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黒髪が風に靡く。 風が頬を掠める。 道行く人々は、きっと、私になんか気付いていない。 存在すら周りに知られていない。 影が薄い、なんて生ぬるいもんじゃない。 私は、“居ないもの”同然。多分。 だから、私に寄り添ってくれるのはこの子達だけ。 話し掛けてくれて、 応えてくれて。 見えなくても、 見えてはいけないものでも良い。 この子達――――······ “幽霊”は私の友達だ。

まだ覚めない目を擦って起き上がる。

襖の向こうから眩しいくらいの朝日が差し込んだ。

鈴帆

ふわぁ······

小鳥のさえずり、木々の触れ合う音·······

それ以外、何も聴こえない。静かな朝だった。

布団を畳み部屋を出ると、丁度通ったのであろう母がいたので、こう挨拶をした。

鈴帆

おはよう。

·······。

鈴帆

お母さん、

········あぁ、居たの。おはよう。

何処か疲れたような表情をしていた。いつものことだ。

お母さんは、きっと、私が嫌いなんだと思う。

お母さんは綺麗な白い髪なのに、私は黒髪。

“個性”の都合上、“見えてはいけないもの”が見える私。

気味が悪くてしょうがないんだろう。

······今日から?

鈴帆

うん。

·······そう。

この素っ気ない返しにも随分慣れた。

鈴帆

ねえ。

何。

鈴帆

やっぱ、何でもない。

“生まれてきて、ごめんね。”

そう言おうとしたけどやめた。

他所の複雑な家庭環境の家に比べれば、うちは随分ましな方だ。

虐待なんて、されてない。ただ、溝があるだけ。

お母さんは人形みたいで、 お父さんが居なくて、 弟は鬱で、 お祖母ちゃんは厳しくて。

壊れかけてる。でも、もう慣れた。

でも、いくら慣れたと言っても居心地が悪いことに変わりはない。

早々にその場を後にし、諸々の準備をする。

······この生活も、今日で一段落。

今日、私は此処を出ていく。

もうすぐ高校生。これから高校のある東京に引っ越すこととなる。

嫌な生活が今日で終わるとなると心が踊った。

顔を洗う。前髪の先、雫を結んでいるものの気にせず部屋に戻ろうと歩き出した。

廊下の曲がり角を曲がったときだ。

鈴帆

·····!

······。

·····弟だ。

気まずい。だから会いたくなかったのに。

今日は····厄日なんだろうか。

鈴帆

·····おはよう?

一応挨拶しておく。

弟····凛は、私を睨み、舌打ちした。

······んで居るの。

鈴帆

知らないよ。そんなこと言わないでよ。

知ったことじゃない。

この尖りに尖った弟は、もう5年近く学校に行っていない。

因みに、中1だ。

来んなよ。

鈴帆

だって、

·····お前なんか、嫌いだ。

鈴帆

····っ、

凛がこう私を恨むのも分かる。

だって、

·······―――――――私が、家族を壊した。

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