紗奈
ねぇねぇ夢っ!

夢
ん?どったの紗奈

紗奈
悪魔の噂、知ってる?

夢
なにそれ?

紗奈
悪魔を呼び出すと、必ず願いが叶うってやつ!

夢
…必ず?

紗奈
うん!

夢
やってみた人とかいるの?

紗奈
私、やったよ!悪魔ってすごいの、すごく綺麗な人だった!

夢
そんなことより、願い、願いはかなったわけ!?

紗奈
うん!実はね?

紗奈
…良くんと、付き合っちゃった

夢
はぁっ!?

紗奈
ちょ、ゆめ、声おっきぃ!

夢
あ、ごめんごめん、ねぇ、悪魔ってどうやって呼び出すのっ?

紗奈
呪文を唱えるの!契約の言葉みたいな、でね、夕方の、高いとこじゃないとダメみたい

夢
へぇ…で、呪文は?

紗奈
スマゲササヲチノイハシタワ、ニウョシイダルエナカヲイガネ…って言うみたい

夢
長いな…メモとっとこ

紗奈
そうした方がいいよ!

ちょうど会話を終えたところで、始業のベルがなった。
紗奈
じゃ、私席戻るね。

夢
うん。

先生の話が、右から左に通り抜けていく。悪魔のことを考えると、授業どころではなかったのだ。
夢
(…ふふ)

夢
スマゲササヲチノイハシタワ、ニウョシイダルエナカヲイガネ…

夢
…

夢
…

夢
…あれ?…なんもこないじゃん、あいつ嘘ついたの?

夢
…

夢
もういいや、かえ…

悪魔
契約?

夢
ふえっ!?

悪魔
私との契約のためにここに来たの?

驚いて振り返ると、聞いたとおりの美人がそこに立っていた。人と違うのは、角と尻尾と羽が生えているところくらい。
夢
…あく、ま?

悪魔
ええ。

夢
…っ!契約っ!契約に来たの!願いを叶えて!

悪魔
はいはい。で、願いはなんなの?

夢
翔くんを私のものにしたい!翔くんの心が欲しい!

悪魔
…なるほどね。彼の心を自分のモノに…ふふ、お安い御用よ。

夢
ほんと!?

悪魔
ええ。明日、この時間にまたここにいらっしゃい。翔くんが待ってるから。

夢
…うん!

悪魔と紗奈に感謝しながら、私は家路についた。明日が楽しみだ。
夢
ねぇ紗奈!

紗奈
ん?どうしたの?

夢
願い、叶いそう!悪魔のこと、教えてくれてありがと!

紗奈
いえいえ、いいんだよ。何をお願いしたの?

夢
翔くんと恋人になれますようにって!

紗奈
そっかぁ、良かったね!

夢
うん!

またしてもソワソワして一日を過ごした。放課後になると、私は教室を飛び出した。
夢
…ついたっ!

悪魔
あら、随分と早かったのね。

夢
それより、翔くんはっ!?

悪魔
ああ、翔くんは、あそこ。

そう言って指を指したのは物陰。かすかに黒髪が見えた。
夢
行って来るっ!

悪魔
はぁい、ばいばい。

夢
しょうくっ……え?

夢
…え、な、に?どういう、こと?

悪魔
ああ、ごめんなさい。あなたの目的は…っと。

夢
っ!?

悪魔は、翔くんの体だけを持ち上げると、それすらも引きちぎった。
夢
な、に、して…っ!?

悪魔
あったあった、これね。

私の言葉を無視して、悪魔は私に何かを投げてよこした。
夢
え、これ、な、に?

悪魔
わかんない?

悪魔
そーれーはー♪

悪魔
翔くんの〜

悪魔
心!

夢
え、え…?

悪魔
だぁかぁらぁっ!

悪魔
heart♪

悪魔
つまりは心臓ね

夢
っ…ち、ちがっ…わ、わた、しはっ…

悪魔
…あれ?もしかして、臓器の方じゃないやつだったの?

夢
そう、そうよ!

夢
ねぇ、元に戻して!

悪魔
それはできないわぁ~

夢
な、なら、契約をやり直して!

悪魔
あら、でも代償を貰わなくっちゃ。

夢
代償?私、そんなの聞いてない!

悪魔
あら、そんなはずないでしょう?あなたは私に命を捧げる代わりに、願いを叶えてほしいって言ったじゃない?

夢
え、私、そんなこと…!

