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キーンコーンカーンコーン…

1限目の開始を告げるチャイムが鳴る。

それでもぽつぽつと数席、埋まっていない所がある。

先生

じゃあ、1限目始めるぞー

先生

あと、電車通学組はまた電車が遅れてるっていう連絡が来てるからそのうち来るだろう

先生

じゃあ、教科書54ページ開いて〜

先生は黒板へ顔を向けると、チョークを走らせていく。

ゆな♡

(今日も電車遅れてんのかー…)

ゆな♡

(まあS線、すぐ遅延するもんね…)

ゆな♡

(奈緒どのくらいでこれるんだろー?)

ゆな♡

(聞いてみようかな)

ゆな♡

(席後ろだし、バレないよね)

ゆな♡

なお、また電車遅れてるんだって?

奈緒

奈緒

そーなんだよ!!

奈緒

もーほんと多くて笑

奈緒

けどちょっと寝坊して焦ってたからラッキーだった〜

ゆな♡

マジか

ゆな♡

めっちゃラッキーガールじゃんww

ゆな♡

奈緒も寝坊するんだね笑

奈緒

うるさい笑

奈緒

寝坊したら遅延することが多いよww

奈緒

ほーんと、幸運だわぁ🤗

ゆな♡

ゆな♡

マジで強運…
自転車通学のわたしにはそんなシステム無いしな😑

ゆな♡

あとどのくらいで来れそうなの?

奈緒

奈緒

んと、あと15分くらいで乗れると思う!

奈緒

けど、遅延証明貰うのに並ぶから時間かかるし…

奈緒

まあ、1限は間に合わないかな笑

ゆな♡

ゆな♡

えー

ゆな♡

真面目に勉強してる私と代わってほしい笑

ゆな♡

数学ほんとだるい…

奈緒

奈緒

授業中スマホいじってるやつが真面目とか言うな👊

ゆな♡

ゆな♡

てへ🤪

ゆな♡

じゃあ真面目に待ってるね♡

奈緒

はいはい笑

1限目が終了して少し。 続々と電車通学のクラスメイト達が登校してきた。

奈緒

結奈ー、おはよー!

ゆな♡

お、遅延組が来ましたなー?

奈緒

合法で遅刻しちゃったー。ふふ。
数学どうだった?

奈緒は笑みを浮かべて私に問いかける。

ゆな♡

えー…普通だったと思うよ?
寝ててあんまり覚えてないけど…

奈緒

覚えてないんかーい!

ゆな♡

あはは!
奈緒こそ、数学1時間分遅れてるんだからちゃんとやらないとね?

奈緒

早起きするのも嫌だけど、それも嫌だなー

ゆな♡

ほんと、奈緒はやる気出さないな〜

奈緒はいわゆる夜型人間。 電車通学だというのに朝にはめっぽう弱いらしく、寝坊したというRINEがよくくる。

…まあ、そんなときS線は遅延してるけど。

奈緒

ねー、次なんだっけ?

ゆな♡

えっと…次は現国!

奈緒

ありがと!
教科書取ってくるね〜

ゆな♡

はいはーい

奈緒が教科書をもって席に着くと同時に2限目を知らせるチャイムが鳴った。

あれからいつも通り学校が終わり、帰宅する。 私は何の気なしに奈緒にRINEを送った。

ゆな♡

なおー

ゆな♡

疲れたーーー

奈緒

奈緒

なに???笑

奈緒

おつかれ笑

ゆな♡

しかも英語、明日の分の予習当てられちゃったし〜

ゆな♡

私も電車通学だったらよかったな笑

奈緒

奈緒

何言ってんの笑

奈緒

いつも遅れてるわけじゃないんだからさ!

ゆな♡

まあ、それもそっか

ゆな♡

でも電車も怖いよね〜

ゆな♡

ぶつかったりしたらホームに落ちちゃいそう

奈緒

まあ、ホームドアも付いてないからね〜
そりゃあ人もバンバン落ちるわな

ゆな♡

あぶなっ

奈緒

まあ

奈緒

気を付ければいいよ

奈緒

黄色い線の外側いればおっけー👌

ゆな♡

黄色い線も割とギリギリな気がするけどねww

奈緒

なんか明日も学校行くのダルいなー笑

ゆな♡

さすがに明日も電車は遅れないでしょ笑

奈緒

えー分かんないじゃん

奈緒

きっと遅れる!笑

ゆな♡

そんなのに希望抱くより早く寝なさい笑

ゆな♡

私は予習やる!!
おやすみ!!😴笑

奈緒

え?ひどくない?笑

奈緒

おやすみ😘

ゆな♡

でもいいよなー。寝坊したら遅延してるってさ

ゆな♡

ダイヤが乱れたら遅れて来れるし…

ブツブツ言いながら、英語の課題を解く。

幸い先生に当てられていたところは比較的簡単な部分で、少し調べれば終わる程度だった。

ゆな♡

はー、終わったあ〜

ゆな♡

さて、寝ようっと

ベッドに横になり、リモコンで部屋の明かりを消す。

ゆな♡

…………

ゆな♡

(…にしても、最近遅延多いなあ)

