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君の涙の理由

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君の涙の理由

1 - 挨拶

♥

55

2020年11月13日

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それは、一目惚れだった。

彼女は会社の受付に座って、お客様を応対していた。

僕は声もかけられずに、それを遠くから眺めていた。

ロングの黒髪がとても綺麗だ。

でも、彼女の笑顔はどこか切なげだった。

何か悩み事でもあるのだろうか。

僕はその時、彼女の不安や悲しみを取り除きたい、そう思った。

森山浩太

同じ部署に配属されて良かったな

安田直樹

ああ。森山と一緒で安心したよ

森山浩太

安心?

安田直樹

誰も知り合いいないと不安だからさ

安田直樹

インターンで森山と仲良くなれて、本当に良かった

森山浩太

そう言ってもらえるのは嬉しいけど

森山浩太

俺たち、もう社会人になるんだぞ

森山浩太

一人でも行動できるようになれよ

安田直樹

わかってるけどさ

安田直樹

不安なものは仕方ないよ

森山浩太

そういえば

安田直樹

何?

森山浩太

聞いてなかったけど、どうしてこの会社を選んだんだ?

安田直樹

もちろん、文房具が好きだからだよ

安田直樹

……それに

森山浩太

それに?

安田直樹

彼女がいるから

森山浩太

彼女?

森山浩太

お前、彼女いたの?

安田直樹

いや、付き合ってるとかではない

安田直樹

それどころか、話したことすらない

森山浩太

どういうことだよ?

安田直樹

実は、インターンで初めて会社に行った時、一目惚れしたんだ

森山浩太

一目惚れ?

森山浩太

誰に?

安田直樹

受付の水瀬紗織さん

森山浩太

ああ、あの黒髪の美人

安田直樹

ずっと遠くから眺めてるんだ

森山浩太

気持ち悪いな

森山浩太

毎日顔を合わせるんだから、話せばいいだろう

安田直樹

好きすぎて、喋りかけられない

森山浩太

でも、ずっと眺めてるだけでいいのかよ

森山浩太

付き合いたいと思わないのか?

安田直樹

もちろん、そう思うけど

森山浩太

だったら、話せよ

森山浩太

そうしないと何も始まらないぞ?

安田直樹

……そうだよな

安田直樹

もう社会人なんだし、勇気を出さなきゃな

森山浩太

その意気込みだ

安田直樹

わかった。明日話してみる

翌日の朝。

直樹は出社すると、受付の前に行った。

受付には、水瀬紗織が座っていた。

安田直樹

お、おはようございます……!

思い切ってそう声をかけると、紗織は顔を上げてこっちを見た。

水瀬紗織

……おはようございます

彼女の顔はどことなく悲しげで、声も沈んでいた。

二人の間に不自然な沈黙が流れた。

安田直樹

(何か喋らないと……!)

安田直樹

あ、あの、今月入社した安田直樹といいます

水瀬紗織

受付の水瀬です

安田直樹

そうなんですね

水瀬紗織

……そうです

安田直樹

よろしくお願いします

水瀬紗織

……よろしくお願いします

安田直樹

……

直樹は何も話すことが思い浮かばず、彼女をじっと見つめた。

安田直樹

(近くで見ると、より綺麗だなぁ)

水瀬紗織

……あの

安田直樹

はい?

水瀬紗織

何か御用でしょうか?

彼女は困惑した様子でそう尋ねてきた。

安田直樹

……い、いえ。何も

安田直樹

すみません

直樹はそそくさとその場を離れた。

安田直樹

(……結局、挨拶だけしかできなかった)

安田直樹

(変な奴だと思われたかなぁ?)

安田直樹

(それに、いつにも増して彼女は元気がないように見えた)

安田直樹

(何かあったんだろうか?)

森山浩太

どうだった?

安田直樹

挨拶だけはした

森山浩太

そうか

森山浩太

毎日そうやって話しかけろ

安田直樹

迷惑じゃないかなぁ

森山浩太

強気でいかないと、付き合えないぞ

安田直樹

そうだけど

森山浩太

何を迷ってるんだよ

安田直樹

彼女、元気なかったんだよ

安田直樹

無理して笑ってるみたいな雰囲気だった

森山浩太

何か悩みでもあるんだろう

森山浩太

そういうの溜め込みそうなタイプだもんな

森山浩太

そうだ。お前が相談に乗ってやれよ

森山浩太

話す話題も出来て、近づくチャンスだぞ

安田直樹

それもそうだな

安田直樹

ちょっと聞いてみるよ

次の日の朝。

直樹は出勤するために道を歩いていた。

すると、前方に紗織の姿を見つけた。

直樹は彼女のそばへ走って行った。

安田直樹

おはようございます!

水瀬紗織

……おはようございます

安田直樹

(やっぱり元気ないなぁ)

安田直樹

(理由を聞いてみよう……!)

安田直樹

あの

思い切って声をかけたその時、

部長

紗織ちゃ~ん! おはよ~う

部長はそう言って、紗織の肩に手を置いた。

水瀬紗織

……おはようございます

安田直樹

(うわっ、部長だ)

安田直樹

部長、おはようございます

部長

何だ、安田もいたのか

安田直樹

はい

部長

お前、ちょっと向こう行け

部長に追いやられ、安田は二人の様子を離れて見守ることにした。

部長

今日も綺麗だね~

部長

一緒に出勤しようか~

部長は紗織の髪を撫でながら言った。

紗織は黙っていたが、嫌そうな表情だった。

安田直樹

(部長、随分と馴れ馴れしいなぁ)

安田直樹

(……紗織さん、嫌がってる)

会社のビルが見えてきた。

部長

もう着いちゃったね

そう言って、部長は紗織のお尻を撫でた。

水瀬紗織

きゃっ

安田直樹

(えっ、お尻撫でた!?)

水瀬紗織

……や、やめてください

部長

いいだろう? 減るもんじゃないんだから

水瀬紗織

……でも

部長

じゃあ、先に会社行ってるね~

そう言って、部長はビルに向かって走って行った。

紗織は俯いて歩いた。

安田直樹

(……部長からセクハラを受けていたなんて)

安田直樹

(紗織さん、このことで悩んでいたんだ)

この作品はいかがでしたか?

55

コメント

3

ユーザー

おおおおお!新連載っ!✨✨ 社内恋愛最高です〜!!!

ユーザー

新連載です!シンプルなラブストーリーになってます🙂良かったら読んでもらえると嬉しいです😊

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