テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

とても最低なことをした

100人に聞けば100人が僕を責めるだろう

重くのしかかる罪の意識

できることは、自らの罪を認め 頭(こうべ)を垂れて謝ること

君を死に追いやったあの場所で、懺悔する

だから僕は学校に行く

夏帆

よっ

卓也

おう

卓也

卓也

もしかして夏帆?

夏帆

そー、びっくりした?ちょっと間があったね

卓也

いやだってお前

卓也

変わりすぎだろ

卓也

オトコオンナだった夏帆がめっちゃ美人になってんじゃん

夏帆

そーいう卓也は変わってないねー

卓也

うっせ。こっからバラ色人生が始まるんだっつの

夏帆

それにしてもよく同窓会開くお金あったね

夏帆

去年会社クビになったんでしょ?

卓也

まぁそこはアレよ
俺は昔から人望が厚いからチョイチョイっと…

夏帆

うわー

卓也

まぁそんな話はいいじゃんよ

卓也

それより、この店名物ロシアンルーレットたこ焼き食わね?

卓也

ひりあ小学校同窓会主催者の俺様が奢ってやんよ!

大いに盛り上がる彼らの隅に、冷めた顔つきで烏龍茶を啜る数人の男がいた

クラスメイト(元)

あーうっせ、精神年齢ガキのままだな。アイツ

クラスメイト(元)

だから来たくなかったんだよ。同窓会なんて

クラスメイト(元)

あ、お前も無理やり参加させられたクチ?

クラスメイト(元)

ああ。ほぼ脅迫

クラスメイト(元)

卓也にだろ?俺もそう

クラスメイト(元)

なんか言葉濁してたけど、どうせこの同窓会開く金も誰かからむしり取ったんだろ

クラスメイト(元)

だから会社もクビになるんだよ

クラスメイト(元)

アイツのそういう所本当変わってねーよな

夏帆

ところでさ

夏帆

ひりあ小って言ったら今すっごい噂流れてるんだって

卓也

噂?

夏帆

出るんだってよ

夏帆

ゆーれい

卓也

お前いい年してそんなん信じてんの!?

夏帆

そーやって馬鹿にするでしょ?

夏帆

マジでヤバいらしいんだって

夏帆

急に電気消えたり血文字が発見されたりしてんだって

卓也

お前な、そーやって煽りまくってるやつに限って生きた人間のイタズラだったりすんだぜ

夏帆

いいから聞いて

夏帆

授業以外に1人で図工室に行くと出るんだって

夏帆

通称「ザンゲさん」

卓也

懺悔?

夏帆

「ザンゲさん」に出会ったら、自分の犯した罪を告白して懺悔しないと行けないの

夏帆

もし懺悔しなかったり、赦(ゆる)してもらえなかったら、手首を糸ノコで________ザクッと………

夏帆

なんでも「ザンゲさん」は濡れ衣をきせられて、糸ノコで自分の手首切って自殺した生徒の幽霊らしいよ

夏帆

……………私らが卒業する前にさ、自殺した人いたよね

卓也

……………

卓也

……そういう話止めようぜ

夏帆

何、急に静かになって。怖くなったんでしょー

卓也

はー?どこが怖いんだよ。そんな作り話

夏帆

えー?本当かなー

卓也

そこまで言うんなら、やってやるよ

卓也

明日ひりあ小行ってその噂が本当か白黒つけて来てやるよ

夏帆

お、言ったなー

卓也

あー行く行く。だから死んだ奴の話なんか止めようぜ。酒が不味くなる

手元のウィスキーが急に苦くなった気がした。

1人で図工室に行くと「ザンゲさん」に出会う

確かにそんな噂が流れていた

おかげで図工室は誰も寄り付かないから人気(ひとけ)がない。

僕が1人、掃除が行き届いていない図工室に佇んでいると___

ペタン

スリッパあるいは上靴で

廊下を歩く音が聞こえた

ペタン ペタン

ペタン

それはどんどん近いて来る。 自然僕の目はドアに釘付けになる。

ペタン

ペタン

ペタン

ドアの前で足音が止まった

ガタッ

細く開かれたドアの隙間から、枯れ木のような腕が伸びた

授業以外に1人で図工室に行くと「ザンゲさん」に出会う。 「ザンゲさん」に出会ったら自分の犯した罪を告白しないといけない______________

沈黙

「ごめんなさい」

静かな図工室に、赦しを請う声が響く

この学校には、濡れ衣をきせられて自殺した生徒がいる

18年前

卓也

皆に聞いて欲しい話がある

卓也

俺の消しゴムが盗まれた

夏帆

駄菓子屋で当てたレアキャラのやつ?

