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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

三次 未角(ミカド)

ちょっと、どういうことなの!?

五木 鱗子(リンコ)

十五夜(ジゴヤ)……

七面 美羽(ミウ)

宇山さんが、ですか……?

宇山 珀兎(ハクト)

えっと……

宇山 珀兎(ハクト)

(なんだ、これ!?)

周囲から向けられる

視線、視線、視線

宇山 珀兎(ハクト)

(みんなが……僕を見てる?)

その異様な光景に

心臓が跳ねた

どくん!

宇山 珀兎(ハクト)

……っ!

五木 鱗子(リンコ)

……どうしたの?

七面 美羽(ミウ)

か、顔が青いです

宇山 珀兎(ハクト)

だ、だって……

宇山 珀兎(ハクト)

みんなが

三次 未角(ミカド)

みんなが、どうかした?

宇山 珀兎(ハクト)

だから、さっき!

だけど周囲を見渡すと

クラスの誰も 僕を見てはいなかった

宇山 珀兎(ハクト)

あれ……?

宇山 珀兎(ハクト)

ごめん。何でもない

原石 六空(ムク)

おい、お前ら

宇山 珀兎(ハクト)

(お前らって。僕らのこと?)

宇山 珀兎(ハクト)

(さっきは、僕と関わらないって言ってたのに……)

原石 六空(ムク)

授業、始まるぞ

宇山 珀兎(ハクト)

……

それからも、原石くんは

何もなかったように 僕に接してくれた

クラスメイトの一人として

一方、そのころ。

ハクトを除く、 クラスメイト達は……。

三次 未角(ミカド)

(転校生が、よそ者じゃないなんて)

三次 未角(ミカド)

(お父様たちは、なにを考えているの!?)

三次 未角(ミカド)

(あたしが、跡取りじゃないから?)

三次 未角(ミカド)

(それとも、お兄様たちが居るから?)

三次 未角(ミカド)

(いずれ村を出ていく娘は、用無しってこと!?)

三次は悔しそうに 顔を歪め、唇をかんだ。

五木 鱗子(リンコ)

(そうか。今年は身代わりがいないのか……)

五木 鱗子(リンコ)

(それならば、どうやって自分の身を守ればいい?)

五木 鱗子(リンコ)

(考えないと!)

五木 鱗子(リンコ)

(でないと、今年選ばれるのは……)

五木 鱗子(リンコ)

(私に違いない!)

五木 鱗子(リンコ)

ぐっ……

五木 鱗子(リンコ)

(こんな、欠陥さえなければ。私が選ばれる事なんて、なかったのに)

五木はわなわなと 肩を震わせた。

七面 美羽(ミウ)

(きっと、わたしです)

七面 美羽(ミウ)

(“十五祭(じゅうごさい)”に選ばれてしまうのは)

七面 美羽(ミウ)

(だって、だって、わたしは……)

七面 美羽(ミウ)

ふふ……

七面 美羽(ミウ)

(あぁ、ダメです!)

七面 美羽(ミウ)

(笑っては、いけないのです!)

七面 美羽(ミウ)

(でも、きっとそう。そうに決まっています)

七面 美羽(ミウ)

(とうとう、御三家の番がきたのですね)

七面 美羽(ミウ)

(ああ、七三五様……)

七面 美羽(ミウ)

(ずっとずっと、憧れておりました!)

七面 美羽(ミウ)

(人として生を受け、神のお付き様となられた貴女を)

七面 美羽(ミウ)

(でも、ご安心ください。七三五様)

七面 美羽(ミウ)

(七面家に伝わる“七の儀”の秘密)

七面 美羽(ミウ)

(わたしは、ちゃーんと、知っていますからね?)

七面 美羽(ミウ)

ふふ、ふふ……

七面は引きつった笑みを 浮かべている。

原石 六空(ムク)

(一応、忠告はしておいたけど……)

原石 六空(ムク)

(アイツ、本当に何も知らないみたいだな?)

原石 六空(ムク)

(くそっ!)

原石 六空(ムク)

(人の気も、知らないで……)

原石は少し離れた席から ハクトを睨んでいた。

その視線が、悪意が。

彼の中に眠りし者を 呼び起こすための

糧になるとも、知らず……。

鐘が鳴る

授業の終わりを知らすため

生徒の疲れを癒すため

×××の

憂いを晴らすために

宇山 珀兎(ハクト)

(授業、終わった……)

宇山 珀兎(ハクト)

(だけど)

僕は周囲を見渡す

今日、知り合ったばかりのクラスメイト

その中でも 一際目立つ、4人

三次 未角(ミカド)

ねえねえ、ハクトくん!

