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2 - シェア婚 第2話

♥

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2021年06月30日

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佐和子

や、ちょっと待って

佐和子

一回、冷静になろうよ 、ね!

和真に冷静さを取り戻してもらおうと慌ててなだめにかかるが

和真

俺は冷静だけど?

和真

佐和子こそ落ち着けよ

明らかに冷静さをなくしてしたのは私で逆に宥められてしまう。

だけど落ち着けって言われて落ち着ける状況ではなくて

佐和子

本当に ごめん!

佐和子

全然、記憶がないんだけど

佐和子

私、和真に何を話したの?

とりあえず一旦、冷静になって確認しよう。

和真

何を話したかって?

確認する私に和真が順を追って話してくれた。

最初は、いつものように会社の愚痴を交えての談笑。

だけど次第に話は結婚の事に。

次々と寿退社していく先輩や同僚を見送り、気づけば最年長。

度々、言われる上司の心無い言葉と陰口。

久しぶりに実家に帰れば相手も居ないのかとネチネチ嫌味を言われ

世話好きの近所のおばさんにお見合いを勧められる始末。

気づけば仲の良かった友人たちの殆どは結婚し

子供が居て幸せの家庭を築いて、取り残された感が半端ない、と。

挙句の果てに恥ずかしい事に軽く泣きに入ってしまい

止めるのも聞かずに飲み続け

例によって例のごとく酔いつぶれてしまったらしい。

聞けば聞くほど恥ずかしい話に

穴があったら入りたいとはこういうことかと思い知らされてしまった。

佐和子

ごめん

佐和子

毎度のことながら迷惑かけた挙句、みっともない話を聞かせて

和真

いや、別に。俺にとって好都合な話だったし

平謝りする私に和真は思いもよらないことを言いだした。

──好都合?

言っている意味が分からない。

もしかして酔ってる?

和真が飲んだワインの数を指折り数えてみる。

和真

酔ってないって、お前じゃあるまいし

和真

2、3杯くらいしか飲んでない

どうやら私の考えなんてお見通しのようだ。

佐和子

じゃあ、聞くけど

佐和子

好都合って、どういう意味?

全く和真の考えが読めない。

和真

要は俺もお前と一緒で周りに色々言われてウンザリしてんだよ

和真

結婚しないと出世に響くらしいんだけど

和真

俺にはそんな相手はいないし

珍しく和真がぼやくように言葉を吐いた。

和真も同じような事を言われてたなんて初耳だった。

佐和子

和真も大変なんだね

変な仲間意識が生まれ、軽く和真に同情してしまった。

和真

お前にだけは言われたくないけどな

すかさず言われたが

恥を洗いざらいぶちまけてしまった私には返す言葉が見つからなかった。

和真

で、どうする?

どうやらプロポーズは本気らしく、私に考える余地すら与えてくれない。

佐和子

どうするって…結婚は一生問題だよ?

佐和子

和真は本当にいいの?分かって言ってる?

和真

馬鹿じゃあるまいし、分かってるよ

捲くし立てるように言う私に和真は相変わらず淡々と返してくる。

佐和子

でも 分かってるなら普通、結婚しようなんて言わないよね?

ヤバい、結婚というフレーズにドキドキする。

絶対に可笑しいと分かっているのに

『結婚』という文字に完全に舞い上がってしまっている。

和真

だから分かってるって?

和真

それとも俺と結婚するのは嫌か?

佐和子

嫌って言うか…

そんなに正面切って言われると答えにくい。

ぶっちゃけ嫌か、嫌じゃないかって言われると、そこまで嫌じゃない。

だって今もかなり心がグラグラ揺れてるし

心臓がバクバクいっている。

和真

な、別に嫌じゃないだろ?

な、て…

あまりに強気な態度に返す言葉が見つからない。

思わず『いいよ』って言ってしまいそうで怖くなってきた。

和真

あ、言っとくけど結婚と言っても世間的な建前だからな

和真

結婚したからって別に仕事を辞める必要もないし

和真

今の生活を変える必要もない

和真

単なるシェアメイトくらいに思っててくれていいから

──シェアメイト?

それは耳を疑うようなモノだったけど、私にとってあまりに理想的。

でも…

佐和子

じゃあ、もし私に好きな人が出来たらどうするのよ

和真

まあ、それはないとは言い切れないよな

和真

その時は後腐れなく別れてやるよ。それならいいだろ?

別れるって、そんな簡単に…

あまりにもあっけらかんと言ってのける和真に驚きを隠せない。

だけど和真の言うとおり私にとっても和真は好都合な相手なわけで。

和真

ま、佐和子がバツ付くのは嫌だって言うなら

和真

しばらくは様子見ということで籍は入れなくてもいいし

少しでも自分の申し出にマイナスになる事は伏せておけばいいのに。

そんな和真だから縁が切れることなく、長く付き合えたんだと思うし

一緒に居たいと思ってしまう。

包み隠さず正直に話してくれたから最初はあった嫌悪感も不思議と消え

和真との結婚も良いかもと思えてきた。

和真

相手がお前なら楽だし、俺たち上手くやっていけると思わないか?

佐和子

確かにそれは…

確かに和真は気心の知れた間柄で、晒す恥も晒したし考えれば考えるほど好都合で

理想的な相手だ。

和真

俺のプロポーズ受けてくれるだろ?

どことなく自信満々な顔で和真が手を差し伸べてきた。

その様子に私の中の迷いも消えてゆく。

コレは結婚という名の利害一致のルームシェア。

契約成立。

佐和子

分かった。それならそのプロポーズ受けてあげる

やや上から目線で、私はその手を握り返した。

こうして私たちは結婚することになった。

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