Ω短編集

これほどわからなくて良かったと思ったのは後にも先にもこのときだけだと思う

12年前

ぼくには近所のお兄ちゃんが居た

優しくて、いつもぼくの手を引っ張ってくれるお兄ちゃん

この世には第二の性っていうα、β、Ωというものが存在する

いふくんはα！家系的に代々αの家なんだって！

ぼくもαになれればいふくんの手助けができるようになるのかな…？

一般的に第二の性は10歳になるまでに発症すると言われている

しかし、学校で行われる検査でも都心の大病院でもみんな「わからない」と口をそろえて言った

　数日後

ニュースでいふくんのお父さんが捕まったという報道がされていた。

いふくんのお父さんが発情していたΩを強姦して、頸を噛んでしまったらしい。

いふくんはα♂のお父さんとβ♀のお母さんの子供だ。

αとβは番になれないため、Ωに反応してしまったんだろう。

そう言っていふくんは親指の腹でぼくの涙を拭ってくれる。

いつもの優しいいふくんと同じなはずなのに、そのいふくんの目が何を映しているのかわからなくて少し怖かった。

現在

あれから12年。

ぼくは今、歌い手グループに誘われています！

え、いふくん…？

いふくんのその言葉にヒヤリとした。

ぼくは22歳となる今でも第二の性がわかっていない。

隠すことでは無いのかもしれないが、ぼくはそのことを隠してしまった。

そっか、そっかと自分のことのように安心するいふくんの姿を見て罪悪感が湧く。

話を逸らしたくて話題を振るといふくんは真剣な顔つきになった。

そう言い切ったいふくんを見て心臓がキュって痛んだ。

気づいてしまった。

いふくんが好きだということを。

それと同時にこの恋は叶わないということも。

第二の性なんて知りたくない。

βやαだったらまだ良い。

もしΩだったら…？

いふくんに嫌われるなんて耐えられない。

小さくなっていくいふくんの背中を見ながら思う。

どうかこのまま知らないままで

　end

落ちわからん 次回作(？)の青水Ωパロ一生すれ違いと堕ちるのどっちが良いですか？