してもらわなくちゃいけない子供なんかじゃないんだよ

平澤梨沙

料理だってまだまだお姉ちゃんみたいに上手にはできないけど…

平澤梨沙

おいしいハニードーナツだって作れるし

平澤梨沙

私が、誰よりもお姉ちゃんの味方でいてあげられる

平澤由佳里

梨沙…！

平澤梨沙

お婆ちゃんが死んじゃってから…

平澤梨沙

お姉ちゃんは彼氏を作ってデートすることもなく、いつも私のそばで笑ってくれてた

平澤梨沙

だから私、パパやママやお婆ちゃんがいなくても寂しい思いなんてしたことがないんだよ？

平澤梨沙

だからね、もう…頑張りすぎなくていいよ…

平澤梨沙

自分の気持ちに、素直に生きてよ、お姉ちゃん…！

平澤由佳里

……っ！

平澤由佳里

そっか…

平澤由佳里

自分の気持ちに、素直に…か

平澤梨沙

そうだよ

平澤梨沙

お姉ちゃん、上原くんのこと…

平澤梨沙

好きなんでしょ？

平澤由佳里

………

平澤由佳里

うん…

平澤由佳里

(あの時、上原くんが言ってた…)

平澤由佳里

(私のことが心配だって…)

平澤由佳里

(『やっぱり、こんなの受け入れられない』って言葉が引っかかる…)

平澤由佳里

(まさか…)

