菜子
ん…んぅ…?

女の子
あっ!お姉さん起きたぁっ!

ガンガン痛む頭に、女の子の声が響く。ここはどこだ…?
菜子
う…

女の子
大丈夫?まだ頭痛い?

菜子
うん…まぁ、痛い…かな。ところで、あなたは誰?

女の子
ん?私?わたしは…うーんと…しゅしゃいしゃ…じゃなくって!

女の子
主催者!だよ!

菜子
そっかぁ。…って、主催者ってことは、ここで何かあるの?

女の子
うん!強制参加、途中離脱は絶対禁止、勝つまでほぼ永続的に続く楽しい楽しい人狼ゲームがあるよぉ♪

菜子
人狼ゲーム…?

女の子
うん!ルールは知ってるかな?

菜子
うん、まぁ、だいたいは。

女の子
そっか、なら良かった!

女の子
あ、でもね、今回やるのは、あれよりもーちょっとリアルなのなんだぁ!

菜子
リアル?

女の子
そう!まぁ、これを見てみて!前やったやつだよ!

そう言ってピッ、と音を鳴らしてついたモニターを、言われた通り見つめる。
映し出されたのは、円形の大きなテーブルに座る10人の男女。その中には小さな子供まで含まれている。
疑われた男の人が、恐怖に歪んだ顔でしろいはこの上に乗る。何がそんなに怖いのだろう?
アナウンス
それでは、他野原 新造さん、処刑でーす!皆さん、この人の最後をシカト目に焼き付けてくださぁい!

アナウンス
目をそらしちゃダメですよぉ?うふふ!

アナウンス
それじゃあ、いっきまぁぁぁすっ!

軽快な音を立てて箱が開く。男の人は暗闇に吸い込まれてゆく。ここまではよく見る光景だ。下になにか落ちても安全なものがあるはず。
そう思っていた私は、次の瞬間、その考えが甘かったことに気づいた。
菜子
っ…!

菜子
これ、うそ、まさかっ…

女の子
そう!処刑されると死んじゃうのですっ♪

女の子
この時が、いっっっっっちばん、楽しいよねぇ!あははっ♪

菜子
え、え、う、うそ…や、やだっ…

映像は、未だに腹を抱えて笑いこける女の子の声をBGMに進んでいく。
アナウンス
さてさて〜?気になる新造さんのカードは〜?

画面に映る全員の顔がこわばる。緊張が画面越しに伝わってくる。
アナウンス
でーでんっ!ふふっ、ざーんねんっ!市民でしたぁ!

アナウンス
市民が市民を殺しましたぁっ!

アナウンス
この人殺しぃ〜っ!

アナウンス
ぷっ、あははははっ!初っ端から笑わせてくれますねぇ!うふふふふっ!

アナウンスの狂気的な笑い声と、終わることのない女の子の声とが混ざり合い、なんとも言えない不協和音が耳に響く。
菜子
う…あ…

女の子
っふ、うふふ、あふふ、けほっ!あ、ごめっ、ふふっ、ひ、1人でっ、ずっと、わらっ、ちゃ、ははっ、げほっ!…ふぅ。このゲームと普通のゲームの違いの説明、しなきゃねっ!

ようやく笑い終えた彼女は、この恐ろしいゲームの説明を始めた。
女の子
人狼は2人、占い師は1人、騎士(ナイト)が1人、あとは市民ね。

女の子
疑わしい人をあげて処刑してくのは同じ。普通だと発言権がなくなるけど、このルールでは死ぬから。

女の子
市民たちが勝つ条件は、人狼2人を見つけて処刑すること。

女の子
人狼側が勝つ条件は、人狼の数と市民(占い師、騎士含む)の数が同じになること!この場合、人狼以外は処刑ね!

女の子
それで、最初に言った勝つまで永続的に続くっていうのは、まぁ端的に言うと、勝つまでやめらんないよってこと!

菜子
え?でも、負けたら死ぬんじゃ…?

女の子
うん、現世はね。来世でまた再挑戦だよ!

菜子
…は?…え?

女の子
お姉さんもその1人!周回者だね!すっごぉい!もう十回目だよぉ!

菜子
へ?じゅ、じゅっかい…?

女の子
うん!

女の子
今まで受けた処刑は〜

女の子
首絞めはりつけ皮剥生き埋めメンドクサイからえとせとら!

菜子
え、処刑って、落下だけじゃ…

女の子
ちがうちがう!いーっぱいあるよっ!

女の子
あっ、そろそろ時間だねッ!はじめよっか。

菜子
え、や、やだ、やだっ!

女の子
そんな事言ってもだぁめ♡さ、行こっかぁ!

目を覚ませば、見えたのはあの円形のテーブル。私の握るカードは人狼。
アナウンス
それでは〜、やっていっきまぁすっ!