三次 未角(ミカド)

ハクトくんって、呼んでもいい?

宇山 珀兎(ハクト)

いいよ、三次さん

五木 鱗子(リンコ)

ちょっと、みかど!

五木 鱗子(リンコ)

アンタ初日から、馴れ馴れしくない?

宇山 珀兎(ハクト)

あはは……

宇山 珀兎(ハクト)

気にしないで、五木さん

七面 美羽(ミウ)

わ、わたしは……

七面 美羽(ミウ)

宇山さんと、お呼びさせていただきます

宇山 珀兎(ハクト)

そんなに気を使わないでよ。僕たち、同級生だよ?

宇山 珀兎(ハクト)

ね?七面さん

原石 六空(ムク)

……

三次 未角(ミカド)

ちょっと、ムクー

三次 未角(ミカド)

黙ってないで、こっちに来なさいよー

原石 六空(ムク)

俺、騒がしいのは……苦手……

宇山 珀兎(ハクト)

そうなんだ

宇山 珀兎(ハクト)

騒いじゃって、ごめんね。原石くん

原石 六空(ムク)

……別に

三次 未角(ミカド)

もう、ムクってば!ホント失礼ね!

宇山 珀兎(ハクト)

(でも、なんでだろう?)

宇山 珀兎(ハクト)

(初めて会った気がしないな)

宇山 珀兎(ハクト)

(この4人とは)

「懐かしい」

そんな言葉では 言い表せない感情が

僕の胸に、芽生えていた

宇山 珀兎(ハクト)

ただいま

宇山 兎和子(トワコ)

おかえり、ハクト

宇山 兎和子(トワコ)

学校はどう?友だちは、できそう?

宇山 珀兎(ハクト)

1日目から、友だちなんてできないよ。小学生じゃないんだから

宇山 兎和子(トワコ)

そう……

宇山 珀兎(ハクト)

あ、でも!

宇山 珀兎(ハクト)

みんな、いい人だったよ?

宇山 兎和子(トワコ)

本当?それは、よかったわ!

宇山 珀兎(ハクト)

(母さんには、聞けないな。十五夜のこと……)

宇山 珀兎(ハクト)

(聞いたら、きっと。父さんのことを思い出させてしまう……)

十五夜は母の旧姓だ

父も母も この月無村の出身

父の仕事の事情で 上京したと聞いている

宇山 珀兎(ハクト)

(なのに)

宇山 珀兎(ハクト)

(僕は引っ越してから1度も、この村に来たことがない)

宇山 珀兎(ハクト)

(おじいちゃんも、おばあちゃんも。ほかの親戚とも)

宇山 珀兎(ハクト)

(みんな、この村に居るはずなのに……)

不安が胸を過ぎて 心臓が、はねる

どくん!

『その美、その才。すでに人にあらず』

(何が人にあらずや!)

(こないなこと、 人のする事やない!)

 

痛い、痛い!

 

頭が割れそうや……!

「兄やんが居てる!」

「しっかりせい!」

 

あぁ、兄やん……覚えとる?

 

うちが、儀式を受けた日のことや

「ああ、覚えとるよ」

 

「おつきさま」になれる言われて、うち、嬉しかったんよ?

 

なあ、兄やん

 

ほんに、うちがなりたかったもの、知っとる?

そう言って女が指さす その先には

見事に、まるい月……

 

うちは、うちはな?

 

アレに、なりたかったと……

天を仰ぐその姿 神のお付きに相応しく

「ああ、なれるけん」

諦めにも似た寂しさが 胸をしめつけた

宇山 珀兎(ハクト)

(だから行くな……)

宇山 珀兎(ハクト)

(どこにも行くな!)

伸ばした手は空をつかむ

宇山 珀兎(ハクト)

あれ……?

宇山 珀兎(ハクト)

また、夢?

いつの間にか 日は暮れていて

宇山 珀兎(ハクト)

僕……

宇山 珀兎(ハクト)

なんで、泣いてるんだろう?

頬を伝うのは 熱い雫……

窓からこぼれる 月明かりに

心臓が跳ねた気がした

七三五様〜ツキとウサギのひめごと〜

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