卓也

皆ランドセルと鞄を出せ

卓也

俺が犯人を暴いてやる

卓也

卓也

おい、瑛太

卓也

鞄に入ってるコレはなんだよ

卓也

俺の消しゴムだよな?

瑛太

……………え

瑛太

えと……
し、しらな

卓也が机の足を蹴りつけた

卓也

こんなわかりやすく物的ショーコがあって、

卓也

しらばっくれんなよ

卓也

他にもいろいろ盗んでんだろ、このドロボー

あの瞬間から僕の学校生活は大きく変わった

暴力、落書き、パシり… いわゆる虐め。

どれだけ僕はやってない と叫んでも誰も信じてくれない

数日後に、一連の事件の犯人は隣のクラスの女子だったと発覚した

僕の罪は晴れたわけだが、謝罪の言葉は1つもなかった。 簡単に確実にストレス発散できる術(すべ)を見つけた卓也達による

僕の虐めは止まらなかった。

悲しい なんていつしか思わなくなった

代わりに 死んでやる と思うようになった

「ごめんなさい」

ドアを開け、僕の顔を見るや否や 顔をひきつらせ地に手をついて謝罪し始めた男____

18年前に消しゴムがないと騒ぎ立て、僕を自殺に追いこんだ卓也。

卓也

本当はわかってたんだ

卓也

瑛太が俺の物を盗った犯人じゃないって

卓也

あの時の俺は本当に子供だった

卓也

親どうしが仲がいいからって、経済的に裕福じゃないお前の世話を任されてイライラしてたんだ

卓也

だから真犯人がわかっても、ずっと瑛太でストレス発散してた

卓也

本当にごめん、ごめんなさい

卓也

まさか死ぬなんて思ってなかったんだ

卓也

ごめんなさい、ごめんなさい

かつての虐めの主犯の悲痛に満ちた声が図工室に木霊した

その時

かろうじて刺していた日の光が消え、図工室は完全な闇に包まれた

卓也

あぁあぁ、嫌だ死にたくない赦してください。ごめんなさいごめんなさい

卓也

ごめんなさいぃぃぃぃぃ…

恐怖に彩られた絶叫の尾を引きながら卓也が転がるように図工室から退散する

瑛太

…………………

闇に満ちた図工室で、僕は過去に思いを馳せる……

18年前、卓也の消しゴムを盗んだのは

僕なんだ

僕は貧しい家庭で育った

消しゴムを買う余裕すらなかった

だから時々、金持ち風を吹かせている卓也の私物を盗んでいた。 僕も卓也が嫌いだった。

あの日も、僕は卓也が散々自慢していたレアキャラの消しゴムを自分の鞄に忍ばせた

それをたまたま隣のクラスの女子に見られた

女子は心底軽蔑した顔で僕の行為がいかに最低か語り、そして僕の人格まで否定した

ムカついた

だから僕が盗んだ物全部彼女の鞄にぶちこんだ 彼女を犯人に仕立て上げた。

それでも僕に対する虐めは止まらないから ムカついた僕は死を選んだ

図工室で僕が命を絶つ寸前

彼女が来た

ものすごい顔で僕を睨み付け、彼女は言った

「自分だけ逃げるの?」 「どれだけ最低なことをしてるかわかってる?」

そして彼女は自らの手首を糸ノコで切って自殺した

とても最低なことをした

だから僕は今日も暗い図工室で

彼女に懺悔する

そして元の明るさに戻った図工室に

彼女の返事が血で描かれる

コンテスト受賞作品集

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

488

コメント

14

ユーザー

懺悔さん…すごくゾクゾクしました…!ご参加ありがとうございます🙇‍♀️

ユーザー

とっても深く、そして怖かったです。 最初は普通のホラーかなと思いましたが読後はなんとも言えない感情になりました。 とてもおもしろかったです!

ユーザー

解説らしき物です。必ず全部読んでからお読みください ・僕=瑛太です。冒頭の一人称は「僕」でしたね…… ・意外とクラスメイトに嫌われていた卓也。夏帆は知ってて言ったのかは貴方の想像にお任せします ・「ザンゲさん?は結局瑛太ではないですよ 読んでくださりありがとうございます❗

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