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黒髪が風に靡く。 風が頬を掠める。 道行く人々は、きっと、私になんか気付いていない。 存在すら周りに知られていない。 影が薄い、なんて生ぬるいもんじゃない。 私は、“居ないもの”同然。多分。 だから、私に寄り添ってくれるのはこの子達だけ。 話し掛けてくれて、 応えてくれて。 見えなくても、 見えてはいけないものでも良い。 この子達――――······ “幽霊”は私の友達だ。
まだ覚めない目を擦って起き上がる。
襖の向こうから眩しいくらいの朝日が差し込んだ。
鈴帆
小鳥のさえずり、木々の触れ合う音·······
それ以外、何も聴こえない。静かな朝だった。
布団を畳み部屋を出ると、丁度通ったのであろう母がいたので、こう挨拶をした。
鈴帆
母
鈴帆
母
何処か疲れたような表情をしていた。いつものことだ。
お母さんは、きっと、私が嫌いなんだと思う。
お母さんは綺麗な白い髪なのに、私は黒髪。
“個性”の都合上、“見えてはいけないもの”が見える私。
気味が悪くてしょうがないんだろう。
母
鈴帆
母
この素っ気ない返しにも随分慣れた。
鈴帆
母
鈴帆
“生まれてきて、ごめんね。”
そう言おうとしたけどやめた。
他所の複雑な家庭環境の家に比べれば、うちは随分ましな方だ。
虐待なんて、されてない。ただ、溝があるだけ。
お母さんは人形みたいで、 お父さんが居なくて、 弟は鬱で、 お祖母ちゃんは厳しくて。
壊れかけてる。でも、もう慣れた。
でも、いくら慣れたと言っても居心地が悪いことに変わりはない。
早々にその場を後にし、諸々の準備をする。
······この生活も、今日で一段落。
今日、私は此処を出ていく。
もうすぐ高校生。これから高校のある東京に引っ越すこととなる。
嫌な生活が今日で終わるとなると心が踊った。
顔を洗う。前髪の先、雫を結んでいるものの気にせず部屋に戻ろうと歩き出した。
廊下の曲がり角を曲がったときだ。
鈴帆
凛
·····弟だ。
気まずい。だから会いたくなかったのに。
今日は····厄日なんだろうか。
鈴帆
一応挨拶しておく。
弟····凛は、私を睨み、舌打ちした。
凛
鈴帆
凛
この尖りに尖った弟は、もう5年近く学校に行っていない。
因みに、中1だ。
凛
鈴帆
凛
鈴帆
凛がこう私を恨むのも分かる。
だって、
·······―――――――私が、家族を壊した。