ピンポーン

平澤梨沙

あれ…？

平澤梨沙

誰だろ、こんな時間に…

平澤由佳里

本当だね

平澤梨沙

私、出てくるね

梨沙が玄関のドアを開けると、そこには…

上原勇也

あ…、こんばんは

平澤梨沙

………

上原勇也

あ、すみません…こんな時間に

上原勇也

あの、平澤…由佳里さんの家ですよね？

平澤梨沙

もしかして…上原くんですか？

上原勇也

えっ…あの、はい！

平澤梨沙

…上がってもらえませんか？

上原勇也

……え？！

平澤由佳里

梨沙？

玄関に顔を出した由佳里は、訪問者の姿を見て凍りついた

平澤由佳里

上原くん？！

上原勇也

あ、あの…

上原勇也

ごめん、突然家なんか来ちゃって…

上原勇也

さっきから何度もLIMEや電話しても平澤、出てくれないから…

平澤由佳里

……ど、どうして？

平澤由佳里

また…私のこと、騙しに来たんじゃ…？！

上原勇也

違うんだ！

上原勇也

頼むよ、平澤…

上原勇也

俺の話を聞いてくれ！

平澤由佳里

………

平澤梨沙

…はいはーいお二人さんっ

平澤梨沙

とりあえず、玄関先でするような話じゃなさそうだから…

平澤梨沙

中でハニードーナツでも食べながら、話さないっ？（笑）

平澤由佳里

り、梨沙…？！

平澤梨沙

ねぇ、お姉ちゃん

平澤梨沙

上原くん、こんなに髪振り乱して、汗だくになってここまで来たんだよ？

平澤梨沙

人を裏切ったり、騙したりするのにこんなに必死な人なんて…いないよ

平澤梨沙

…そうでしょ？上原くん…

上原勇也

……君は…妹さん？

平澤由佳里

………

平澤由佳里

それで、なんなの？話って…

上原勇也

ごめん、平澤…

上原勇也

俺、お前に嘘ついて騙してた

平澤由佳里

……それは知ってる

平澤由佳里

あなたが、宮坂さんに弱みを握られてて逆らえないことも…

平澤由佳里

あの、体育倉庫で…２人の会話を聞いたから

上原勇也

……っ

平澤由佳里

あれは私を陥れるために、2人で計画したことだと思ってたけど…違うの？

上原勇也

違う…

上原勇也

俺は、何も聞かされてなかった

上原勇也

ただ、アイツの…樹里の言う通りに、平澤を家に呼んで…

上原勇也

お前に嘘ついて告白してその気にさせて…

上原勇也

次の日から無視する、はずだったんだ

平澤由佳里

宮坂さんに、そうするように指示されたんだね…？

上原勇也

うん、そうなんだけど…

上原勇也

俺、最初はそれでもいいと思ってた

平澤由佳里

え？

上原勇也

アイツの言うこと聞いてたら俺にもいろいろと都合がいいから

平澤由佳里

………

上原勇也

だからさ、誰が誰にいじめられようが、俺にとってはどうでもいいことだったんだ

上原勇也

だって実際…姫川がいじめられてても、誰も助けようとなんてしなかっただろ？

上原勇也

…俺も含めてみんな、我が身が第一で所詮は他人事なんだよ

上原勇也

直接いじめてなくても、みんなやってることは加害者と何も変わらない

上原勇也

でも…平澤は違った

平澤由佳里

………

上原勇也

イジメに対してまっすぐに闘うって言える平澤のこと見てて…

上原勇也

やっぱり、こんなの違うって思った…

上原勇也

でも、もうそんなの遅かった

上原勇也

俺が平澤のこと庇おうとしたら、逆に樹里がお前に何やらかすかわかったもんじゃない…！

上原勇也

だからアイツには表面上、従ってるふりしてたんだけど…

平澤由佳里

けど…？

上原勇也

アイツ、言ってたんだ

上原勇也

平澤がいじめられてても、絶対に助けるなって

上原勇也

明日から自分の自由にさせてもらうって…

平澤由佳里

………

平澤由佳里

じゃあ、明日から…

平澤由佳里

私へのイジメが始まるってことだね？

上原勇也

多分…そう

上原勇也

だから、今日のうちにそのことどうしても伝えたくてここへ来たんだ

平澤由佳里

そうだったんだ…

上原勇也

なぁ、今からでも休学するとか…

上原勇也

なんとか逃れられないかな？

上原勇也

俺、平澤がいじめられてる所なんて見たくないし

上原勇也

俺がそれを助けても逆効果なんだ…！

上原勇也

何もせず見てるだけなんて…俺にはできない

平澤由佳里

……ありがとう、上原くん

平澤由佳里

そんなふうに思ってもらえてるだけで…私には充分だよ

上原勇也

平澤…まさか…

平澤由佳里

休学もしないし、私は逃げたりしない

平澤由佳里

真正面から戦ってやる…！

姫川麗蘭

例の写真、山中さんに見せたよ

宮坂樹里

ふーん

宮坂樹里

で、どうだったの？

宮坂樹里

山中と平澤の友情は無事に壊せたの？

姫川麗蘭

それが…

姫川麗蘭

山中さんが、写真のことあまり信じられないみたいで…

宮坂樹里

はあ？

宮坂樹里

写真はあんたがプロに頼んで完璧に加工するって言ったよね？

宮坂樹里

だからわざわざ使ってやったのに、私の優しさを棒に振るつもり？

姫川麗蘭

ち、違うの！

姫川麗蘭

写真は完璧に加工できてたんだけど…

姫川麗蘭

思った以上に山中さんが平澤さんのこと信用してるみたいで

姫川麗蘭

ごめんなさい、次はちゃんとうまくやるから！

宮坂樹里

ブス川のくせにしゃしゃり出るからだよ

宮坂樹里

まぁいいわ

宮坂樹里

違う手を考えるから

宮坂樹里

あんたはそのまま、ブス川らしく私の言いつけ通りに動きなさいよ

姫川麗蘭

うん、わかった！

宮坂樹里

あんたが平澤潰しに協力するって言うから使ってやってるってこと、わかってる？

姫川麗蘭

うん、もちろんだよ

宮坂樹里

でもまぁ、まさかあんたがレズで山中を狙ってるなんて…

宮坂樹里

平澤も思いもしないだろうね（笑）

姫川麗蘭

…そうだね

姫川麗蘭

私は元々、山中さんと仲良くなるために平澤さんに近付いたから

姫川麗蘭

平澤さんは、いじめられてる私のことを助けてる気でいるけど…

姫川麗蘭

平澤さんさえいなくなれば、山中さんは私のものだから…

姫川麗蘭

だからね、そのためなら私、何でもするよ

宮坂樹里

…マジでキモイよね、あんた（笑）

宮坂樹里

いくら山中がレズに目覚めることがあったとしても、あんたみたいなブスはお断りなんじゃない？（笑）

姫川麗蘭

…そんなことにならないように、うまくやるつもりだよ

宮坂樹里

あっそ

宮坂樹里

それは勝手にすればいいけど、私はあんたへのイジメ、やめないからね（笑）

姫川麗蘭

そんな…どうして？！

姫川麗蘭

私、平澤さんのことだって協力してるのに！

宮坂樹里

何が協力だよ（笑）

宮坂樹里

役立たずのくせに

宮坂樹里

私、平澤のこと本気で殺したいほど憎いの

宮坂樹里

私の勇也を…生意気に奪おうとしたあの女が！！

宮坂樹里

わかるでしょ？

姫川麗蘭

…うん

姫川麗蘭

私も、真世ちゃんと親友のつもりでいるあの子が…

姫川麗蘭

大嫌いだから

人に優しくしたら、自分が壊れた。

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