悪魔
スマゲササヲチノイハシタワ、ニウョシイダルエナカヲイガネ、これ、反対から読んでみて?

夢
え?

私は、呼び出すための呪文を書いた紙を開き、読み返してみる。
夢
ね、が、い、を、か、な、え、る、だ、い、しょ、う、に…

夢
わ、た、しは…いの、ちを、さ、さげ…ま……え?

悪魔
ほら、言ったでしょ?

夢
え、え、で、でも、紗奈は願いを叶えても生きていたじゃない!

悪魔
…?

悪魔
代償は自分で決められるのよ?

夢
…は?

悪魔
もしかして、知らなかったのかしらぁ。私なりに気をきかせたのにねぇ

夢
え?どういうこと?

悪魔
あなたが命を捧げるってことは、死ぬ、ってことでしょう?

悪魔
だから、心中でもはかるのかと思ったのよ。

夢
…

悪魔
ま、起きたことはしかたがないし…

夢
み、見逃してくれるの?

悪魔
もらってくわね?

夢
…え?

夢
あ

夢
あれ、から、だが、勝手に…

夢
え、やだ、なんでフェンスを、

夢
やだ、やだやだやだやだ、やだやだやだやだやだやだぁっ!

夢
たす、たすけて、やだ、落ちたくな、落ちたくない、死にたくなっ…!

夢
あ、

夢
あああああああああぁぁぁぁぁぁぁいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!

悪魔
…

悪魔
そろそろ、出てきたらどうなの?

紗奈
…ふふっ。

紗奈
さすが、悪魔だね。仕事が早くて助かるな。

悪魔
あーら、お褒めに預かり光栄だわぁ〜。にしても、なかなかえぐいことすんのねぇ、最近の子は。

紗奈
夢がうざったかったからさぁ。てか、エグイのはお互い様でしょ〜

悪魔
まぁ、そうねぇ。で、代償だけど…

紗奈
ああ、私の親あげるよ。二人分だし、文句ないでしょ?

悪魔
あー…

悪魔
いらない。

紗奈
…ん?

悪魔
かわりに、いいものあげる。

紗奈
え?

悪魔
えいっ。

紗奈
え、なに?

悪魔
ん?不死の魔法。

紗奈
え、なんで?

悪魔
面白いのが見れたから?

紗奈
…悪趣味。

悪魔
そっちこそ。黙って見てたくせに。

悪魔
ま、どちらにせよあなたの願いはかなって、契約は成立。

紗奈
これでさよならね?

悪魔
まぁ、そうねぇ…

悪魔
でも。

悪魔
また、会いに行ってあげる。

紗奈
え?

悪魔
ふふっ、また、いつかね〜♪

紗奈
あ、消えた…なんだったんだろ?

......................................................
紗奈
…

このまま、餓死でもしてしまいたいとすら思えるのに。
紗奈
…あ゙ぁ…

悪魔
あらぁ、ひっさしぶりぃ♪

紗奈
あ、んだ、は…

悪魔
覚えてるかしらぁ、あなたを不死に「してあげた」悪魔さんよぉ♪

紗奈
あ、あ…

紗奈
も、もど…もど、じて…

紗奈
わ、だし、しに、た…

紗奈
しに、た、い…

悪魔
あらあらぁ、自ら死を望むだなんて、珍しいにんげ…いや、ここまで来ると化け物ね!キャハハっ!

紗奈
お、ねが、おねが、い

悪魔
ふふっ、ねぇねぇ、わたしね、人の苦しむ顔が、

悪魔
とぉ~~~~~~~~~~~~~っても!

悪魔
だぁいすきなのっ!

悪魔
だから、これからも…ふふっ、

悪魔
たとえ、この地球が滅亡しても。

悪魔
死なせてあげないわぁ。

紗奈
…!そ、んな

悪魔
ふふっ♪じゃあねぇ!醜い醜い老婆さん!

紗奈
ま、で、まっ、でぇ…!

紗奈
いや、いや、じにだ、じにだい、いや、いや、い"や"ぁ"…!

......................................................
悪魔
こうして、不幸な少女は、不幸な老婆と成り果て、これから先、死ぬことなく、生き続けるのでした…

悪魔
ふふっ、どお?おちびちゃん。面白いお話でしょう。

赤子
キャッキャッ、キャッキャッ♪

悪魔
うふふ、そうよねぇ、面白いわよねぇ。

悪魔
…ふふ、久々に、見に行こうかしらぁ…♪