ゆな♡

(今までこんなに多発することあったっけ…)

枕元に置いていたスマホでS線の遅延について検索してみる。

『S線の相次ぐ人身事故! ホームに棲む地縛霊の仕業か?』

ゆな♡

んなわけ…ないよね

今度は、tmitterで同じように検索してみる。

@あろわな 最近S線のC駅でめっちゃ電車止まるの マジでダルい、こんな遅延証明もらうのに慣れる日が来ると思わなかったわ

ゆな♡

C駅は奈緒の家のとこだ…

@ナウい人 S線まじ止まりすぎエグい てか誰か突き落としてんじゃねえのってくらいえぐいて

ゆな♡

よく止まる路線って確かにどこにでもあるけど…

@さや ドンって音がしたと思ったら電車止まった… どうしようS線トラウマだよ

ゆな♡

………

奈緒

寝坊したら遅延することが多いよww

奈緒

ほーんと、強運だわぁ

奈緒

明日もきっと遅れる!

ゆな♡

………

ゆな♡

(ほんとに運がいいのか…)

ゆな♡

(私には分からないけど…)

ゆな♡

…だめだめ!なんで奈緒を疑ってんの!

ゆな♡

そんなこと、誰だってきっと…

ゆな♡

……

ゆな♡

…………

ゆな♡

はあ…私どうかしてるわ…

早朝。早めに目を覚ました私は、 S線の最寄り駅へと向かっている。 うちの高校の最寄駅でもある。

わざわざ早起きをしてどうしてこんなことをしているかというと…

奈緒のことを疑っている自分がどうしても許せなかったのだ。

奈緒がいたら一緒に行けばいい。 そんなことを思いながら。

ゆな♡

着いた…A駅

最寄りのA駅までは家から徒歩15分。 それなりに近い方だと思う。

改札前にある電子掲示板には、通常通りの電車のダイヤが表示されている。

ゆな♡

(今日は遅延してないんだね。
ならこのまま、奈緒と一緒に折り返そう。
今学校に行っても早過ぎるし。)

改札にICカードをタッチして、C駅方面のホームへと並ぶ。

程なくして、電車が来る。 たくさんの降りる人を待ってから、私は電車に乗り込んだ。

ゆな♡

C駅着いたー。

C駅はA駅から20分程度かかる。 このまま折り返せば、いつもの登校日に間に合うくらいの時間になりそうだ。

一度改札から出て、もう一度電子掲示板を見る。 A駅と同じように、通常通りのダイヤが表示されている。

ゆな♡

(さすがに今日も遅れることは無かったか、私の早とちりだったみたい)

ゆな♡

(というか、友達を疑うなんて本当に失礼なことしてるよね私…)

ゆな♡

(奈緒はまだ来てないのかな?RINEしてみよう)

安堵のため息をつき、スマホを取り出してRINEを送ろうとした時、

ゆな♡

あれ?奈緒…?

自分と同じ制服を着た女の子が駅のトイレから出てくるのが見えた。

ゆな♡

奈緒?!

急いで改札を抜け、奈緒らしき女の子の通った後を追いかける。

駅は人が多く、彼女をすぐに見失ってしまいそうだ。

ゆな♡

(…あ、ちょうど電車もくる時間じゃん)

パタパタと、急いでホームへの階段を駆け下りる。

階段を降りながら、先ほどの女の子がいる場所を探す。

ゆな♡

(いた!真ん中の方か)

自分と同じ制服、見覚えのあるモカ色のカーディガン。さらりとした長い茶髪。 気だるげな立ち姿。

ゆな♡

(やっぱり奈緒だ!)

ゆな♡

(一緒に行こう)

そう思い、ホームへ降り、歩いていると、電車が来るアナウンスが鳴る。

S線○番ホームA駅行き、電車が参りますーー

電車の走る音が近づいてくる。

ゆな♡

(…奈緒?)

スマホを触りながら待つ人だらけのホームで。

私はただ見ていることしかできなかった。

奈緒が、前に並んでいたサラリーマンを、足元まで下げた自分のスクールバッグを蹴って

突き落としたのを。

短い悲鳴をあげたサラリーマンは、ゴンッ!と強い音を立てながら

線路に落ちていった

すぐそばまで来ていた電車は、 そのまま彼の上を走っていった

ゆな♡

奈緒…何してんの…?

私の虚しい言葉は、電車の音や周りの悲鳴に掻き消された。

斜め前から見えた、微笑む奈緒を

私は、恐ろしいと思った

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