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2件
海斗さんのとてもおもしろいのでたくさん見てます❣️
親族
友人
祝福の声とフラワーシャワーが飛び交う中
私たちは腕を組んでヴァージンロードを歩く。
夢にまで見たチャペルでの結婚式。
心から祝福してくれる親族や友人たち。
胸にこみ上げてくるものを感じ、目頭が熱くなる。
和真
胸ポケットからハンカチを取り出し
ソッと私に手渡してくれるタキシード姿の和真。
佐和子
ハンカチを受け取ると
アイラインが崩れないように気をつけながら目頭を押さえる。
間違いなく今日は私にとって人生で一番、幸せな日。
和真
カメラを向ける友人に応えるように私の肩を抱き
顔を寄せた隙に誰にも気づかれないように囁いた。
佐和子
佐和子
少し強気に言いながらハンカチを突き返す。
でも顔は笑顔のまま。
ちゃんと幸せそうに笑えているのだろうか。
やや疑問に思いつつ、顔の筋肉が微かに痙攣するのを堪えた。
和真
隣で少し勝ち誇ったように囁いた和真に敗北感のような悔しさを感じ
言い返してやろうかとも思ったが思いとどまり口をつぐんだ。
言いたいことは山ほどあるけど
今はそれよりも目の前のことに集中しなきゃ。
そう自分に言い聞かせるように何度も何度も唱え
今までにないくらいの笑顔を振りまくことに集中した。
事の発端は、半年前だった。
和真とは大学時代からの腐れ縁で、飲み仲間の1人。
仕事場もアパートもお互い近いともあって2人で呑むこともあるが
未だに数か月に1回のペースで呑んでいる。
そんな和真に飲みに行こうと誘われ
やってきたのは行きつけの居酒屋。
と思いきや、少し小洒落たイタリアンレストラン。
しかも、いつもならワリカンなのに今日は奢ってくれるという。
何か怪しい…
というか怪しいを通り越して怖い気もする。
おかげでせっかくのイタリアンの味もよく分からなかった。
とりあえず、コレを食べてから事の真相を聞こうと心に決め
ケーキを食べようとした矢先、目の前にスッと小さな小箱が置かれた。
──これは何?
私は目の前に置かれた小さな箱に釘付けになってしまった。
それが何かなんて誰が見たって一目で分かる代物で
和真
佐和子
あまりの事に言葉が見つからなかった。
和真
和真
私の真似をしているつもりなのか
気持ちの悪い事に声のトーンを上げ、身振り手振りしだす。
佐和子
佐和子
ピシャリと窘めると冷ややかな目で見返した。
和真
和真
和真
佐和子
佐和子
佐和子
確かに夢にまで見た憧れのシーン。
気丈にふるまってはいるけど内心かなりドキドキしている。
だけど私たちはそういう甘ったるい関係ではなくて。
和真
声を荒立てる私に和真は軽く舌打ちして渋い顔を見せる。
佐和子
言い返しながら、小箱を軽く突き返すが
和真
和真
和真は信じられない言葉と共に
もう一度小箱を私の方に差し出してきた。
その顔は冗談を言っているような感じではなくて
私は程よくアルコールが入っているせいか
頬が熱く鼓動がやけに速まっていく。
そんな訳ないと分かっていながら
ドキドキせずにはいられない自分が悔しい。
佐和子
和真
和真
佐和子
そんなこと言われなくても
男の和真が思っている以上に私は危機感を覚えている。
だからと言って近場で手を打とうか、みたいな流れになっている感じは
どうも否めないものがあって
素直に流れに乗って『それじゃあ』という風にはなれない。
和真
和真
軽く手を合わせ私の様子を覗うように見てくる。
な、と言われても…
さすがに頷くこともできない。
和真
和真
思いもよらない和真の言葉に
私は飲みかけた水を軽く吹き出しそうになった。
佐和子
恥ずかしくて誰にも話したことがなかったのに
何で和真が知ってるの?
和真
和真
プチパニックに陥る私に和真は呆れ気味に返してきた。
佐和子
恥ずかしすぎて顔を真っ赤にさせながら聞き返す。
和真
和真
そこまで言われ、脳裏を横切る記憶は、ただ1つ。
──あの時か…
深いため息とともに頭を抱えながら軽く項垂れてしまった。
和真
和真