勿 忘 草 の 想 ひ 出

それは突然の事だった。

普段と変わらない 任務のはずだった。

任務地に到着し、 帳を下ろして呪霊を祓った。

異変が起きたのは その直後のこと。

パチンと頭に痛みが走った。

体に呪力が入り込み、 広がっていく感覚。

その呪力は私のものではない。

" 呪われた "。

瞬時にそう判断した私は、

補助監督に言って、 すぐに高専に戻った。

医務室で座りながら言う私に、

硝子も夜蛾先生も 頭を抱えた。

ちょうどそこに悟が来て、

夜蛾先生が 事情を説明する。

そう言って サングラスを外し、

私の身体を観察する。

厳密に言えば 身体ではなくもっと奥だが。

記憶が消える…？

昔の楽しい思い出も、

みんなの事も 忘れてしまうのかな。

そう思うと勝手に涙が溢れた。

そう笑ってみせたけど、

3人は顔を歪めるだけだった。

それから私は前と変わらず 任務をこなした。

特に変わったことは 今は無く、

強いていえばたまに パチンと走る頭の痛みくらい。

でもきっとそれが 記憶を失っている合図で、

一日に数回起きるそれは、

少しずつ私の記憶を 蝕んでいた。

それが、どうしようもなく 怖かった。